ヒップホップは絶対的にかっこいいものなので-MAZAI RECORDSいちのロマンチシスト・ジャバラのヒップホップとクルーへの愛
「河原でのサイファーがこんなイベントになるなんて? いや、俺は信じていたぜ」
MAZAI RECORDS主催のクラブイベント「Tinpot Maniax vol.2」のオープンマイクでそう叫んでいたのはMCであり、トラックメーカーであり、DJであるジャバラだった。
MAZAI RECORDSが、たった3人でサイファーをやっていた頃、社会人としてその小さな輪に加わっていたジャバラは、自分たちのクルーへの愛情を事あるごとに口にし、時にはシーンに向けて辛めの言葉も投げつける。
ヒップホップへの強い憧れと愛情を照れずに口にし、それを証明するかのように音源を作り続ける。その一方で、サイファーだけでなくイベント「Tinpot Maniax」 (3月・9月開催のクラブイベント)などを開催。皆が集まる場を提供し続けている。
MAZAI RECORDSメンバーの中で最もロマンチシストなジャバラに、最初の挫折から現在の活動までの道のりを聞いた。
ただ楽しいから続いた3人だけのサイファー
―ラップをはじめるきっかけは?
Twitterでラップを聴いているアカウントをかたっぱしからフォローしていた時期があって、その頃に今一緒にMAZAI RECORDSで活動しているメンバー、ドクマンジュやヤボシキイたちとつながったんです。
ぼくはもともと中学の頃から上の兄貴を通じてヒップホップを聴いていて、さらに高校・大学でストリートダンスをやっていて、もともと親しみがあって。社会人になってからダンスをやめてしまったけど、大学が秋葉原に近いこともあってアニメもよく観ていたので、ラップとアニメ両方好きな人いるかなと思って。それが3年くらい前かな。
そのうちに、ドクマンジュとヤボシキイが自宅の近くでサイファーをやっているという話を聞いて。ちょうどその頃、土曜にぽ太郎さん(声優オタクラップの第一人者)と「ラブライブ!」のDVDをプライベートシアターで鑑賞して、日曜はラップをしながらBBQするという土日連続のオフ会があったんです。「じゃあ、ちょっとやってみよう」と思って、その前日の金曜日にサイファーに参加したのがきっかけですね。
―MAZAI RECORDS主催の週一サイファー・カレー会はドクマンジュ・ヤボシキイ・ヘルガの3人でやっていた時期が長かったけれど、1人だけ社会人で、続けていくの大変じゃなかった?
仕事が忙しい時期なんかは1~2ヶ月行けない時もありましたけど、なんとか都合をつけるようにしてましたね。向こうも気を遣ってくれて、もともと木曜だったのを金曜にしてくれたり。
―その少人数でよく続いたなって思います。
なんでしょうね。全員根がオタクなんではまるとどっぷりなんですよ。最初はyoutubeでインスト音源を流していたんですけど、そのうちに自分たちで作ったトラックを流したり、ジャズやノイズをかけたり。ヒップホップって底がないんですよ。やってもやっても新しいことがあるから、自然と続けられたって感じですね。
社会人になると週一で顔をあわせる友達とか普通はいなくなるじゃないですか。だから、毎週顔をあわせて共通の趣味に打ち込める仲間って、ぼく自身も大事にしたい気持ちが強かったんですよね。そもそも楽しいものだし、必死で続けてきたというわけじゃないんですけど、改めて考えると3年経ったんだなって。
今までのやり方と違うところに正解があった
―曲を作り始めたきっかけは?
