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おもろい小説が書きたかった    「日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記」①

9月に入りました。いきなりで申し訳ありませんが、25日角川文庫から新刊「日本一の商人 茜屋清兵衛奮闘記」が刊行されます。そこでこの本について宣伝も兼ねて、色々思うことを書いていこうと思います。

もうちょっとおさまった感じもしますが、今年の甲子園は大変な盛り上がりをみせて、大阪出身ということもあり、最後までしっかり観戦しました。そこで覚えておられる方も多いと思いますが、決勝戦で金足農の伝令の選手が、マウンドに行く際に走り抜けて笑いを取りました。

その瞬間、「ああ、これや」と思いました。

何がかと言うと、この「茜屋清兵衛奮闘記」を書いた時にやりたいと思っていたことを、この伝令選手が数十秒で見事に表現してくれたのです。決勝戦、しかも大差で負けているマウンドに行くという緊迫の中で、まあ、見事なまでのギャグ。まさに、これが本書でやりたいことでした。

小説には兎角、感動したとか、泣けたとか、人生を学べたとか、美しかった、生き方に惚れた等々の讃辞が寄せられます。いずれも心が揺り動かされたという意味でしょう。私自身、今まで読んだ多数の小説で、そのように感じた作品は数多ありますし、そういう作品こそが王道だと言われているのも知っています。

しかし、「そうでもないやろ」と最近感じるようになっています。そういうタイプの小説が、あまりに過多過ぎで、しかも固過ぎで、本当に面白いのかという素朴な疑問です。

そんな頃、書き始めたのが、この「茜屋清兵衛奮闘記」でした。

(次回に続く)

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誉田龍一
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