福祉職を狙ったストーカーの一例〈中編〉
↑前回
それからそのご家族による連絡攻撃が始まりました。
まさに「攻撃」。
わたしが仕事で使っているメールアドレスに、仕事とは一切関係ない私的な内容のメールを、一日に何件も昼夜問わず送りつけられました。
「おはよう」
「今何してるの?」
「どこに住んでるの?」
「彼氏はいるの?」
「おじさんに興味ある?」
「今旅行中。綺麗な景色でしょ。今度ここでデートしよう」
などなど。
うるせえ馬鹿野郎! と怒鳴ってやりたいところですが、ご利用者様のご家族ですし、逆上されると怖いので、すぐ上司に相談しました。
こちらは淡々と「個人的なやり取りはいたしかねます。こうしたご連絡が続きますと、〇〇様(ご利用者様)の契約継続が困難となります」ときっぱりお断りしました。
また、全てのメールに対してその都度返信したりはせず、業務連絡のみしておりました。
pepperくんになったつもりで。
…しかし、向こうが空気を読むことはありませんでした。
メール攻撃は続きました。
他の方々からの相談メールがその迷惑メールのせいで埋もれてしまい、業務に支障をきたすほどに。
上司は「まあ、電話じゃなくてメールだから、我慢して適当に相手してやれば? 構ってちゃんに構ってあげるのも福祉の仕事かもよ?」とだんだん投げやりになっていきました。
確かにメールだからこちらが我慢すればどうにか…、とはわたしも一旦グッと堪えたのですが…。
そのご家族自身の写真が複数枚添付された私的なメールを何度も送りつけられる日々が続く中、さすがのわたしも神経が参っていきました。
メールの送信日時は朝早いこともあれば、夜遅いこともあり、平日だろうが土日祝だろうがおかまいなし。
わたしがすぐに返信しないと、
「メール届いてないの?」
「〇〇さんからの返事が遅い! って上司に苦情を出してもいいの? 困るでしょ? 嫌なら俺と付き合って」
「さっきと同じメールを俺が持ってる他のアドレスから送るね! これからはすぐお返事ちょうだいね♡」
「俺の携帯電話の番号は〇〇〇ー…。仕事が終わったら電話ちょうだい!」
などとやはりメールをガンガン送ってきました。
もし個人的な知り合いであれば問答無用で即ブロックするところですが、ご利用者様のご家族なので、ブロックするわけにはいきません。
わたしとしてはやはり淡々と、業務に関する対応しかしませんでした。
勿論、仕事が終わってから電話なんかするわけありません。
また、念のため書きますが、わたしはそのご家族に気を持たせるようなことは一度もしておりません。
おそらく、わたしがおとなしそうな容姿なので完全に舐められてターゲットにされたのだと思います。
また、「ご利用者様のご家族」という立場を利用されたのだと思います。
ご利用者様本人になんら落ち度がない以上、ご家族がこういう方だからとはいっても、すぐに契約解除というわけにはいきませんから。
そういう意味で、福祉関係者を狙った悪質な行為だと言えると思います。
また、話が本題から少し逸れてしまいますが、最近病院関係者から、
「看護師と患者という関係性だから親身になってあげただけなのに、〝特別な好意がある〟と勘違いされて、元患者につけ回された。どこでどう調べたのか分からないけど自宅にまで押しかけて来られてドアをガチャガチャされた。怖かったので一旦ホテルへ避難し、退職と引っ越しを余儀なくされた」
という話を聞きました。
ヘルパーをやっている知人からは、
「お尻や胸を執拗に触ったり、キスしようとしてくる利用者がいる。即刻サービス停止したいけど、〝覚えていない〟〝認知症高齢者だから大目に見て〟〝福祉業界ではよくあること〟と上からもご家族からも言われた。何かあってからでは遅いので、常に防犯ブザーを携帯しないといけないし、無いよりマシだけど結局防犯ブザーは大した抑止力にはならない。かといって護身用グッズを下手に持ったら過剰防衛や銃刀法違反になる。上の危機管理能力が信じられないし、わたしはもう辞めることにした。またヘルパーの離職率が上がってしまうけど、自分の身の安全が大事だから仕方ない。他の利用者さんと会えなくなるのは辛いけど…」
と聞きました。
理学療法士や作業療法士からも相次いでそのような話を聞きました。
保健師からも聞きました。
「モンスターはモンスターなんだから、話し合いで解決出来るはずがないよね」
と。
福祉とはまた違う業界ですが、コンビニのスタッフからも聞きました。
「こっちは仕事だから〝いらっしゃいませ〟〝ようこそ〟と笑顔で愛想良く対応してるだけなのに、なんで勘違いする人がいるんだろ。不思議で仕方ない。こっちは〝やめてください〟って言ってるのに、一日に何度も来店するくせに買い物をせず、〝何時に仕事が終わるの?〟とかしつこく絡んでくる奴がいたから、仕事を辞めたわ。でも、ああいう奴ってどこいっても居そうだから怖い。トラウマになった」
と。
一部の迷惑な人のせいで離職率が上がっていく…。
こんな調子では、世の中が回らなくなってしまいますよね。
…さて、わたしの件に話を戻します。
※続く