#30 ラーメン愛好家・田中 貴(サニーデイ・サービス)「ラーメンはロックだ!」(2021.1.22&29)
ホントーBOYSサニーデイ・サービス祭り、後編はベース担当の田中貴さんが登場。しかし今回は音楽の話ではありません。実は田中さん、ミュージシャンでありながら近年はラーメン評論家として人気なのです。
僕、評論家じゃないですよ! 特に評論はしてないんで。だから肩書は……ラーメン愛好家? でもラーメンの評論だけで食えてる人なんていないんじゃないかな。みんなラーメン屋のコンサルをやってたりしますから
そもそも田中さんがどれくらいラーメン界で人気かというと、自らプロデュースしたラーメン本を出版したり――
本の付録としてラーメンソングを作ったり(作詞作曲・曽我部恵一、くるり・岸田繁など参加。豪華!)――
さらに『嵐にしやがれ』や『マツコの知らない世界』にラーメン通として呼ばれたり――
もはや完全に「ラーメンの人」じゃないですか!
CSフジテレビでやってる『ラーメンWalkerTV2』っていう番組があるんです。そのメインMCをもう6年くらいやってて。番組には乃木坂46の子たちがゲストに来て、一緒にラーメンを食べに行くんですけど、彼女たちは僕がミュージシャンってことわかってないかもしれない……
そんな闘えラーメンマンこと田中さん、そもそもなんでこんなことになったんですか?
サニーデイでデビューして、全国ツアーで福岡とか札幌とか行くじゃないですか。それでラーメン食べると「あ、面白いな」と思って。そもそもラーメンは子供の頃から好きだったんです。僕は今治出身で、家族で近所の「来々軒」に行くのが好きで。高校は香川・丸亀ですけど、そこでも最初に聞いたのが「このへんにうまいラーメン屋ある?」。でもみんな「ない」って言うんです。だって香川だから(笑)。それで高校3年間はうどんを食べ続けて、そのときも知り合い全員に「おまえが一番うまいと思ううどん屋はどこだ?」って聞きまくって。だから美味しいものを食べるのが好きだったんですよ。いま思えば高校時代から「冷たいうどんはあそこがいい、釜揚げならあそこ」って自分の中で分類してましたね
高校時代はうどんに浮気してたラーメン愛がよみがえったのは、大学で東京に出てきてから。
東京で僕が通ってた大学の横に「ラーメン二郎」があって、「これは何だ!?」と思って。そこからはまた会う人ごとに「一番好きなラーメン屋はどこ?」って聞いて回るようになるんです(笑)
ちなみに田中さん、普段どのくらいのペースでラーメンを食べるのか? その答えを聞いて、BOYS絶句です。
基本は年間600杯……今年(2020年)はコロナ禍だけど4~500杯は食べてますよ。1日平均2杯弱ですね。今日ももう2食べました(注:この時点で18時)。今日は大阪から来たけど、大阪を出発する前に1杯食べて、車を運転して広島に着いて。この収録まで時間あるから横川「陽気」に行きました
年間600杯という異常な数。しかし田中さん、体型も細身なら健康上の問題もないとか。胃袋どうなってるんですか? 飽きたりしないんですか?
でもみなさんも米を食べてて、米に飽きないじゃないですか。それと一緒ですよ。ラーメンは麺も違うし、スープも違う。そう考えたら、ごはんとみそ汁を毎日食べ続けてる方が不思議ですよ
なんだか煙に巻かれてる気が……ちなみにラーメン番組で1日何軒もロケがある日は、美味しくラーメンを食べるため収録の合間にプールで2キロ泳いで腹を空かせるんだとか。それ明らかに異常でしょ!
そんな田中さんのラーメン愛が爆発したのは、ミュージシャンとしてデビューして以降。
僕らは全国ツアーがあって、たとえば広島にも年1回来る生活をもう20年くらい続けてて。でもラーメン評論家の人は広島とかなかなか来れないじゃないですか? そういう人は地元の出版社が出してるラーメン本を見ながら食べ歩くしかないんですけど、僕はライブハウスのスタッフや地元の人に聞くんです。タウン誌とかに載ってるのは観光客用の店が多くて、地元の人は普段使いの店を教えてくれる。だって呑んだ後のシメにいい店とか、地元の人しか知らないでしょ? 広島だと昔のボロボロの「千番」とか。そういうやり方で食べ歩いてたら、評論家の人が「全然知らない店ばかり行ってる!」って言いはじめて。それで珍しがられてるところはあると思います
ミュージシャンならではのツアーのお楽しみが、いつしか独自のラーメン知識に。ラーメン文化に親しむことは、日本を知ることでもあるようで。
青森や新潟には煮干ラーメンがあって、そういうのは西日本にはないんです。でも愛媛の中華そばにはあったりする。九州はとんこつがほとんどで、逆に九州ではいまだに醤油ラーメンを知らない人も多いです。広島ラーメンも九州からとんこつの波が押し寄せて、とんこつ醤油になったんんじゃないかな? 山口もとんこつ醤油だけどもっととんこつ臭くて、岡山に行くとそれがもっと薄くなる。それで言うと四国にはとんこつがなくて、きっと瀬戸内海を渡れなかったんでしょう。でも徳島だけはとんこつ。で、徳島と和歌山は船でつながってるから和歌山ラーメンもとんこつになったんじゃないかと僕は推測してます
文化人類学的な面から見ても興味深い国民食の世界。最近はツアーの楽しみでラーメンを食べているのか、ラーメンを食べるためにツアーをしているのかわからないというウワサも。
2002年に全県のラーメンは制覇しました。でもライブって普通県庁所在地や大都市にしか行かないじゃないですか。だから小さいツアーをするときは、僕はなるべくそれ以外をリクエストするんです。もはやラーメンを食べるためにライブ場所を決めるという状態(笑)。知り合いのミュージシャンに「そろそろ山形に行きたいんですけど」って言いますから。で、「じゃあ、行こう」って。だから広島は尾道や福山でもライブやりましたね
ちなみに広島近辺で好きなラーメン、気になるラーメンはあります?
広島のとなりの山口の下松市、あそこだけ牛骨ラーメンがあって。醤油で牛骨なんで店の中が牛丼屋の匂いなんです(笑)。広島で好きなのは呉の「モリス」とか。福山は「朱華園」出身の方が開いた尾道ラーメンの店がいっぱいありますね。あと「新華園」本店の河原町店は取材拒否で写真も禁止だけど、明日行ってみようと思ってます
それにしても田中さん、どうしてそこまでラーメンが好きなのでしょう?
CDやレコードって、音楽だけじゃなくバンド名やジャケットも含めて楽しむじゃないですか。それと同じで、ラーメン店も店名や建物の雰囲気も含めて味わってる感じで。で、雰囲気がいい店は味もいいはずなんです。名盤だけどジャケがダサいってあまりないでしょ? あと、ラーメン店は作ってるところが見れるのがいいですね。うどん屋や定食屋は中が見えないし、それを見るのもライブハウス感覚というか店主の個性がすごく出る。だからラーメンは楽しいし、どれだけ行っても飽きないんだと思います
意外にも通じる、ラーメンと音楽の世界。あー、ラーメン食べたい! 最後、曽我部さんも含めてみんなで一緒に記念写真とりましたよー。
2020.12.24@IC4DESIGN