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ほのぼの日和#4 地雷―『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』―

ほのぼの日和と日記のタイトルをつけたものの、物騒な、あまりかわいくないタイトルが続いてる気がするけど、まあそれもよしとしよう(笑)

今回は、ホテル療養中の時間を有効活用して、読んだ本に触発されて考えたことを書こうと思う。

今回読んだ本は、ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社、2021年である。日本にいるときから、生協で大々的に並べられていて気になっていた本で、つい先月?の読書会の本(読書会には参加できなかった)であったため、たまには趣向を変えてということで読んでみた。内容が予想していたものとは随分ちがったが、今の私にぴったりだった。

簡単にいうと、イギリス在住の日本人のブレイディみかこさんとその息子である「ぼく」、そしてアイルランド人のブレイディさんの旦那さんや「ぼく」のクラスメイトたちの物語である。ブレイディさんが感じたことがあるがままに書かれており、「ぼく」の成長物語としても読むことができる。ブレイディさんは日本人だが、イギリスに住んでいる、そして「ぼく」も英語しか話せないが、成長するに従って見た目が“東洋”っぽくなり、様々な人種に関する問題やアイデンティティにかかわる問題に直面する。そのほかにも、この本を読んで考えさせられる問題はたくさんあるのだが、とくに今私がおかれている状況と似通っていると思ったのが、この人種にかかわるところというか、ブレイディさんがアフリカ系の黒人女性と接する場面(「9地雷だらけの多様性ワールド」)である。

今、現在私はウガンダという場所にいるわけだが、もちろん彼らにとって私たち日本人は珍しい。どこにいっても、稀有な存在を見るようなまなざしで見られる。ブレイディさんの本の中にもあったが、よく「Hi, China, ニーハオ」とよく言われる。私は無視するか、日本人だよという。悪気はなかったのか、謝ってくれる方もいる。子どもたちはよく「ムズング(ウガンダの現地語の1つで、白人という意味らしい)」と言って手を振ってくるので、アイドルにでもなったかのように手を振り返す。

日本でアフリカ出身のような肌の色が違う人がいたら、珍しいように彼らにとっても私たちは珍しいのだ。正確には白人でなくても、白人と同じように見えるし、中国人と日本人の区別なんかつけることができるわけがない。私たちも、だれがアメリカの人でイギリスの人かわからないのと同じように。

そんなこんなで、毎日自分がマイノリティであることを自覚しながら過ごしていた。私は、私自身が彼らにとっての“地雷”だと思っていた。彼らは私たちの文化や習慣を知らない、だから彼らは私たちを傷つける、とまではいかないものの、私たちの予想を上回る、想定外のことをなんでもぶつけてくる。時間に遅れてくるのも普通、セクハラだろうと思われる発言も平気でしてくる(これは、その人が特別だったかもしれないけれど)。彼らにとっては当たり前でも、私たちにとっては当たり前ではない。でもそれに気づかずに踏んでしまう。

でも、それは私にとっても同じことだった。私も彼らのあたりまえがわからない。私だって、いつ地雷を踏むかわからないのだ。この国に来て、日本では考えられないがよく宗教のことを尋ねられる。(大概困って、神道というもので、クリスマスも祝うし、仏教も信じているというわけのわからない説明をしているというのが正直なところなのだが。)
私の学校は、キリスト教の学校である。学校の名前にセントがついていて、キリスト教関連ということになるらしい。(語学の先生はrichな学校と説明していたが、それはいわゆるお金持ちの学校ということではなく、富が豊かだとかそういう意味のrichなのだと思う。)そこで、働いているスタッフの方が私の家にカーテンをつけにきてくれたときに唐突にこういった。「私はここで働いているけど、ムスリムなの。」その時は、へーそうなんだぐらいにしか思わなかった。

けど、これはムスリムだということを私が知らず、平気でその人の前で豚の話をしたり、豚肉を食べたりするということを未然に防ぐためだったのではないかと。考えすぎと言われればそうなのかもしれないが、このキリスト教の学校では無意識にここで働く人達もすべてキリスト教の信者だと思うだろう。この人は、何度もいろんな人にそう勘違いされ、そのたびに説明してきたのかもしれない。だから、今回も私が知らないうちに地雷を踏んで、お互いが嫌な気持ちにならないように、出会ってしょっぱなに、私に自らの宗教のことをカミングアウトしたのかもしれない、そう思った。

この国では、いやこの国に限らず?私は(みんな?)地雷であり、だからこそほかの人の地雷を踏む可能性を大いにもっている。

「マルチカルチュラルな社会で生きることは、ときとしてクラゲがぷかぷか浮いている海を泳ぐことに似ている。」(ブレイディみかこ、2021年、145頁)。

https://www.shinchosha.co.jp/ywbg/ywbg1/

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