見出し画像

【ココロコラム】大きな満足感を一つではなく、小さな満足感をいくつも得るのが大切

人間は何によって満足が得られるでしょうか。本能に基づく生理的欲求はありますが、それ以外だとまず、他人から認められたいという【承認欲求】があります。

この【承認欲求】をもっとも手軽に満たすものは、仕事です。学生なら学業です。あるいはおしゃれな洋服を着るとか、他人に誇れる何かを持つというのも【承認欲求】を満たそうとする試みです。その中でも、自分の本業を充実させることは、人生の満足度を上げるうえで欠かせないことは確かです。

気をつけたいのは、うまく成功して【承認欲求】を満たされたものほど、さらにますます熱中して、さらに人生の充実を図ろうとしがちな点です。他を犠牲にしてでも仕事にのめりこむ。

あるいは、他人に認めてもらえる何かに一心不乱に取り組む。エルメスを買って他人にちやほやされたから次はシャネルを買う。しかし、そこで得られる満足感は、つぎ込んだ労力に必ずしも比例しないのが問題です。【承認欲求】以外にも、他の種類の満足感を得る必要があります。

では、他の満足感とは何か。まず挙げられるのが【親和欲求】でしょう。他人と触れ合う。仲間を持つ。交流するといったことで満たされる欲求です。この【親和欲求】が満たされているかどうかは、人間の精神状態の安定にかなり大きな影響を与えます。

他人が声をかけてくれるのを待つのではなく、自分からどんどん話しかけて、【親和欲求】を満たしていきましょう。新しい趣味をもったり、サークルに入ったりするのも効果的です。新たな人間関係を作るよいきっかけになります。

ネットや携帯はこの【親和欲求】を満たす非常に強力なツールです。仲間を見つけ、新たな人間関係を作るのに大いに役立ちます。ただ、ネット上での交流は、お互い言いたいことを一方的に話しているだけの、交流ならぬ直流になってしまうことがあるので、その点は注意が必要です。また、実際に近しい友人と会って交流することも大切です。

そのほかの重要な満足感は、達成感でしょう。達成感の中でも、自分の何らかのスキルが上がった達成感や、他人の役に立った達成感は、非常に大きな満足感を与えてくれます。達成感は人によって非常にハードルが違います。目標や理想が高すぎて達成感を得にくくするのは、生きる上で損です。小さなことでもココロの中でオーバーに評価することで、達成感を得やすい体質を作っていきたいものです。

【承認欲求】【親和欲求】、それに達成感。これらを同時に満たすのは相当難しいです。大切なのは、たとえば【承認欲求】はあまり満たされていなくても、他の【親和欲求】や達成感があるからいいや、というような考え方を身につけることです。自分が満足感を得られる源を集中させるのではなく、多方面に分散する。これを意識しておくと、ココロにとてもいいです。

近年、格差社会がやたらと強調されています。仕事では【承認欲求】が満たされにくい人も少なくないでしょう。そういう場合は、仕事は最低限こなせればいい、他から満足感を得られればいいという考え方をすればある程度楽になると思いますし、友人が少なくて【親和欲求】が満たせず困っている人なら、何かで達成感を得ることで当面の満足感を得る。満足感は特定の少数から得るのではなく、分散して多数から得る。これは人生を楽しく送る上で、とても大切なことです。

(精神科医・西村鋭介)


お読みになって面白いと思ったり、参考になったら下記からサポートをお願いいたします。 サポートでご支援いただいた収益につきましては、今後の記事の執筆料や運営費に充当させていただきます。