精舎【仏教用語解説】vol.32
【仏教用語解説】のコーナーでは、さまざまな仏教用語を解説していきます。
第32回は「精舎」です。
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前回、古代インド・コーサラ国の都「舎衛城」について紹介しました。この舎衛城に、「祇園精舎」と呼ばれる、お釈迦さまが滞在するための建物があったと言われています。
今回はもともと「祇園精舎」の解説をする予定でしたが、記事を書き始めてから、いや、そもそも「精舎」の解説をしなきゃだめじゃないかと気づきまして、先に「精舎」の解説を書きたいと思います。
「精舎」という言葉の意味
「精舎」というのは、僧侶が仏道修行しながら居住する建物のことです。のちに、お寺のことを指すようにもなりました。
私がいるお寺の名前は正法寺というのですが、お寺で使っている古い判子に、「正法精舎」と彫られているものがあります。「寺」のかわりに「精舎」を使っているんですね。
訳語について
「精舎」は漢訳語で、もともとのサンスクリット語では、「ヴィハーラ」(Vihāra)と言います。
「精舎」は音写じゃなさそうだけど、音写した訳語はないのかな、と思って調べたところ、「毘訶羅」というのがありました。
「精」という字には色々な意味がありますが、ここでは僧侶の修行を指して、「精練(よく訓練すること)」という意味で使われているそうです。「舎」は「建物」ですね。
現代の日本語では、「ヴィハーラ」(Vihāra)を「僧院」とも訳しています。
インドのビハール州の語源?
サンスクリット語の「ヴィハーラ」(Vihāra)という字を見て、もしかしてインドのビハール(Bihār)州と何か関係あるのかな、と思って調べてみました。
こちらの英語の記事が非常に参考になります。
「ビハールか、ヴィハールか?語源的根拠を州が調査中」
こちらの記事によると、はっきりした歴史的な証拠はないけれども、古くから「Bihār」という名前は「Vihāra」に由来すると言われているようです。
以前、「王舎城」の解説をしましたが、ここには「竹林精舎」という僧院(Vihāra)があって、お釈迦さまはそこに滞在されていたと言われています。この「王舎城」と「竹林精舎」の所在地が、現在のビハール州です。
ビハール州には「竹林精舎」の他にもたくさんの僧院(Vihāra)があったと伝えられていて、遺跡も残っています。一番有名なのは、「ナーランダー僧院」(Nālandā Mahāvihāra)でしょう。これについてはまた別の機会に解説しますね。
日本人からすればあまり気にならないけれど、インドの人にとっては「B」と「V」ではだいぶ違いがあるのでは?と私は思ったんですが、上記の記事にはちゃんとそのへんの説明もされていていました。
どうも、現在のビハール州があるあたりの地域で話されている言語には、「V」にあたる発音がなくて、「V」も「B」の音で発音していたらしいんですね。だから、「ヴィハーラ」(Vihāra)→「ビハール」(Bihār)となっても問題ないのだそうです。
このことから、ビハール州では、「ビハール」(Bihār)から本来の発音に近い「ヴィハール」(Vihār)に州名を変更すべきだという声が以前から上がっているらしいのですが、なかなか本腰を入れて議論する段階には至らないみたいです。
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今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。