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棟方志功展に行った話。
東京国立近代美術館で開催されている、棟方志功展に行きました。
私は絵も版画も素人ですし、棟方志功についても「なんかすごい人」くらいの印象しか持ってなくて、要するにミーハーな一般人のひとりとして、観に行きました。
ミーハーな一般人として、なんで観に行きたいと思ったのか。
版画というのが、心の原風景にあるような、そういう郷愁めいたものを感じたというのもあったかもしれません。
画風がアニメ的というか、そういう身近さもありますね。
自信家な線
棟方志功作品を観ていて感じたのが、この人ってめちゃくちゃ自信家だったんじゃなかろうか……です。
線が、強いんですよね。
作品から漂ってくるものが、すごく元気!
「俺の作品を観てみろ!」と言われてる感じがしました。
作品のサイズも規格外で、一度「サイズオーバー」を理由に展示を断られて以来、展示の限界を突いてくるような大きさの作品に挑戦し続けてたみたいなんですよね。
普通の人なら、無難なサイズにまとめようとするはずなのに、逆に限界に挑んでいく。「どうだ!」と胸を張ってるんですよ、作品が。
また、長い巻物みたいな作品の中で、文字ばっかり彫っている部分があったり。絵が、文字のための便せんみたいになっていたり。
いや、まあ、版画ですから、鏡文字に彫るのも技巧なんですけど、絵じゃないんですか? と訊くのもはばかられる強さ。
気持ちの強い方だったんだろうなあ……と、圧倒されました。
芸術は難しい
芸術を理解することは、素人には難しいです。
それを本当に感じたのは、光徳寺の襖絵「華厳松」を観たときですね。
すみません。
うちの子が小さいときにやらかした落書きも、芸術では? と思ってしまいました。
この襖絵では、落ち着かんわ。
裏の牡丹なんかも、主張が強くて……。
素人は「自分ちにあったら……」と考えてしまうので、お寺さんはこの豪快な襖絵にビビらんかったんやろか……とつい心配してしまったんですが。
ビビらずにお勤めをするのも修行だったのかなあ……とか。
現代日本でも、プロパガンダに対して「仕方ない」?
これは、棟方志功本人がどうこうというのではなく、展示の仕方として、ですね。
戦時中に「アーティスト」だった人として、棟方志功もプロパガンダ作品の依頼を受け、それに対応します。
軍隊の慰問の絵、とかですね。
あの当時の日本で、プロパガンダに「No」と言うのが命がけだったこともわかるし、多くの人が生きるために国家権力に従ったというのも、わかります。
それに対してとやかく言うのは、所詮、安全な時代に生まれた人間だからじゃん、というのもわかります。
でも、それとは別の問題として、今の時代だからこそ、「戦時中のプロパガンダは仕方ない」で済ませてしまっていいんだろうか、とも思うんですね。
あの当時は、みんな生きるためにプロパガンダ作品をつくった。
しかし、そうやってみんなが政府の決めたことに賛同していったからこそ、批判を受け付けなくなった政府は、国家を破滅に追い込んだ。
だから、安易にプロパガンダに乗った経験から、我々は学ばなきゃいけない。
美術展で、そこまでの意思を示すことは困難ですけど、「仕方なかった」でさらりと流してしまう怖さは、今だからこそ感じました。
記号的な女性像
棟方志功はあの時代の人だから、もうどうしようもないんですけど、女性を描く線が記号的だったりするんですね。
からだのラインの描き方が、女性という記号。
ああ、棟方志功にとって、女性ってこういうイメージなんだなあ……と思わせてしまうような。
この方の作品は、写実主義とは違うものなので、ご自身の頭の中の絵が、ばんっと出てくるような、そういう作風だと思うんですね。
だから、イエスの使徒を描いてるはずが、僧侶みたいになっていく。
古事記の登場人物絵も、どこが頭かちょっと考えて観るくらい、独創的。
個性としての線を持っている画家であれば、昔はともかくこれからは、自分の個性の中に潜む感覚に対し、敏感にならざるを得ないだろうなと、そこを感じました。
おわりに
こうやって感想を書いてみると、結構批判的じゃない? という気がしないでもないんですけど。
しかし、ものすごい迫力と迫ってくるパワー(日本語崩壊しとるぞ?)が圧倒的で、力をもらった感じです。
あんなに棟方志功が、独創的にあれこれやってるんだったら、もっとみんな羽目をはずして、がんがん前に出ていったっていいんじゃない?
いろんなお約束でがんじがらめになってる昨今ですが、人を傷つけない方向での越境の先に、新しい何かがあると思っています。
以上、棟方志功展に行った話でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
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