オアフ島フォトスケッチ5
〜この島がくれたもの〜
「駄菓子屋」
父はハワイを初めて訪れた日、1時間ほど行方不明になった。
母や姉夫婦たちと、「さて今日は何をしようか」などと話していたら、知らない間にスーッといなくなり、1時間ほど経って、「どこへいった?」と心配し始めたら、手に小さなビニール袋を下げて、ニコニコ顔で戻って来た。
「イイお店があったよ」
袋の中身はスニッカーズやミルキーウェイなどのお菓子だった。近所を散歩していたら、店の中から子どもの楽しそうな声が聞こえたので、思わず入ったという。「あんな駄菓子屋がハワイにもあるんだ」。
以来、父はハワイに来るたびに、「あそこ行ってくるよ」と子どものように出かけ、大好きなスニッカーズを4、5個買い、そのひとつを食べながら帰ってくる。
「あの店、まだあるか?」
なぜか父は有名ショップや老舗レストランよりも気になっていたようだ。
たまに回り道して、父の代わりにまだ駄菓子屋があるかチェックする。
父亡き今もその習慣が抜けず、「まだやっているかな」と用もないのにこの店の前を通ってしまうのである。