フリースタイルばっかやっててもあれなんで、曲作りたいねって話はしていて。最初は24bars to killっていう曲のインストの上に乗せてレックしようと思ってたんですけど、録ったところでクラッシュしてデータ全部飛んじゃって。
ドクマンジュは前からMPCを持ってたんですけど、説明書も難しいし、使い方もわからないからってしばらく放置していたのを、データがクラッシュしたあたりから本格的にビートを作り出して。
あいつにぼくが好きなソウルの曲をもとにトラックを作ってもらって、ソロ曲を作ってサウンドクラウドにあげたのが2015年12月くらい。そのレックの後に、ドクマンジュに「自分の好きな曲をサンプリングして曲作るの面白いですよ」ってそそのかされて、次の週にMPCを買って、翌々週にあいつの家で教えてもらいながら作りました。クリスマスもあいつの家で曲作ってましたね。
―自分の好きな音楽で曲を作れるのが楽しいって感覚なんだ。
そうですね。ゲーム音楽とかアニメの曲とか、ダンスミュージックとか、いろんなものをアレンジできる面白さがあって。あいつに「機材の初期投資くらいしかお金かからないですよ」って言われて、軽い気持ちで始めました。すげえ沼だったんですけど。
―作ってみてどうですか?
実は、ぼく凝り性なのもあって、最初の頃は1本作るのに1ヶ月くらいかけてたんですよ。でも、時間かけて作ったからといって必ずしもいいものができるわけじゃなくて。2小節分、すごくこだわって凝ったものを作ったとしても、それが3小節目とうまくつながらなければ音楽としては全然よくない。なんというか、点だけこだわって凝ったものにするけど、線としてつなげた時に曲としてはイマイチということもあって。
でも、ドクマンジュと話した時に、「人それぞれ適正時間はあるので。時間をかけて作る人もいれば、サクッと作れる人もいる。ちなみにぼくは日はまたぎたくないです」と言ってたので、ためしに日をまたがずに作ってみたら1ヶ月かけて作ったときよりのびのびとしたものが出来てきて。瞬間的なひらめきとかを大事にした方がいいのかなって気づきがありました。時間をかければかけるほど良いものができるっていう固定観念があったんですけど、それが通用しなかった。
リリックなんかもそうなんですけれど、長い韻を踏むのは時間をかければ誰でも出来るんですよ。でも、それが音楽的にいいかはまた別で、しゃべり言葉で作った方がスムーズに聴けたりする。
今は最初からなまじ知識があるから「フロウはこう」「ライムはこう」とかスキルのフォーマットみたいなものに気を取られて、変に身構えちゃったりする人もいる。でも、そういうフォーマットに合わせて作っても音楽的にカッコ悪いと意味がないんですよね。
あまり形式にとらわれないで、今までの考えと違うところに正解があったりするので、最終的にはそれを自分で発見していく……。そういうところにヒップホップの面白さがある気がします。
―この人が目標というのはありますか?
今はないですね。一時期KID FRESINOに影響受けすぎてたんですけど、そのケツ追ってコピーしてもかっこよくないなと思って。それより、自分が今まで生きてきて得たものとかをちゃんと出せるようにしたい。だから、好きなラッパーはめちゃくちゃいますけど、あえて「こうなりたい」というのは作らないようにしています。
自分のビートに仲間たちの歴史が乗っていく
―じゃあ、具体的な作品の話をしましょうか。さっき話していた最初の作品はサウンドクラウドにあるRoutine Boogieですね?
あ~~っれ、ほんっとうに聴き直したくないくらい恥ずかしいんですよ。ラップも下手だし、声も出てないし。すっげえ恥ずかしかったんですよ。聴いてほしくないくらい恥ずかしかったんです。でも、あれをコスモパワーさんっていう、同じ業種……IT企業に勤めてる仲間が聴いて「あの曲は社会人にとって普遍的なテーマを書いていて、すごく響く」って言ってくれて。
ぼくにとってはめちゃくちゃ恥ずかしい曲なんですけど、それを聴いて感銘を受けてくれた人がいたのがすごくうれしかった。あの曲はちょうど社会人3年目で、忙しい案件の中だけど、仕事を少し面白く思えるようになってきた頃の歌なんです。当時の生活リズムみたいなものをそのまま素直に出した曲ですね。
―MAZAI RECORDS名義の最初のアルバムは、2016年9月に出した「ILL THUG TRIPLE」ですが、これはどういう経緯で出来たんですか?
