化粧なんてどうでもいいと思っていたけれど…

〜ホノルル発〜

自宅待機命令が出されてからというもの、Webミーティングで誰かに会うとき以外は、眉毛をペンシルで描く程度のほぼすっぴんで毎日過ごしていた。

ある夜のこと。友人が投稿しているインスタの写真を眺めていたら、突如画面に二重顎のふてぶてしいオバチャンが現れた。

複数投稿された写真を右にスクロールするつもりが、間違って左にやってしまい、カメラの画面になってしまったらしい。

これが私の普段の顔なのか!

いつも鏡で見ている自分の顔とは、こんなにも違い、こんなにも老けて、こんなにもふてぶてしいのかと、びっくりして、そのあとドーンと落ち込んだ。

翌日からファンデーションとアイシャドウをつけ、チークも軽くはたくようにした。

テレビを見るときも、スマホをいじるときも、ソファーでふんぞりかえったりせず、姿勢をただして二重顎に気をつけるようにした。

さっそくLINEのビデオ通話でほぼ毎日話している母から「あら、痩せた?」と言われた。


20年ほど前だったか、メイクアップアーティストのかづきれいこさんが、ホノルルの老人ホームを訪れ、おばあちゃんたちに元気の出るメイクを施すというボランティア活動を取材した。

化粧をしてもらった80〜90代のおばあちゃんたちは、顔がパーっと明るくなり、「今夜はダンスに行きたいわ」とか「このホームにはかっこいい男性がいなくて残念ね」などと、まあよく喋る喋る。施設内が一気に賑やかになり、メイクの力に心底驚いた。


まだ自粛生活は続いているが、せめてメイクぐらい面倒がらず、毎日気分良く過ごそうと思う。ダンスホールに行きたがっていた、あの日のおばあちゃんたちのように。

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