大袈裟【くらしかるブッディズム】vol.9
【くらしかるブッディズム】は、昔から使われてきた仏教の言葉を、いま再び見つめ直すコーナーです。
第9回は、「大袈裟」です。
「大袈裟」って、漢字で書くと少し仰々しいですね。たとえば、ちょっとたちの悪い虫にさされて肌が赤く腫れてしまって、わあわあ騒いでいる人に、薬を塗ってあげながら「もう、大袈裟だなあ」と言ったりしますが、こういうときは半分ひらがなの「大げさ」くらいのニュアンスで、お坊さんが身に付けている「袈裟」のことなんか念頭にないような気がします。
袈裟と言っても、「五条」「七条」「九条」と色々な大きさがあります。私が僧侶として身近に感じる袈裟は「五条袈裟」と呼ばれるものです。日蓮宗の公式サイトにちょうどいい写真がありました。
この写真の、黄色い布でできているものが「五条袈裟」です。お腹から腰のあたりをぐるっと覆うくらいの大きさで、全然「大袈裟」ではないですよね。袈裟の下に着ている灰色の着物は「衣」と呼びます。
ちなみにこの写真は修行中の人たちのお写真で、晴れてお坊さんになったあとに着ける五条袈裟は、サイズは同じですが刺繍が入ったりしてもっと華やかになります。
これが、「七条」になると急に大きくなって、肩から膝下まですっぽり覆われてしまいます。「九条」ともなると、どうやって着けるのかすらわかりません…というか、実物を見たこともありません。
それなのに、世のなかにはさらに大きい「二十五条袈裟」というものが存在するようです。もう、そんな袈裟を身に付けた日には、重くて歩けないのではないかな?と思います。きっとそのお坊さんは輿か何かに乗って移動するのでしょう。ここまで大きくなると文句なしに「大袈裟」ですね。
参考までに、「九条袈裟」の写真がこちらです。
人が一緒に写っているのでサイズ感がわかりやすく、ありがたいです。大きい、というか、「すごく横に長い」ですね。
調べたところ、私たちが日常的に使っている意味での「大袈裟」は、儀式の際に僧侶が身に着ける大きな袈裟がものものしく、人の目を引いたから…という趣旨の説明が多く見られるのですが、諸説あってはっきりしたことはわかりませんでした。
ちょっと視点を変えて、「大袈裟だ」と言われた方の気持ちを考えてみると、どうでしょう。普通の虫刺されだと思ったら肌がパンパンに腫れて、いたがゆくて我慢できないのに、「大袈裟だなあ」と言われてしまったら、なんだか自分の気持ちをないがしろにされたようで、悲しい気持ちになるでしょうね。
誰かが訴えていることに対して「大袈裟だ」と指摘することは、「あなたがいま問題にしていることは、私にとっては、あなたが思っているより小さくて取るに足らないことだよ」というメッセージになってしまうかもしれません。
「大袈裟」の一言で片づけないで、まずは「大丈夫だよ」と、安心させてあげたいですね。私も反省します。
実は、この「大丈夫」も仏教用語なので、次回はこれをテーマにしようかなと思います。
今回の【くらしかるブッディズム】は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。
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