曲を作りたいという話はずっとしていたんですけど、ちょうどチンポジム(ラップ練習会)やG.I.R.L(女性向けラップ練習会)の企画が始まって、一緒に遊んでくれる仲間が増えたので、「自分たちが形にしているものがないと」というのもあってついに作った感じですね。
ただ、これ作り終わったのが8月くらいで、リリースは9月末。その一ヶ月の間にTinpot Maniax (3月・9月開催のクラブイベント)をやったりしているうちに、自分たちの中で鮮度が落ちちゃって……。でも、せっかく作ったしということで、意を決してリリースしました。
―MAZAI RECORDSの曲ってオタクdisが多いじゃないですか。あれはどういう流れで?
自分たちがオタクなのにオタク馬鹿にするのはある意味同族嫌悪的なところもあるんですけど。でも、オタクだからという後ろ盾でダサいことやってる連中に対して「そういうんじゃねーだろ」っていうのがあって、それがリリックに出てる感じですね。
ただ、ぼくは去年くらいに「どういうやり方をすれば自分のラップがかっこよくなるか」というのを考えていた時があって。ぼくにとって、ヒップホップって絶対的にかっこいいものとしてある。で、ラップがめちゃくちゃうまければリリックがどんなにひどくてもいいけれど、今の自分が下品なことを言っても音楽的に聴かせる技術がないなと思って。それからあまり直接的にオタクをdisったりしないようにしています。
―歌詞によく英語を入れるのもそういうのを意識してるんですか?
日本語ってカタいじゃないですか。英語を要所要所に入れると流れがスムーズかなと思って。あとは、ちょっとカッコつけたいっていうのもあります。
―「ILL THUG TRIPLE」のオタクdisは本当に口汚くて……。
いやー、ほんとそう思います。最悪の塊みたいな。
―これはみんなでこういうガラの悪い曲にしようって話をしていたの?
そういう感じでもないですね。思い思いに適当に書いてつなげていったら最悪の塊になったみたいな。
―3人のマイクリレーが面白いよね。それぞれ声質も、ラップのクセも、悪口の発想もちがうから、「次はこいつか!」みたいなのがある。「OTK HUSTLER」は傑作ですね。
「OTK HUSTLER」は3月にTinpot Maniaxをやるときに、ライブでやれる曲を作ろうという話になって、「オタクが悪いことをして金を稼ぐ」という設定を作って皆でバッーと書いた曲ですね。ひょうひょうとした曲ですよね。
―思わず口にしたくなるフレーズが多いですね。フックの「お前ら犯罪者」とか、「マスターベーションマスター」とか。
「お前ら犯罪者」っていうのはぼくが思いついたんですけど、自分たちが悪いことをしているのに、他人事にしているのは面白いという話になって、そのフレーズを起点にケツで韻を合わせる形で2人がリリックを書いていったんです。でも、意味は何もない。誰一人として深いことは考えてないですね。
―2016年3月に出したビートテープ「Earthbound」はちょっとハウスっぽくて、聴いてて気持ちがいいですね。
あれは、明るいものを作ろうっていうのがありました。ぼくのビートはどちらかというとメロウ寄りで、2016年末に出したコンピもそういう哀愁漂う感じだったんですけれど、同じ流れで作っても面白くないと思って。ダンスをやっていてクラブミュージックになじみがあるから、そういう昔聴いていたものに影響された部分はあるかもしれないです。
―ダンスをやったことは制作に影響していますか?
