【ココロコラム】頑張っているのに、落ち込んでいくのはなぜ?
五月、六月は、季節的には快適で気持ちのいい時期でもありますが、五月病、六月病の時期でもあります。
頑張って仕事や家事などやっているけれど、どうも達成感がない、むなしさがつきまとう、それどころかどんどん落ち込んでいく。そんなことはないでしょうか?
ひとつの実験をご紹介したいと思います。
心理学者ではなく、ミクロ経済学の専門家である、パリ大学ソルボンヌ校のクローディア・セニック教授の行った実験です。
AとBの2つのグループに、同じパズル問題を解いてもらいました。
どちらのグループも約10分で問題を解きました。
Aグループの人たちは、満足感を覚え、喜びを感じました。
ところが、Bグループの人たちは、ガッカリして、落ち込みました。
どちらのグループも、同じように、10分で問題を解いたのに、なぜこんなにも反応がちがったのでしょうか?
じつは、Aグループには「他のグループは解くのに15分もかかった」と伝えたのです。
そして、Bグループには「他のグループはたった5分で解いた」と伝えたのです。
「じゃあ、Aグループが喜んで、Bグループがへこむのは、あたりまえ」と思われたでしょうか?
でも、よくよく考えてみると、不思議でもあります。
どちらのグループも、「課題を10分で解決する」という、まったく同じことを成し遂げたのです。
それなのに、他の人より上だったか下だったかというだけで、気分はまったくちがったのです。
人は、いかに他人との比較で、気分を左右されているかということを、この実験は見事に示してくれています。
そして、そうだとしたら、これはどうしたって、大半の人は気分が落ち込むことになります。
というのは、自分より能力の高い人は、必ず自分のまわりにいるからです。
会社でどんなに頑張っても、自分よりすごい人はいます。
家事をどんなに頑張っても、自分よりすごい人はいます。
では、どうしたらいいのか?
「自分より下の人もいる」と考えて、自分をなぐさめるのか?
それも悲しいですよね。誰かをふみつけにして、自分が上だと思おうとするというのは。
やはり、いつも言っていることではありますが、他人と比べるのはやめて、自分自身とだけ比べるのがいちばんだと思います。
自分自身と比べるというのは、今日の自分を昨日の自分と比べるということです。
そして、昨日より今日、少しでも進歩していたら、それで喜ぶのです。
もちろん、昨日より今日のほうが後退している日もあるでしょう。でも、相手は自分ですから、他人と比べるほどの落ち込みはありません。
自分自身と競い合って、だんだんに進歩していくことを目標とするのです。
落ち込まずに、でも確実に進歩していける、唯一の方法ではないかと思います。
(津田秀樹)