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【選んで無職日記128】広島ドタバタ旅③

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2024/12/1

 この日は起きてから最悪だった。生理の予定日を何日も過ぎていたのでPMSがひどく、睡眠不足と疲労で身体が終焉を迎えていた。
 日曜朝にさらっと帰ったH2君カップル以外の私たちは、今日は重ための予定なしに、地元をフラフラしようということになっており、起きるとH君夫婦はすでに用意をすませて朝食がてら散歩してくると言うのでトイレに行ってからベッドに戻ったが、どうも目が冴えて眠れない。
 結局うだうだベッドにいて、しばらくそうしてから化粧をして夫と外にでた。

 エアビー近所におしゃれなアメリカンダイナーのようなカフェがあるというので行ったのだが、ここは本当に朝からイケイケのおしゃれで、メープルシロップとチーズのサンドイッチがとっても美味しかった。
 PMSのせいでサンドイッチの半分も食べられなかったが満足して店を出て、H君夫婦と合流し市内を探索する。そごうのポケモンセンターに行き、パルコのちいかわランドに行き、汁なし担々麵を食べたいとH君が言うので、私が広島に来ると毎回気に入って行っている『くにまつ』に行った。
 くにまつは私は流川店の単推しで、他の店舗は基本行かないのだが、流川は昼営業はやっていないので仕方なく別の店舗に行く。連日の寝不足で意識も身体も終わっているのだが、くにまつを食べて細胞が活性化し、店を出る頃には元気になっていた。
 ・・・のもつかの間、この後H君の誕生日(この日が誕生日当日だった)を祝うためにサプライズでカフェの予約をしており、皆で向かったのだが、席に着いた頃には気持ち悪さのピークで、H君の誕生日だからお祝いしないとという使命感だけで席に座ってはいたものの、ほとんど意識が無くて会話の返答もうまくできていなかった(と思う)。
 カフェはエアビーのすぐ近くだったので一度皆で部屋に戻ったのだが、私はもうばたんきゅうでベッドに転がり込み、それでもぐっすり眠れることはなく、寝起きと睡眠の狭間のようなところで数時間滞在し、結局H君夫婦を見送ることなくそのまま彼らは東京に帰ってしまった。
 自らやってしまったことではあるものの、最後に挨拶くらいしていってほしかったな、と思い、そんな感情が湧き上がってくるとなんでも誰かのせいにしたくなるのがPMSというやつで、昨日からの皆の自由行動とかその他もろもろにムカつき、一人でエアビーで泣きながら友達にLINEをしまくった。

 新幹線口まで見送りに行った夫は彼らと共に晩御飯を食べてしまったため、私は夜ご飯をくいっぱぐれ、帰ってくる時LINEで「何か食べたいものない?」と言う優しいメッセージに「いらない自分で買いに行く」とイラつきマックスの返答をした。
 夫は七時頃戻ってきたと記憶しているが、その後も私は八つ当たりのように夫の声掛けに適当に返事をし、ヘッドホンと携帯電話だけ持って夜の広島に繰り出した。この時には少し眠れていたので体調も良かったのだ。
 とにかく私は一人になりたかった。沢山の人数の人と一緒に長くいすぎたのだ。私は一人で孤独になりたかった。

 外に出ると少しだけ風が冷たくて気持ちが良かった。夜ご飯だけ買いにコンビニに行こうと思ったけれど、すぐに家に戻りたくない気持ちが強くなって、九時までやっている書店に行こうと足を向けた。
 歩くと十五分くらいの道のりを、何故か泣きながら歩いた。寒いと右目から涙が流れるのはよくあることなのだが、それ以上の量の涙が両目からだらだら流れていった。ヘッドホンで音量を爆音にして、XGを聞きながら感傷に浸る。みんなみんなしんどい、と思っていた。

