見落としてたものがたくさんあった、いつもの道

先日、仕事の関係で
高齢者施設から一週間ぶりに外出する
泉さん(仮称)というおばあちゃんとお話した

まだまだ暑い、８月
「こんにちは！今日も暑いですね〜」
と泉さんに話しかけると
「この暑さが感じられて、あたしゃ嬉しいよ！！」
という答えが返ってきて
僕は思わず「え？暑さですか！？」
と聞き返してしまった

聞けば一週間、ずっと施設から出れず
外の様子がわからなかったんだとか

泉さんは足が悪く
また、ご高齢ということもあり
何をするにも、注意が必要

それでも建物の中にずっといると
息がつまってしまいそうだったので
施設の敷地内だけでもいいから
ちょっと散歩したいとお願いしたところ
「熱中症になったら大変だから」
と言って、許可をもらえなかったそう

「施設の人の言うこともわかるけどさ
建物の中にずっといたんじゃ
あたしゃ人間じゃなくなっちまうよ」

泉さんが悲しそうな顔でそう話す

そんな泉さんを車に乗せ
目的地まで送り届ける役割だった僕

後部座席に泉さんを座らせ
車を走らせた後
少し後ろの席の窓を開けた

すると泉さん
「あ〜いい風〜気持ちいいー
あたし生きてるわー！」
と、とっても喜んでくれた

その笑顔が、無邪気な子供そのもので
とても癒される

走行中も窓をキョロキョロと眺め
「あそこには〇〇が建ったんだね〜」
「ここには⬜︎⬜︎があるよ〜凄いね〜！」
と指を刺し、興奮しながら話してくれる

泉さんを迎えにきたとき
僕は同じ道を走ってきたはずなのに
泉さんを乗せて走ると
全然違う道に見えてくる

赤信号で待っていると
「あら〜赤トンボがいる！外は暑いけど、確実に秋が近づいてるのね〜」
と泉さんが教えてくれた

そんな変化に
僕は毎日外を歩いているのに
まったく気づけていなかった

そうか、暑くて暑くて
永遠と続くのでは？
なんて思ってしまっていた夏も
ちゃんと秋に向かっているんだな〜

ただぼーっと過ごしていると
こんなにも見落としてしまうものなんだなと〜
と、とっても大切なことを
泉さんに教えていただいた

なんだか人の幸せも
似ている気がする

そういえば泉さんって
笑い皺が多くて
素敵な笑顔の人だなぁ〜

僕もこんな風に
歳を重ねていきたい