リズム感は培われたと思います。カウントに対して走り気味にラップしちゃうと、「こいつ音聴けてないな」って思われがちなんですよ。ぼくはダンスをやっていてリズム感が多少培われていたので、オンビートでラップするというのは念頭に置いていますね。
あとは、ダンスは聴覚的なインプットを、身体を使って視覚的にアウトプットするんですが、ラップは聴覚的なインプットを聴覚的なアウトプットにしなくちゃいけない。そこで、どういうことをすると「おっ」と思ってもらえるのかは意識しますね。声を伸ばしたりとか、詰めたりとかそういうアプローチはダンスによって培われた部分かもしれない。
―樫ちゃん(現在は宇鈴汲名義)の「16-07」と、ドクマンジュくんの「Mi AKAI」は、どちらも「ラップと自分」を振り返る、けっこうシリアスな内容ですね。「何歩遅れのスタートだ 関係ねえ 好きなもんが出来た(16-07)」とか「ラップさせたいわけじゃなく、誰より彼よりヒップホップに救われてほしいって(Mi AKAI)」とか。あれはオーダーの結果?
いや、好きに書いてくれって伝えたらなぜか同じようなテーマの曲があがってきました。樫のリリックは、あいつがラップやり始めた頃に、ぼくが何の気なしに言ったことがすごく励みになったって言われて、「ぼくと一緒にやるときはそのことを書くつもりだった」と言われていて。
ドクマンジュの方はビートを渡して依頼したんですけど、ビートからイメージしていたテーマにぴったりの内容で、リリックが届いた時に思わずガッツポーズしました。あれはぼくの意図をドクマンジュが組んでくれた感じですね。
でも、シリアスで共通点のあるテーマになったのは本当に偶然なんです。結果的にあのテープに自然な流れで入る内容になってますね。
―樫ちゃんに話したのはどのフレーズ?
それが覚えてないんですよね。ぼくはサイファーの時は酒呑んで酔っ払ってるから。でも、その時にぽろっと言ったことが「すごくうれしかった」って半年以上経ってから言われたんですけど、「あー、そうだったんだ」みたいな感じです。
―制作物にそれぞれの歴史が入り込んでるね。
ぼくは一回ダンスを辞めているので、もう一度ヒップホップをやることになって、その企画で仲間がいっぱいできて……っていう今の流れがすごくうれしいんです。自分が作ったトラックに樫とかドクマンジュとか、みんながその人の思いを乗せてくれて、それが誰かの耳に届いて感想をくれるって普通に社会人やっているとなかなか味わえないことだと思うので。みんなでものを作れる場所が出来たのはすごくうれしい。
―らいんひきさんとの共作「JabLin」はどういう流れで作ることになったの?
らいんひきさんとはカレー会の後に一緒に帰ることも多かったので、「一緒にやりたいね」って話をずっとしてたんです。彼の初レックは2016年末のコンピで、最初は小節の概念もわからなくて大変だったんですけど、腰を据えてやってみたいなと。
直前に作った「Earthbound」は、自分がトラックメイクを始めて1年の集大成として作ったものだったんですが、それと同じ事をしても伸びしろがないと思っていて、今まで自分が作ってきたクセを抜きにして一回やってみようと。ぼくはソウルやジャズが好きなのでよくサンプリングしてたんですけど、別のジャンルのエッセンスを取り入れてみようかなと思って。だから、ぼくが実験的なことをやるのにらいんひきさんをつきあわせたって感じですね。でも、気負いすること無くやってくれました。
―そういえば、ヘルガさんは聴き心地のいいビートを作ることが多いけれど、「JabLin」は重たいビートが多いね。
ソウルとかはもともと聴き心地がいいから、それをサンプリングするとそういう曲になるんですよね。だから、ノイズっぽいものを取り入れたりして自分の中で作れる幅を広げる挑戦としています。
―「Maze」は、「音を愛し音に悩み 音の中でもがきながら 呪いのような救いを 手に受ける」とか、具体的な制作の話を盛り込んでますね。
「Maze」はダンスが嫌になって辞めてしまった時期から、今の仲間と出会ってラップを始めるようになってからのことを書いています。ダンス、高校ですごいはまったんですけど、大学のサークルがあんまりあわなくて……。モチベーションすごい下がっちゃって。でも、ぼく代表だったんですけど。社会人になって時間と場所も取れなくなってと言うのが重なって、やめちゃったんですよね。
「Maze」はリリックを書くのも、ラップするのもしんどくて。ドラムはあるんだかないんだかわからないし、小節数も長い。でも、歌い出しは暗いけれど、最後はドラムで転換があるのが、徐々に暗いところから明るいところに出てくるようで。
北海道のフォロワーで、ビートメーカーのナスティーさんのトラックなんですけど、彼もドクマンジュにそそのかされてビートメイク始めたんですよ。もともと彼がトラックにつけたタイトルがMaze=迷路って意味なんです。だから、自分がヒップホップに出会った時のもがいている感じが表現できるかなと。
ぼくはわりと抽象的な言い回しを使うんですが、それを聴いた人がある日はっと気づいてくれればいいかなと思ってそうしているところがありますね。
―「Maze」は説得力のある曲だね。ちゃんと聴かなくちゃという気にさせられます。曲の展開から世界観を考えるんだ?
