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4月から相談援助職に就く方へ。わたしなりのアドバイスです。

 先日、社会福祉士や精神保健福祉士の国家試験が行われましたね。

 受験した皆様、お疲れ様でした。

 まずはのんびりと休息をとってくださいね。

 頑張って勉強してきたお疲れを癒せますように…。

 わたしのもとにも、大学の後輩たちから「解答速報をもとに自己採点をしたら7割以上とれていました!」等の嬉しい報告が続々と届いています。

 解答速報はあくまでも各社独自のものであって正式解答ではなく、また、マークミス等の可能性も0ではないので、合否の通知がくるまで安心するのは早いのですが、ひとまずホッとされた受験者の方も多いのではないでしょうか?

 逆に、「あと数点足らない…」と不安を抱えている方も少なくないと思います。

 これまでどんなに頑張って勉強してきたとしても、試験本番ではやはり緊張や疲れがあるので、判断に迷い、結果として悔しい思いをする方も沢山いますよね…。

 どんな結果になったにせよ、頑張った自分を褒めてあげてくださいね。

 さて、わたしが今回このような記事を書くのには訳があります。

 それは、わたしと同じ大学を今春卒業する後輩からこんな相談を受けたからです。

 それは、

 「今年の4月から相談員としての就職が決まっています。これまで社会福祉士の国家試験の勉強に全力を注いできたので、あまり意識していなかったのですが、国家試験が終わった途端、自分は相談員に向いていないんじゃないかとこわくなってきました。また、もし国家試験に落ちていたら内定を取り消されないか心配です。そうなったら4月からどうすればいいでしょうか?」

 というもの。

 きっとこういう不安を抱えている方々も多いですよね。

 そこで、後輩から許可を得て、相談内容をこの記事に掲載しました。

 …なかなか「正解」と言える答えのない悩みですよね…。

 わたしはまず後輩に、なぜ「自分は相談員に向いていない」と思ったのかどうか話を聞きました。

 すると、後輩は「試験会場にいる全員がわたしよりずっと頭が良く見えました。わたしが一番バカに思えてきたんです。それなのにひとさまの悩みの相談に乗るなんておこがましいと思いました」と話しました。

 決してそんなことはないとわたしは思うのですが、本人が「そう思った」という事実を受け止めて、共感を示しつつ、じっくり話を聞きました。

 すると、後輩はだんだん落ち着き、

 「話を聞いてもらっているうちにスッキリしました。内定先にはわたしから電話をして、自己採点の結果を報告して相談してみます」

 と言ってくれました。

 その数時間後に後輩から、

 「内定先に電話しました。もし今年落ちていても、働きながらまた来年受ければいいから、4月から出勤してくださいって言ってもらえました。こんなことならもっと早く電話すれば良かったです」

 と嬉しいLINEを貰いました。

 「社会福祉士」や「精神保健福祉士」の資格が無ければ相談員として働いてはいけないという法律はありません。

 その場合は「社会福祉士」や「精神保健福祉士」を名乗れないだけ。

 内定を取り消すかどうかは職場の判断によるものなので、後輩のように悩んでいる方にはまず内定先に相談することをおすすめします。

 ちなみに、今わたしがいる職場には複数の相談員がいますが、無資格で相談員をやっている人もいます。

 また、「相談員の適性」についても、特に明確な定義があるわけではありません。

 強いて言えば、どこの職場で働く相談員なのかによって、また、その業務内容によって求められる適性は異なるのではないかとわたしは考えています。

 ここからは、わたしが思う「相談員の適性」についてお話していきます。


 ⭐️働く場所によって求められる「適性」は様々

 たとえば、地域包括支援センター、病院、児童福祉施設、高齢者施設、障がい者施設、社会福祉協議会などなど、相談員が働くところは沢山あります。

 また、同じ機関で働く相談員同士でも全員の業務がバラバラだったりするので、一概に「〇〇なタイプの人が相談員に向いている」とは言えないのです。

 例えば、「病院の相談員」という同じ括りであっても、「退院に力を入れている病院の相談員」と「まだまだ長期入院者が多い病院の相談員」はやることが異なります。

 「退院に力を入れている病院の相談員」は、いかに退院促進をして、ベッドを空けて、新たな患者様を受け入れるかが重要。

 救急指定を受けている病院はほぼこのパターンに当てはまると考えて良いでしょう。

 とにかく毎日新たな患者様が運び込まれてくるので、入院中の患者様に退院していただかないとどうにもなりません。

 時には、医師から「外来の〇〇さんを明日入院させたいから、〇〇病棟の〇〇さんを明日退院させて」とせっつかれたり、患者様のご家族から「病院にいる方が介護保険施設に入るよりも費用が抑えられる。1日でも長く入院させてください」と泣きつかれたり、たまたまベッドがいっぱいでどうにもならず他の病院に紹介した患者様のご家族から「どうしてあの時入院させてくれなかったんですか! 医療機関なのに断るなんて!」と怒りの電話を受けたりもするので、一定以上のメンタルの強さが必要。

