オアフ島フォトスケッチ8
〜この島がくれたもの〜
「カニとり名人」
夫の家族は彼の祖父が子どものころから、レイバーデーの週末は、「カハナベイでキャンプ」というのが恒例行事となっている。
「行くか?」などと訊ねられることはなく、私も強制的に連れ出された。
つまらなそうにしている私に、義父が釣り針に網をぐるぐる巻きにしたものを手渡した。
「これでカニでもとってきなさい」。
美しく穏やかなカハナベイに、カニの大群がうじゃうじゃいることを、イカを付けた針を水中に落とした直後に知った。
日が沈み、暗くなっても、私は夢中でカニをとり続けた。
それからは毎年ここに来ると、ひとりでカニとりに興じた。
親戚の子どもたちから「いいな。そこの場所でやらせて」と懇願されても、私は「自分で場所を探せ」とすごみ、網にからまってバタバタしているカニの姿に、アドレナリンを大放出させていた。
海岸にいるみんなから「あいつはカハナベイとラスベガスに行くと性格が豹変する」と陰口を叩かれているとも知らずに…。