ぼくはリリック先ってほとんどないですね。リリックの書き方を忘れないように、メモ帳に書いておいたりはしますけど、そのまま使うことはないです。リリックだけ用意しても、曲に合わないとおかしいじゃないですか。
―「ERG4EVER」はアニメか何かの話?
これはぼくもらいんひきさんもギャルゲーが好きで、いろんなギャルゲーを四季に合わせて春夏秋冬を表現してラップしています。直接的にオタクっぽいことやるのはやめようって思ってたんですけど、せっかくお互いギャルゲー好きだから1曲やろうってことになって。
―MAZAI RECORDSの面白いところは、お互いに客演することで新しい個性が出てくることですね。ヤボシキイくんのアルバム「テンシルエア」に入ってる「お小遣いも貰えない」とか。「お小遣いも貰えない 昔は会うたびもらってたのに」というフレーズが印象的です。
ヤボシとこの曲でやろうという話は前からしていたんですが、その頃にヤボシのおじいさんが亡くなって、R.I.Pする曲を作ろうという話になって。
ぼくのおじいちゃんが亡くなったのは中1くらいの時なんですけど、5歳くらいの遊んでもらった時の記憶をもとに書いています。ぼく一人だとこういうテーマでは書かないので、あいつが引っぱってきてくれたという。これもなすティーさんのトラックですね。
競い合い、作り続けることによって保たれるモチベーション
―「ILL THUG TRIPLE」が2016年9月、コンピ2枚「MAZACON1」「Python Code」が2016年12月、「もつ酢飯EP」「テンシルエア」「Earthbound」が2017年3月、ヤボシキイ2枚目「ENERGY WAVE」「JabLin」が2017年6月、そして今回同人音楽即売会「M3」に参加と、制作ペースの早さはMAZAI RECORDSの大きな特徴だと思うけれど、どうしてあんな早いペースで制作できてるの?
ぼくらがやっていることってインディーズですらない……。もう無名も無名なんですよ。しかも、ポップじゃなくてアングラ寄りだし。無名がアングラやるってことの人目を気にしなさもありつつ、やっぱり、作ったからには聴いてほしい。そのためにどうするかというと、やっぱり継続的に活動していくというのが一番大事かなと。
ドクマンジュと話したのが、「3ヶ月に1回は何か形のあるものを出す。しかも無配でというのが大事」ということでクオーター単位で目標を作ってます。モチベーションも維持できますし。
―合間にTinpot Maniaxが入るのも、いいサイクルになっていると思います。自分たちが作ったものを発表する場になっているね。
Tinpot Maniaxは3月9月だから、ちょうどクオーターのケツに来るんですよ。だいたい制作が佳境に向かっている時にイベントがあるっていう。それで大変な思いをするんですけど、自分が好きでやってるわけだしその制作、イベント、制作っていうサイクルにケツを叩かれている部分はありますね。
あと、ドクマンジュが前に「特にビートメイクは身内を一番意識してる」と言ってたんですけど、ぼくもそういうところがあります。身近な仲間が精力的に活動していて、しかもかっこいいものを作ってくるんで、おのずと刺激を受けざるを得ないっていうか。ぼくはあいつが作るものに刺激を受けて、「負けてらんねえ」ってすごいモチベーションをもらってるので。
―ブッキングはどうやってるんですか?