 また、いかに入退院の前後で利用できる社会資源と繋げていくかという情報収集スキルや、他機関とのコミニュケーションスキル等も求められます。

 ちなみに、先ほどの例に触れますが、満床だと本当にどうしようもないです…。

 いわゆるオーバーベッド(届出病床を超えた人数を入院させること)は緊急時なら例外的に行われることがあるものの、その状態が続けば続くほど病院の経営に大ダメージを与えることになります。

 さて、国の方針としては、今後ベッド稼働率にシビアな病院がどんどん増えていくはずです。

 が、「まだまだ長期入院者が多い病院の相談員」も存在します。

 5年以上の長期入院者がいたりします。

 経営者が「うちの地域では人口減少に歯止めがかからない。どんどん退院をしてしまったらベッドが空いて赤字だ」とむしろ退院に良い顔をしない場合、こうした長期入院者を抱えた病院になりがちです。

 ベッドを空けておくよりは少しでも埋めておきたい、という考え方ですね。

 そういう考え方も分からなくはないのですが、長期入院になればなるほど病院の利益も下がるので、こうした病院はじわじわと赤字になって他の経営者に売られたり閉院するケースがあります。

 さて、こうした長期入院者の多い病院の相談員の場合は、黙っていても患者様がなかなか増えないので、例えば介護保険施設の管理者に「もし入所者の方が体調を崩して、かかりつけ医の先生が入院先をおさがしの際は、是非当院にご相談ください」と営業をかけることもあります。

 他の病院を訪問して他院の先生方に営業をかけている相談員さんもいます。

 こういう場合、ほぼ営業マンとしてのスキルが必要です。

 では、打って変わって、多くは社会福祉協議会が行っている生活困窮者自立支援事業の相談員に必要なスキルは全く異なります。

 例えば、暴力団関係者であるために福祉関係の貸付をはじめ様々なサービスを受けられずに困っている方もいるので、そうした方と面談をしていて怒鳴られてもくじけないメンタルや、あまりにも高圧的な態度をとられて自分が疲弊する場合は担当者を変更するか相談員2人以上で対応するよう職場と相談することが必要です。

 困窮している方の中には、「親の世代だけでなく、その親の世代からずっとお金に苦労してきました」「DV被害等で避難していて困窮してしまった」「子どもの時からお腹いっぱい食べたことがない」「家を失い、ネットカフェに泊まるお金も尽きて、他人の空き家に侵入して暖をとった」「自殺に失敗して重い障害を負った」といった、非常に辛いケースも担当することがあるのですが、同情し過ぎると冷静さを欠きますし、哀れみの視線を敏感にキャッチしてしまう方もいるので、同情し過ぎずに一定の態度を保つスキルも必要です。

 他にも、ギャンブル中毒やアルコール依存の影響で困窮している方もいるので、こうした依存症についての基礎知識や、専門的治療が出来る医療機関との連携が必要。

 また、経済的に困窮している方は、あくまでもわたしの経験上ですが、ゴミ屋敷率がとても高いです。

 綺麗に整理整頓されているお宅もあるので、全てがゴミ屋敷というわけではありませんが。

 困窮している方が支援を拒む理由の一つが「誰にも家の中を見られたくないから」というケースは多々あります。

 もともと片づけ方が分からなかったり、以前は片づけができたのに心身が疲弊してモチベーションを失って気づいたらゴミ屋敷になったという方もいます。

 小銭が床にばらまかれていたり、使用済みオムツが転がっている程度ならまだ良い方で、人間の排泄物の本体や、生きている蛆虫やゴキブリやネズミが床を這いずっているお宅に上がらないといけない場合もあるので、臭いや汚れや虫を我慢できる鋼の鼻と目と替えの靴下も必要です。

 二重のマスクや、場合によってはフェイスシールドや防護服も必要。

 わたしも過去に何度もゴミ屋敷を訪問しましたが、埃、カビ、液状化した食べ物、動物や虫の死骸はよく見かけました。

 ナンバーワンでひどかったお宅の場合、ゴミのジャングルの中から人間の遺体が発見されました。

 そうなると後々の対応も大変ですし、わたしもはじめは「どうやったらもっと早く見つけてあげられたんだろう…」とショックで泣いたので、訪問はなるべく2人以上の人数で行うことがおすすめです。

