出会ってしまったシェパード犬
〜ホノルル発〜
小学生のころからの夢が3年前に叶った。
シェパード犬がわが家にやってきたのだ。
2017年の夏、コンドミニアムから築60年余りの一軒家に引越したのだが、その2カ月前に、ハワイ島のヒロで生まれたシェパード犬の赤ちゃんに出会ってしまった。
ハワイ島の夫婦がシェパード犬の飼い主を探していると、地域の情報サイトに掲載されていた。さっそく連絡を入れると、7月初めに8匹の赤ちゃんを連れてオアフ島にやってくるという。
そして、ああ、出会ってしまったのである。
運命の赤い糸に導かれたように、トコトコと近づいてきたシェパードの赤ちゃんに、私のハートは射抜かれてしまった。すぐさま抱っこして「はい。今日からうちの子」と私。
ところがだ。8月半ばの引越しまで、私たちはペット禁止の仮住まいのアパート暮らしだった。
「隠して飼おうか」「ダメに決まってる」「もう離れられないよ」と家族会議を開いていたら、売り主の奥さんの方がやってきて「一旦ヒロに連れて帰って、引越しの日まで私が世話をしますよ」って。
「大切にしてくれる人に飼ってもらいたいから」
そんなわけで“娘”はご夫婦と一緒にヒロに戻り、引越しを終えた1カ月半後、ハワイアン航空機の貨物室に乗せられて、たったひとり(1匹)でホノルルにやってきた。ご夫婦の娘さんが空港でピックアップして、届けてくれた。
だが、わが家の次女となった「ロキシー」との再会は、感動とはほど遠いものだった。
ハワイ島でよっぽどご夫婦に大切に育てられたのか、私たちのことを「なんだコイツら」という顔で見ていた。
警察犬だった親父のDNAを受け継いでいるのか、見ず知らずの人に対する警戒心がハンパない。睨むというより「メンチ切る」って表現がぴったりの迫力満点の顔だった。
その日はずっとツンツンしていたが、抱っこして、走って、ボール投げして、くすぐって、噛み付いて(私が)、餌あげて、一緒に寝てあげて、「私がママよ」を必死でアピールしていたら、翌々日ぐらいから「ねえママ〜」と(呼ばれてないけど)、しっぽふりふりで懐いてくれた。
そしてメンチ切ってたロキシーは3歳半になった。おてんばといたずらに手を焼いているが、日英両語を理解するバイリンガル犬だ。
夫も娘もロキシーとは遊ぶだけで、世話はもっぱら私任せ。でも子どものころから憧れていたシェパード犬との暮らしだ。1日3回の大便の片付けだって苦ではない。苦ではないが、先日ツイッターであるつぶやきを読んでからというもの、大便の片付けがやりにくいったらありゃしない。
「犬にしてみれば “なんでうんこ拾うの?好きなの?” って感じかな」
ロキシーは、片付けしている私をいつも少し離れたところからジーッと見ている。ヤツに「あんなの拾って集めているのかな。変態だな」と思われていたなら心外だ。それに悲しすぎるし、ちょっと恥ずかしくもある。
なので最近は「くっせ〜、あ〜くっせ〜。嫌だ嫌だ」と、大声で文句言いながら片付けることにしている。
なんてマヌケな私…