最初のTinpot Maniaxは都内のレンタルスペースを借りて身内だけでこじんまりやってたんですけど、川崎のアニソンDJバー「月あかり夢てらす」になってからは、もともとドクマンジュと交流があったMr.Smileさんが、ShirayukiさんとのユニットSNOWSMILEでライブに来てくれたり。そのMr.Smileさんが3on3バトルのために読んでくれたカクニケンスケさんが次にライブをやってくれたり。
9月のTinpot ManiaxのOLD RIVER STATEは、もともとオーリバのメンバーの松元さんが出した「Instagram EP」というのがすごく面白くて、ラップもうまいしドクマンジュが呼びたいって言ってたのでお願いしたら、オーリバで呼んでくれるならという話になって実現しました。
DJをやってくれたKATAOKAくんは、ドクマンジュの中学の友達なんです。茨城のMC・GOTITさんが主催しているMCバトル・常陸杯で再会して。そこで「イベントでDJやってよ。じゃあ、ライブも」という話になって、ALSEADさんがライブで参加してくれました。
GOTITさんとか呼煙魔さんはTwitterでの関わりがあって、それがきっかけで呼べたというのがありますね。
―お客さんの中にもTwitterつながりでイベントに参加してくれる人が多いよね。
そうなんですよね。仙台住まいの遊牧民さんとか、秋田のハリーさんとか。わざわざぼくらのイベントに来てくれて。こっちに来るきっかけがぼくらのやってることってのもうれしいです。
―それでは、今後の制作について。
音楽同人イベントM3に向けてアルバムを作っています。MAZAI RECORDS名義で、ぼくのソロと、ヤボシ&ドクマンジュのユニット「大丈夫音楽」で合計2枚。ぼくのほうはこれまでの3年間で自分がやってきたものの集大成で、自分が好きで観てきたもの、聴いてきたものを表現しようという感じです。
ムノウちゃんとヤボシに参加してもらってRoutine Boogieのpt.2を作りました。ヤボシもムノウちゃんも今年から社会人なので。あとらいんひきさん、ドクマンジュとも曲やってます。
―出会った頃は大学生だった仲間と、新しく仕事の歌を歌うのいいですね。具体的な目標はM3として、活動全体に対する今後の目標はありますか?
ずっと続けていきたいっていうのはもちろんですけど、自分の作ったトラックに誰かがラップを乗せてくれるのはすごくうれしいので、今後は身内以外にも色んな人と曲を作ることが出来ればいいなと思います。
―読んでくれる人に言いたいことはありますか?
誤解されてるところがまだまだあると思いますけど、生活に物足りなさを感じてる人はヒップホップやってみてください。
ヒップホップの起こりそのものが抽象的なものだと思うので、固定観念にとらわれてもいいことがないというか。未完成であるがゆえにどんどん変化していくから、自分が表現する余地がまだまだあるんじゃないか。そう思えるところがやってて飽きないところですね。
―出来上がっていないからこそ入り込みやすいというか、面白いのかもと思います。面白い人が好きなように生きてるジャンルですね。
特にMAZAI RECORDSに関しては、一癖ある人が集まってくれて、みんな思い思いの事やってるんで。「全然ヒップホップ知らないけど、ラップやってみた」という人のラップが突拍子もなさがあって新鮮さだったり。そういうのはうちのメンバーから学んだことですね。本当にヒップホップは可能性の塊だと思います。(2017/10/28)
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