商売を始めた頃:その3
型が決まる
久しぶりの続きです。新しい得意先はキャッチセールスの会社という事は書きましたが、毎日通うようにして社長と話をしながら商品を決めていきます。
ただ、こちらは普通の卸業であり得意先は業者間のみ。この新しい得意先は実際のユーザーという事で商品の売れ筋やデザインの勝手が全く分かりませんでした。
それをすり合わせる為、毎日通い売れているデザインを見せてもらって、デザインや値段を合わせていくようにしました。案の定全く違う商品ラインナップであり、このお客さんだけの商品を準備しなければなりませんでした。
ただ、難しいのかどうかといえば、デザイン的にはかなり簡単で宝石も小さいダイヤモンドやアレキサンドライトが中心なので、基本的には問題がありません。
問題といえば、ある程度リングならこれ、ネックレスならこれ、ブレスレットならこれといった商品を決めてしまう事に時間を取りました。というのは、向こうはお客さんに合わせた色々なデザインの提案を求めるのですが、こちらは商売柄そういった事をしていなかった為、対応が難しいのです。
という訳で、デザインの型を決めてしまい、それぞれ5本づつ購入してもらう形を取ったのです。それだと得意先は色々なデザインを考える必要はなく、こちらは同じデザインを複数本売る事が出来ます。
お互いのメリットが出た所で売り出す為の各デザインが決定し製作開始のはずが・・・
驚いた事は、決まった商品の製作をしている間にセールスがその商品を出来上がってもいないのにバンバン売りまくる事でした。
こっちは急いで作っているのに全く追いつかない程です。
大急ぎで出来上がった商品はすぐに売れてしまい、また作らなければいけない状況に・・・社長と「凄いな・・・」と話していました。
結局落ち着いてきたのは数カ月後でした。
業者と違い一切文句を言わない
もうひとつ驚いた事は商品のデザインに対してはアドバイスであったり修正であったりと言われましたが、商品の出来や留まっているダイヤモンドや他の商品の質などについては一切なにも言わない事でした。
「あ、良いじゃないですか。」
とだけ。ルーペで石を見る訳でもなければ商品を指に着けたりする事もない。ただ、見た目だけ良ければそれで良いという具合でした。
普段接している業者といえば、デザインや留まっている宝石に対してあーでもないこーでもないと何かと言って値引きの材料にしているので、一切なにも言わずどんどん売ってくるのです。
集中する対象が変わるのも仕方がないですし、実際売上も全く違いました。
業者と取引するのがアホらしくなるくらいです。
鑑定書付きのダイヤモンドへのこだわり
デザインは決まっていましたし、ダイヤモンドに対してもルーペでみたりする訳ではありませんでしたが、こだわりがないという訳ではなく鑑定書へのこだわりが特に凄かったです。
その中でもダイヤモンドのグレードである、
カラー:Dカラー
クラリティ:VVS1
カット:エクセレント
ハート&キューピット
というダイヤモンドであれば最上級なクラスのダイヤモンドを特に使用していました。もちろん価格的には問題ないようでした。
信販会社に組んでいたローン金額は色々でしたが100万円くらすになるとダイヤモンドは0.3カラットで上記グレードを設定して売っていたようです。
売り方に関しては後々話す業者さんより良心的な売り方でしたが、それにしてもこういったお客さんがいっぱいでした。
うちの販売価格は通常の卸業者と変わりない利益率でしたが、売る力は恐ろしいと思った記憶があります。
結果的に卸業者全体の売上と同じに
たった1年で卸業者全体の売上と同じになってしまい、商品作りに関しては別枠で作れるようになりましたし、業者間での取引の商品もデザイン性があり宝石の質などの予算も取れたので、全体的に良い商品になり卸業者の売上もあがりました。
本職は情けないなぁと話していましたが、1番大事だったのはどちらも疎かにしなかった事と、キャッチセールスはいつかダメになるから卸業者を大事にしていた事でした。
それが本当になったのは数年後の事でしたが、まだまだキャッチセールスの話は続きます。
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