【特級ファイナル 特別編】飯森マエストロへのインタビュー~これからの音楽界を担う若いピアニストへの激励
こんにちは。
特級公式レポーターの飯島帆風です。
ピティナ特級ファイナルが終了。ファイナリストの4人がピアノコンチェルトで、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と共演しました。それぞれのコンテスタントが音楽にひたむきに向かいあう熱量に圧倒されました。
今回は、指揮者を務められた飯森範親(いいもり・のりちか)マエストロにお話を伺うことができました。
ピアニストがピアノ以外の楽器も知る必要性
――今回、初めてピティナ特級で若いコンテスタントたちと共演していただきました。4人のファイナリストとの共演で指揮をした感想を聞かせてください。
飯森マエストロ ピアノだけで練習したときと、オーケストラと練習したときでは、全く状況が異なってきます。正直なところ、その中でいろいろなことを吸収できた方、なかなか消化不良で終わってしまった方がいらっしゃったと思いますね。
それとやはり思うのは、ピアノの方は普段、ピアノのテクニックを重視して一生懸命練習することが多いのではないでしょうか? こういうふうにオーケストラと一緒にやることになったときに、普段とは全く異なる状況、環境に置かれるわけです。そのときに音楽の方向性を見失ったり、あせってしまったりしないためには、日頃から、オーケストラのコンサートやオーケストラの響きを身近なものにしておくというのが非常に大事です。
実際にオーケストラと共演するというのはなかなか難しいかもしれません。けれども、今回のファイナリストは、偶然にも4名とも藝大の方々ですよね? 弦楽器や管楽器の方々と一緒になって、小さな編成でアンサンブルをするとか、比較的機会を作りやすいのではと思います。小さな編成でできる、良い作品はたくさんありますし。そういったものを頻繁にやって、オーケストラに用いられているピアノ以外の楽器の特徴など、いろんなことを日頃から感じて身につけておかないと、いざ、こうしたオーケストラとの共演のときにはとても難しいんですよね。
だから、そういうオーケストラのことも勉強してほしいです。どうしてもピアノの方々ってピアノの練習室にこもって…という人が多いのではないでしょうか?
――そうですね。ピアノを弾く方というと、1人で黙々とピアノに向かっているというイメージが強いかもしれません。
飯森マエストロ そうですね。ピアノを練習しているだけでは、やはり協奏曲は難しいと思います。その点、飛び抜けたピアニストには、オーケストラをわざわざ遠くまで聴きに行く、オーケストラの曲が大好きだという方が多いように感じますね。
だから、ぜひ今回のファイナリストの方々にもお伝えしたいのですが、日頃からオーケストラの響きや特性、いろんな楽器との音楽的な共有の機会を、学生のうちにたくさん持っておいてほしいと思います。
厳しいことを言いましたが(笑) ぜひ、頑張ってください。
一日に同じ曲の指揮をするということ
――今回は、森永さんと神宮司さんが、チャイコフスキーの《ピアノ協奏曲 第1番》を演奏しましたね。コンクールでの指揮ということで、同一の曲を違うコンテスタントと共演する際に意識されたことはありますか?
飯森マエストロ 同じ曲を違うソリストと一日にやるという点では、以前にも日本音楽コンクールで、ブラームスの《ヴァイオリン協奏曲》を一日に4回、指揮をしたことがありますね。
そのときも大変でした。でも同じ曲なのに、コンテスタントたちがそれぞれ「こういうふうに考えてくるのね」「こういうふうに弾くのね」ということがあって、かえって面白いんですよ。
今回もチャイコフスキーの《ピアノ協奏曲第1番》を2人と共演しました。似ているところはもちろんあるのですが、解釈が違う部分が何か所もあって。そういうところをオーケストラも、指揮者の僕も、把握しながら演奏を続けるというのは、結構スリリングで面白かったです。
――会場で聴いていても、同じ曲なのに違って聴こえる部分があって、その違いを楽しめました。
飯森マエストロ そうですね。
あとは、16時30分開演であるにもかかわらず、たくさんのお客様にご来場いただいたと思います。さすが、ピティナさんの力だなぁと思って(笑)
インタビューを終えて
ピアニストとしてやっていく方には、ピアノだけではなくオーケストラも勉強してほしい――若いピアニストに対する熱い想いが直に感じられたインタビューでした。
きっと、ピアニストとしてオーケストラとの共演が大切であるからこそ、ピティナ特級のファイナルにはオーケストラとのピアノコンチェルトの共演が課されているのだろう、と飯森マエストロのお話を通じて腑に落ちました。
貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
▼ピティナ特級の最終結果や、動画はこちらから
(写真提供:ピティナ/カメラマン:石田宗一郎・永田大祐 ※本レポートでの画像利用許可済)
最後までお読みいただき、ありがとうございました! よかったら「スキ」も押してくださると嬉しいです!