杏ワイルダー

昭和のころからホノルル在住。元編集者。フリーの書き人、訳し人。

杏ワイルダー

昭和のころからホノルル在住。元編集者。フリーの書き人、訳し人。

マガジン

  • 短歌・子育て親育て

  • 娘との日々のもろもろ

    身長も、精神年齢も母より高い娘との日々のもろもろの話。

  • オアフ島フォトスケッチ

    つい見過ごしてしまいそうな、なんでもないハワイの日常を綴ったフォトエッセイ

最近の記事

フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(11)

あの頃は いろいろ「記念日」祝ったね ビッグマックの初完食さえ (ホノルル発)心配で小児科医に相談するほど食の細かった娘。「いづれ食べられるようになるから大丈夫」との先生のお言葉通り、小学校の高学年あたりから、あれ食べたい、これ食べたいと、食欲が出てきました。学校帰りはとくにお腹が減っていたようで、帰宅の途中にマクドナルドに寄るのがほぼ日課となっていました。あるとき「今日なら食べられそうな気がする」と娘はビッグマックに初挑戦。最後の一口をたいらげるときは、記念に動画で撮影す

    • フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(10)

      (ホノルル発)今夏、米本土の大学に進学した娘。キャンパスライフがよっぽど楽しいのか、なかなか電話してきません。ハワイの子はホームシックになりやすいって、誰か言ってませんでしたか。 あちらとの時差が5時間もあるので、電話をかけるタイミングが難しく、よっぽどの用事がないと「なんか掛けづらい」と夫がウジウジしています。 ロキシーが話したいって言うからね 電話してみた 私じゃないよ *ロキシーはわが家の4本足の次女のことです。

      • フォトエッセイ短歌:子育て・親育て(9)

        (ホノルル発)一人娘が今夏、アメリカ本土の大学に進学しました。近くにいないということは、こんなにも広い心で、その人を優しく包んであげることができるのか。 ソファーの下から出てきた娘の靴下でさえ、愛おしく…とまではいかないものの、だらしなさを咎めていたころが懐かしく思えます。「元気でやっているかな」と。 置きっぱなしを何度も咎めたコップにさえ胸つかまれる今となっては

        • フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(8)

          (ホノルル発)一人娘が大学進学のために家を出て、「空の巣症候群(Empty Nest Syndrome)」になるんじゃないかと、友だちに心配されていますが、意外に元気でやってます。何か趣味でもはじめようと、アマゾンでドラムスティックを購入しました。 ただですね、台所で食事の準備中に娘が使っていた物をふいに目にしたときなどは、「いないんだな」と寂しくなります。特にお弁当箱は。 茶碗、箸、コップにお花の弁当箱あなたの不在を実感す

        マガジン

        • 短歌・子育て親育て
          11本
        • 娘との日々のもろもろ
          5本
        • オアフ島フォトスケッチ
          9本

        記事

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(7)

          (ホノルル発)物価の高いホノルルで生活するのは大変です。さらに、まだまだ働かなくてはいけない40代後半、私は更年期障害を抱え、朝早く新聞社に出勤するのがつらくなり、在宅で請け負うかたちで仕事量を大幅に減らしてもらうことになりました。そのすぐあとです。生計のためにホストファミリーとして留学生のお世話をはじめたのは。娘は当時9歳でした。 それ以来、わが家には常時3人の留学生が滞在し、娘の部屋は学生さん用になりました。中学生になっても、高校生になっても、彼女には親と部屋をシェアす

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(7)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(6)

          日頃から娘には口うるさくしていましたが、大学進学前の数週間は「これからはなんでも一人でやってもらわねば」という母親としての焦りからか、娘には「これはこうするの」とか「そういうふうにはしない」とか「そんなことも知らないの?」などと、そりゃもう、あれこれ言っていました。 普段はふてくされる程度の娘も、さすがに我慢できなかったのか、口答えするようになり、言い争いが絶えませんでした。現地でもいろんなことで衝突しそうになり、そのたびに「頼むから2人仲良く」と夫から懇願されました。

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(6)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(5)

          (ホノルル発)いよいよ入寮。娘のルームメイトとその家族、総勢7人が スーツケースをひっくり返して、衣類をクローゼットにかけたり、生活用品をプラスチックケースに詰めたり、家電を取り付けたり…。最後にハワイから持ってきた陶器のレイを壁に飾って、夕方までになんとか終えました。 この日は父兄もカフェテリアでの夕食に招待され、食事を終えると娘は寮へ、そして私と夫はホテルへと戻りました。翌日からさっそく新入生向けのイベントが目白押しで、市内観光や大学周辺の下調べなど、娘と一緒に過ごす予

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(5)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(4)

          (ホノルル発)アメリカ本土の東海岸の大学に進学した娘は、8月半ばに大学寮に入居しました。事前にルームメイトと連絡を取り合っていたようで、「(ルームメイトが)電子レンジと掃除機、私が冷蔵庫を買うことになった」と娘。少し早めに現地に着いて、ターゲットやIKEAで生活必需品を調達しました。ほぼ買い物を済ませた頃、娘の部屋が5階で、しかも建物にはエレベーターが付いていないことが判明。腰痛がひどい夫は呆然としていましたが、結局、入寮当日は何十人もの先輩学生が待機していて、全部運び込んで