 早足で歩いたので書店にはすぐついた。商業ビルの七階だか八階だかで、他のフロアはもう閉店しているのでエレベーターで直接上がらなければならなかった。
 書店のフロアにつくと、イメージしていたのより店内が暗くて、しかも照明が蛍光灯の白いタイプで、それも天井に飛び飛びで光っているような形で、お客さんもあまりいないし店員さんもいないしで、とっても怖かった。なのだけれど大好きな本がたくさんある空間に久しぶりに入り込むことで、私の心は徐々に安寧を取り戻す。最終的に私の心を助けてくれるのは文字であり言葉だな、と思った。
 なんとなく韓国語の小説を手に取り、それを買い、手に持ったまま外に出て、来た道を歩き始めた。帰りもやっぱり何故か泣いていた。

 家に帰ってコンビニで買ったゆかりのおにぎりを食らい、夫の声掛けを無視し、ベッドではなくソファベッドで寝た。

 2024/12/2

 生理が始まった。今回の生理は胃痛も腹痛もあって吐き気もして、今までで一番酷い始まりだった。
 一日中ベッドにいたかったのだが、今日の夜は夫の家族とのご飯だったので、とりあえず楽な恰好の服を購入したいと思い、ユニクロに行くと夫に言うと、一緒に行くと言ってついてきてくれた。

 ユニクロまで市電で向かって軽いダウンを購入し、それで少し心が楽になって、そういえばユニクロの入っているビルの地下に行ってみたかった中華があるから行ってみようとなり、サンモールの『蓬莱』に向かった。
 Youtubeで出てきてからどうしてもずっと気になっていて、天津飯が食べたくて行った店だ。注文してほどなく運ばれてきたツヤッツヤプルップルの天津飯はそれはそれは美味しくて、普段なら餡に途中で飽きてしまうはずなのに、するするするすると食べた。

 その後はエアビーに戻り夜までゆっくりし、両親と会う店もエアビーから徒歩五分ほどのイタリアンレストランとのことで時間ギリギリに家を出るとすでに両親は到着して席に座っていた。
 魚介が美味しい店らしく、魚のカルパッチョの盛り合わせやウニのクリームパスタなど、どのお皿もとても美味しく頂く。

 その後皆でケーキを買って実家に行きましょうとなった時に、私の身体に変化が訪れた。
 とかく便意が凄い。これは一歩違えると、社会的に死ぬレベルだ。
 ケーキショップでケーキを選ぶところでもよおし、夫の父へのお土産を忘たので一度皆でエアビーに戻った時に、夫にLINEをした。
 「お腹ヤバい、先に行ってて」
 駐車場に車を取りに三人が家を出た瞬間にトイレに駆け込み、そこからは細かくは記さないがこれはもう家を出られないレベルだなと思った。

 毎回外食してから実家にお邪魔するというのが通例で、今回も非常に楽しみにしていたのに、さっき食べた海鮮が邪魔をしたのか、それともここ数日の疲労が祟ったのか、とにかくもう外出は無理と判断せざるをえない状況であった。
 「タクシーで後追いするから先に帰っていて」とメッセージを送ったのだが、無理して家に来ることないよと言って夫はエアビーに戻ってきた。

 私はここでも泣きながら、家に行けなくてごめんと夫に言った。もうメンブレ過ぎてどうしようもない三十過ぎの女性だ。人に見せられないレベル。自己管理能力の欠如。体力不足。”もう若くない”の体現。
 夫の実家には猫が三匹いて、今日が今回の広島旅で彼らに会える最後の日だったのだ。夫も猫たちに会うのを朝から楽しみにしていたのに、それが私の腸の暴走により取りやめになってしまったことへの罪悪感がひどくあった。
 何度もごめんごめんと謝り、一時間くらい泣きわめいた後に今からなら行けるかもと言ったりもしたが、また来年行く予定があるから大丈夫だよと大人の返答が返ってきて、それにも悔し涙を流した。

 2024/12/3

 朝早いバスに乗って空港に行かねばならなかったのだが、依然体調が悪くどうなるかわからなかったのでタクシーに乗り、またひどい金額を払って空港に着く。
 夫は広島駅で購入した『むさし』のお弁当を空港で食べ、私はそれを羨ましそうに見ながら飛行機に乗って新千歳に帰った。
 


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