 遺体発見レベルともなると、地域包括支援センターの職員、大家さん、警察といった方々とも連携することになるケースもありますが…。

 安否確認を兼ねて一人で訪問したら既に亡くなっていてガスも溜まっていたなんてこともありました。

 人員の都合でどうしても一人で訪問せざるを得ない場合は、玄関や勝手口に立った時点で、虫が大量発生していたり、「この臭いは…」と異変を感じたりしたら、警察等にご相談ください。

 …つい長文になってしまったのでこの辺で止めておきます。

 以上のように、一言で「相談員」と言っても、働く場所や条件によって求められることは異なります。

 本当に「よそはよそ! うちはうち!」という感じ。


 ⭐️相談員の悩みを誰かに相談しましょう

 強いて言えば、わたしは「自分の悩みを周りに相談すること」がどの職場で働く相談員にも必要不可欠な要素だと考えています。

 なぜなら、相談員ひとりで解決出来ることなど何もないからです。

 どの職場で働くにしても、相談者の方、相談者の方の家族や友人・近隣住民、色んな機関で働く色んな職種の方たち、場合によっては保健所や警察などなど、数えきれないくらいの方たちと連携することになると思います。

 その中では、思ってもみなかった難題にぶつかったり、上記で少し取り上げたように、突然八つ当たりされて心無い言葉をぶつけられたりすることもあります。

 どんな業種でもそうだと思いますが、言い返せない立場の人を選んでサンドバッグみたいな扱いをしてくる人からターゲットにされることってありますよね…。

 お互い生身の人間なのに…。

 反撃しそうにない人をわざと選んで攻撃してくる人っているんですよね…。

 自分より強そうだったり、反撃しそうな人は、ほぼ狙われないです。

 弱いとみなされた人が狙われます。

 そして、真面目な人ほど、「自分の何が悪くてこんなに怒鳴られたのだろうか…」等と考え込んでしまいます。

 けれど、これもわたしの経験によるものですが、怒りを露わにして怒鳴ってくる人が本当に怒っているケースって、実は稀です。

 瞬間湯沸かし器みたいにカッとなる方も確かに存在はするのですが、怒りの感情って心身ともにかなりのエネルギーを消耗するので、怒りはだんだん落ち着くもの。

 「誰かを自分の思い通りに動かしたい」という気持ちが先にあって、でもそれをストレートに言うわけにはいかないから、言葉は悪いですがいちゃもんをつける機会をうかがっていて、怒るチャンスを見つけて、「お前が悪い!誠意を見せて〇〇しろ!」と怒鳴ってくる…というケースもあるのです。

 本当に相手が気分を害して怒っているケースもありますが、誰かを体よく利用する手段として「怒っている」という態度を利用しているケースもありますので、明らかに後者だったらこちらは気に病まない方が良いです。

 言い返せない立場の人を選んで攻撃することで、自分が偉くなった気分を味わう…という人もいますから。

 世の中はそうやって色んな人がいるものです。

 「どんな対応をしたら正解」というものはありません。

 常に悩むものです。

 困ったり、嫌な気分になったりしたら、職場の先輩や上司に愚痴を言って発散しましょう。

 誰にも相談できずに、一人だけで悩みを抱え込んでしまうと、相談員だって生身の人間ですから、心がポッキリ折れてしまいます。

 …そうやって黙って抱え込んで、「自分がもっと頑張ればどうにかなるのではないか」と思い詰めて頑張りすぎて、自分でも自覚のないまま心や体を病んで辞めていった相談員を、わたしもこれまで何人見てきたことか…。

 どんな些細なことでも、「困ったな」と思ったら、まずは職場の先輩や上司といった周りの方に相談してみてください。

 また、「自分はこれをやるとストレス解消になる」と思えるものを幾つか知っておくと良いと思います。


 ⭐️「これをしたら自分は気分転換できる」と思えることを、たくさんストックしましょう

 ちなみにわたしの場合、ストレスを感じると、ポテトチップスやラーメンやお寿司を食べます😋

 が、食に走るだけだと健康に良くないので、「読書をする」「掃除をする」「ピアノを弾く」「刺し子をする」「ゾンビ映画を観る」「ライブに行く」「岩盤浴に行く」「特に旅行するわけでもないのに一人でホテルステイをしてみる」といった趣味も持っています。

