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あのリンゴの行方

母が庭の木にぶらさげて
リンゴを置いていた

「なんでだろう?」

と不思議に思っていたら
朝食をとっている際
何の気なしに窓の外を眺めたとき
その理由がわかった

野鳥が遊びに来ていて
リンゴをむしゃむしゃ食べていた
中々に良い、食べっぷり

リンゴを頬張る鳥さんの近くで
もう一羽
ピーピー鳴いている鳥がいて

何してるのかな〜?
「お前ばっかりずるい!」
と言ってるのかな?

なんて考えていたら
しばらくすると
リンゴを頬張っていた鳥さんが
パタパタと木の上の方に移動し
ピーピー鳴いてた鳥さんが
今度はリンゴを頬張りはじめた

これまた良い、食べっぷり

なるほど
見張り役と食べる役がいるのか

鳥社会も中々面白いもんだな〜
ちゃんと役割分担が、あるんだなー

と、朝から感心した

そして、朝食を食べる僕の横で
鳥さんたちも朝食をとっている
この状況に
なんだかとっても、ほのぼのした気分に

鳥さんたちがいなくなった後
庭に出て、リンゴを見てみると
随分と食べられていた

その食べっぷりに、もはや感動


よっぽど美味しかったんだな〜
鳥さん達、良かったね

微笑みながら、再び自宅へ入る僕

ちょうど玄関で靴を脱いでいるとき
母が通りかかったので
写真を見せながら
「凄いね!鳥が来るんだね〜
リンゴ、よっぽど美味しかったんだろうね!」

そう伝えると
意味深な笑顔を浮かべながら

「そうだね、本当に"適材適所"ってあるよね。
リンゴもきっと幸せだよ」

と言い、スッといなくなった

適材適所?
しかも、鳥さんじゃなくて
リンゴの方が幸せ?
どういうことだ?

しばらくポカーンとしていた僕
台所に行き、ハッとした

そういえば数日前
「美味しくないリンゴだよって
ご近所さんに頂いたから食べてみたら
本当に美味しくなかったんだけど
このリンゴ、いらない?笑」

そう母に話かけられ
なんだこの会話はと思いながら
(ご近所さんもなぜ持ってきたんだ。笑)

「美味しくないならいらないよ!笑」
と、笑いながら突き返した

「そうだよね〜どうしようかね〜」

そう言いながら
母は果物カゴにそっと戻していたが

あのリンゴの姿が見当たらない…
母がリンゴを食べていた形跡もない…

となると、あのリンゴって…
もしや…そのリンゴなのか⁉︎

再び庭に出てみると
僕が突き返したリンゴが
確かにそこに、佇んでいた

しかしまぁ〜良い食べっぷり

さっき見たときとは
僕の見え方もまた違ってきて
リンゴがなんだかとっても誇らしそう

あんなに皆に
煙たがられたリンゴを救った母
我が母ながら、あっぱれ

適材適所とはまさにこのこと
母に拍手を送りたい

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