立正安国論①【お祖師さまのおしえ】vol.10
【お祖師さまのおしえ】は、もともと「日蓮聖人(お祖師さま)の教えについて簡単に解説する」というコンセプトのコーナーでした。しかしこれも、昨日コンセプト変更した【はじめての法華経】と同様、身の丈にあっていなかったと感じています。
なので、【お祖師さまのおしえ】のコーナーも、「私がお祖師さま(日蓮聖人)の御遺文を少しずつ読んでいく過程を報告するコーナー」にしようと思います。
ちょうどいま、研究所の行事で『立正安国論』が取り上げられそうなので、夏までに『立正安国論』を読み終わるというのを目標に頑張ります。
よろしくお願いいたします。
早速、今日から少しずつ読んでいきます。原文は『昭和底本 日蓮聖人遺文』(日蓮教学研究所、改訂増補第三刷、2000年)を参照します。
『立正安国論』
旅客来たりて嘆て曰く、
「近年自り近日に至るまで天変・地夭・飢饉・疫癘、遍く天下に満ち、広く地上に迸る。
牛馬巷に斃れ、骸骨路に充てり。
死を招くの輩、既に大半に超え、之を悲しまざるの族、敢て一人も無し。
『立正安国論』は問答形式になっており、問いを発しているのは「旅客」、つまり旅人です。
設定としては、旅人がある家を訪ねて、そこの主に質問をする、という感じです。
冒頭から、早速旅人が主に話しかけます。「嘆て曰く」とあるように、近年の世の中の惨状を憂えて悲しんでいます。
「天変」とは、「天」に起こる異変とそれに伴う災害のことです。暴風雨や落雷、日照り、それから日食や月食、彗星の出現など、天体に関する異変も含まれるようです。
「地夭」は、大地に起こる異変とそれに伴う災害です。地震や洪水、火山の噴火などがあります。
現代では、「天変地異」という言葉の方がなじみがあるかもしれません。
天変地異によって「飢饉」と「疫癘」が天下にはびこっていると旅人は言います。「疫癘」というのは、悪性の流行病、つまり疫病のことです。
飢饉と疫病の流行のせいで牛や馬はいたるところで倒れて死んでおり、骸骨が路上に散乱している状態だ、とも言っています。
大半を超える多くの人々が死んでしまい、これを悲しまない人は一人もいない、とも言っています。
『立正安国論』は、今から750年以上前の、文応元年(1260年)、鎌倉時代に書かれた書物です。
しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行に伴う社会的混乱、経済的打撃、精神的苦痛、また度重なる異常気象による災害や地震被害、特に今年の1月1日に発生した能登半島地震のことを考えると、この旅人が言っていることは、決して遠い昔の鎌倉時代に起こった、現代と無関係のこととは思えません。
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今回読んだ部分は、旅人の第1回目の質問の約4分の1にあたります。次回以降も無理のない分量で読んでいこうと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。
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