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(4)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(3)

          (ホノルル発)娘の高校では、ハワイ大学の屋内アリーナで卒業式が行われ、その後、隣接する野球場で卒業生にレイを贈る『レイセレモニー』へと続きます。球場内にはアルファベットのサインが掲げられており、卒業生は自分の苗字の頭文字の場所で待機します。これは、レイを贈りたい卒業生がどこにいるかを知らせるためですが、さらに見つけやすくするために、名前や写真入りの特大サインも立ち並びます。夫が用意したサイン(バナー)は、恥ずかしいほど目立っていました。 球場で苦笑いするほど目立ってた夫が選

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(3)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(2)

          (ホノルル発)卒業式で同級生に渡すキャンディレイを必死で100本も作ったあと、娘は「大切な友だちには手作りのフラワーレイを贈りたい」などと言い出しました。しかも作るのは手間がかかるクラウンフラワーのレイ。花を摘むところから始めるそうです。ちなみに花の形が王冠(クラウン)のように見えることから、そのような名が付いたそうです。彼女は近所の中学校のグラウンドで満開のクラウンフラワーを見つけて、すでに学校に連絡し「レイ1本分取っていい」という許可をもらっていました。私もバケツを持って

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(2)

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(1)

          (ホノルル発)結婚16年目、40歳目前でようやく授かった娘がこの夏、高校を卒業し、先日アメリカ本土の大学に進学しました。大学の入寮は本人だけでなく、親にとっても人生の大きなマイルストーンとなる一大イベントで、入寮の手伝いを終えて「子育てがひと段落した」という感があります。 娘から「おとな小学生」とか「歳とった妹」などと呼ばれていた頼りない私の場合は、彼女が「親育てをひと段落した」といえるかもしれませんが。 出産後は、毎日いろいろなことに忙殺されているうちに、気づけば娘は車

          フォトエッセイ&短歌:子育て・親育て(1)

          推し短歌 〜JKの娘へ〜

          「行ってきます」 振り向きもせず 手も振らず 遠ざかる背に ハヴ・ア・ナイス・デー (ホノルル発)高校生になっても、反抗期とは無縁で、変顔アプリで遊んでくれたり、インスタのストーリーのあげ方を教えてくれたり、学校での出来事をおもしろおかしく話してくれていた娘が、最近ちょっと元気がない。 夕方、近所のスーパーで彼女の大好きなポケ丼を買ってきたけど、少し残した。「学校どう?」って訊いたら、「だいじょうぶよ。なんで?」って逆に尋ねられた。 翌朝、学校に送っていく車中で、娘はず

          推し短歌 〜JKの娘へ〜

          あの夜の選択

          あの日はなぜか、これでもか、これでもかというほど選択を迫られた一夜だった。 30年以上も前、ハワイで極貧生活を送っていた学生時代のことだ。ハワイライフは寮生活でスタートし、ホームステイ、シェアハウスを経て、ワイキキで憧れの一人暮らしがようやく実現した。 エレベーターのないボロアパートだったが、ワイキキという便利な場所にあったため、週末の夜は女友だちが集まり、ディスコに繰り出す前の“パウダールーム”として重宝された。 「あの日」も友だち数人がわが家に集い、夜遊び前の入念な

          あの夜の選択

          初めて買ったレコード

          〜ホノルル発〜 itunesカードをいただいた娘、さっそくお気に入りの曲を購入するようだ。 1番最初に購入した曲って、あとあとまで“思い出の曲”として心に残るはずだから、「慎重に選ばなきゃ」って。 ああ、そういう大切なことをなぜ誰も教えてくれなかったのか。 娘から「自分で初めて買った曲はなに?」と聞かれる前に、そそくさとその場を離れた。 私が初めて自分のお金で買ったレコード…(昭和の子どもはレコードなのだよ) 確か小学校3年生か、4年生だったか。あの日、家族みんな

          初めて買ったレコード

          15年前のあの日

          〜ホノルル発〜 12月4日は娘の15歳の誕生日だった。 15年…長いのか、短いのか。 15年前の12月3日の午後、私は「これこそ本番」という陣痛に襲われ、病院に向かった。 予定日より1週間遅れたため、担当医は台湾旅行に出かけてしまっていた。代理で現れたのは、私より少し年上の、とても気さくな韓国系の男性医師。今はこの先生が私の担当医となり、婦人科系のもろもろの相談にのっていただいている。 出産は無痛分娩を選んだ。エピドラルという陣痛を和らげる麻酔の注射を背中に打っても

          15年前のあの日

          引退勧告

          〜ホノルル発〜 先々週のことだ。娘を学校に送り届けてから家に戻る途中、信号待ちで2度「ブッスン」と車のエンジンが止まりかけた。 そのあとアクセルを踏むたびにガクンガクンとなり、家に到着するまで冷や汗タラタラだった。 いつもお世話になっている車の整備士さんに連絡したら、その日の夕方にチェックしに来てくれた。 エンジンをかけては止め、あちこちチェックしていた整備士のおじさん、いつもの穏やかな顔が、今日はどことなく険しい。 「もう何年乗ってるんだっけ?」 「ちょうど22