 ちなみにわたしは上述のように理不尽な八つ当たりをされた場合、八つ当たりしてきた人と自分との縁を自分の部屋の汚れにたとえます。

 「掃除をして部屋がピカピカになればなるほど、嫌な人との縁が切れる」とイメージします。

 気分がスッキリしますし、部屋も綺麗になるので、とてもおすすめの気分の切り替え方法です。

 また、わたしの知人の相談員たちにも気分転換方法についてインタビューしたところ、

 「プチプチを潰す」

 「家の中で全裸で過ごす」

 「ひたすら寝る」

 「猫の匂いを嗅ぐ」

 「洗濯機が回るのをひたすら見つめる」

 などなどユニークな回答を得ました。

 全裸は今の時期はずいぶんと冷えそうですね、くれぐれも風邪を引かないでください。

 また、わたしは仕事が終わったらなるべく早く頭のスイッチをオフモードに切り替えるということも心がけています。

 じゃないとキリが無くなりますからね。

 制服のある職場であれば、制服から私服に着替えることで仕事スイッチを切れます。

 私服で働く職場であれば、「仕事中は髪をゴムで結んでいる。仕事が終わったらすぐ髪をほどく」とか、「仕事が終わったらノンカフェインのお茶を飲んで、気持ちを切り替える。これを飲んだらもう就業時間まで仕事のことは考えないという暗示です」とか、皆さん色んな工夫をしているようです。



 ⭐️ノーモア! サービス残業

 また、わたしはサービス残業をしないようにしています。

 これ大事ですよ!

 相談員という立場上、どうしても本来の業務時間外に緊急対応をしなければならない場合もあるのですが、そういう時にサービス残業を当たり前のこととして強いる職場は良くありません。

 サービス残業はストレスを爆発的に増大させます。

 どうしても緊急対応をせざるを得なかった場合はちゃんと残業代を出してくれるよう職場に相談するか、何度相談しても職場が応じてくれなければいっそ他の職場に移りましょう。

 実際にわたしも、かつてはサービス残業だらけの職場にいましたが、今ではちゃんと残業代をくれる職場を移りました。

 それが当たり前なのですが、中には「福祉の心で」等と言ってサービス残業を要求してくる職場もあるのですよ…。

 淘汰された方がいいですね、そういう所は。

 …ただ、上記のようないくつもの事柄に取り組んで、自分ではうまくストレス解消出来ているつもりでも、見えないストレスは積もり積もるもの…。

 もし、「仕事をすればするほど心や体がしんどくなってきた」と異変を感じたら、医療機関を受診したり、早めにお仕事をお休みしたりしましょう

 「そんなこと言ったって、現実的には仕事の休みなんてなかなか取れないよ」と思う方もいると思います。

 でも、溺れている人が他の溺れている人を助けることは出来ませんよね?

 それと一緒です。

 「相談者の方のために」と無理をしたとて、一緒に溺れて沈んでいってしまうだけです。

 一緒に沈んでしまう前に、他の人に助けを求めましょう。

 助けを求めるには体力が必要です。

 いよいよギリギリという段になってから「やばい」と思っても、きっともう助けを呼ぶ力は残っていません。

 「SOS」をきちんと出すためにも、相談員自身の心身の健康を大切にしましょう。

 そうでなければ、きっとそもそも相談者の方だって安心して相談することは出来ません。

 だって、もし自分が相談する立場だったら、「この人、クマがすごいから、あまり眠れていないんじゃないかな? すごくやつれているけど、ご飯をちゃんと食べているのかな?」と心配しちゃうような人に、悩み相談なんて打ち明けられないでしょう?


 …と偉そうなことを長々と語ってしまいましたが、わたしも相談員を長く続けてはいる身ではあるものの、失敗だらけです。

 一見うまくいったようなケースでも、「あの時わたしがもっとああしていたらもっと良い結果が出たのでは?」とウジウジ考えることもしょっちゅう。

 相談員仲間たちとお互いに愚痴も言いたい放題です。

 仲間と「このケースはどうすればいいの?」と悩み、「ちょっと〇〇さんにも聞いてみようよ」と他の仲間にも相談し、「これは困った。でもなんとかしたいね」と一緒に悩む仲間が『おおきなかぶ』のおはなしみたいに増えていくことがしょっちゅうです。

 医療や福祉の現場で関わる相談者の悩み事が、まるで一発逆転の魔法みたいに解決出来ることなんて、ほぼありません。

 「このパターンのケースはこれが正解」という答えもありません。

 どのケースも手さぐりです。

 …というわけで、今回の記事の後輩のように、新たな相談援助職の誕生がとても嬉しいです🙌

 一緒に悩んでくれる新しい仲間たちが増えてくくれて大歓迎✨

 勿論、4月からといわず、「今月から相談援助職に就きます」という方々もウェルカムです🙌

 共にこの業界で働きましょう💪

 正直言うと他の業種に比べればお給料が高いとは言えない業界ですし、報われないことも多々ありますが、毎日色んな相談をお受けするのでとにかく刺激的な仕事ですよ。

 退屈はしません✨

 ただし、どんな時でもさくせん「いのちをだいじに」であるのは大前提。

 相談援助職に限ったことではありませんが。

 これだけはおのおの決してお忘れなく…。

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