womenとウーメン
〜ホノルル発〜
新型コロナ感染防止のため、3月末から娘の中学校も遠隔授業に移行した。
大人になって「勉強って楽しいな」ということにようやく気付いた私は、現役のアメリカの中学生と一緒に、しかも無料で(クタクタの部屋着のままで)講義を受けられるこんなチャンスは2度とないと、娘に嫌がられながら面白そうな授業を「立ち聞き」している。
国語(英語)の授業では『To Kill a Mockingbird(アラバマ物語)』を読み、各登場人物の心情を議論したり、社会科では自分が大統領になって、著名人やクラスメートを閣僚ポストに選んで組閣に取り組んだりと、「私も課題を提出していいですか」と先生に頼みたくなる興味深い内容だ。
しかしだ。遠隔授業に出席、いや立ち聞きしていていちばん驚いたのが、「娘の話す英語」だ。ペラペラとすごい早口で、ボキャブラリーも豊富だ。
私に話す英語と、先生やクラスメートに話す英語が、「おかあさんといっしょ」のうたのおねえさんと、「快傑えみちゃんねる」の上沼恵美子さんぐらい違うのである。
私は「ディスイズアペン」からはじまる英語の授業を受けた昭和の子どもだ。発音の悪さは十分に自覚している。でも娘に気を使わせるほど…いやそれはないな、娘にやさしい英語で話させてしまうほど、私の英会話力は低レベルだったのか。ちょっとしたショックだった。
その夜、それとなく娘に聞いてみた。すると「話し方を変えている意識はまったくない」そうだが、私の英語について「会話というより、発音でひどいのが多々ある」とヤツは言った。たまに「笑いをこらえられないレベル」だと。その顔がもう吹き出す寸前である。うすうす感じてはいたが、母にはかなりショックだぜ。
以来、私は英単語の発音レッスンを娘から受けている。講師、想像以上に厳しい。
とくに酷いのが「world」「water」「battery」「rural」「daughter」などなどなどなど…
「women」をいかにも英語っぽく「ウーメン」と言ったら、「ツボった〜」と1分ぐらい笑い転げていた。そして「ウー」のところを「wig(ウィッグ)」の「ウィ」に、そして「メン」と続ける、と教えてもらい、何度か練習したらうまく言えた。娘と飛び上がってハイタッチした。
「daughter」のことを「ドウター」と、最後に舌をくるってやったら、気品ある英国風の言い方になっていると、これまたヤツはしばらく爆笑し、「dodder」と発音するようアドバイスされた。あ〜難しい。
最近は、地元紙「ホノルルスターアドバタイザー」の娯楽面に載っている星占いを教材に、毎日娘から発音の特訓を受けている。鬼講師によると、これをパスしたらスマホの音声認識機能を使って、私の英語の発音がちゃんと文字変換されるよう、授業をレベルアップさせるという。