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[本のおはなし vol.4] 春の絵本

桜の蕾も膨らみはじめた今日この頃、「本のおはなしvol.4」では、
春というテーマで思い浮かんだ
『ピッキーとポッキー』嵐山光三郎 文 安西水丸 絵
『春』 五味太郎 作・絵
この2冊についてお話ししました。


ここからは今回の選書を担当した扇谷一穂のまとめです。        

『春』 五味太郎 作・絵

この絵本に出会ったのは、つい最近。都内の保育園で子ども達と過ごしている時間のために「春」をテーマにした絵本を探していたのがきっかけです。

見開きの左ページはいつも四角い窓。(最後の見開きページのみアングルが少し変わります。)ねこだったり、ことりだったり飛行機だったり。窓の外を通るものによって景色が変化すること、そして右ページはそれを表すことばという要素のみで構成されたシンプルな絵本です。          

「本のおはなしvol.4」の中で、ふたりで話したこの本のポイントは   

「春というタイトルだけれど、桜とかお花畑!のような春爛漫の様子はなく、色彩はどちらかというと冬っぽい。」「木に描かれている蕾もまだ固い感じ。ちょうど2月から3月にかけての三寒四温の頃、だんだん春になっていく時期の様子かも。」「最後のページで椅子に手袋が置かれているから、家の中から外の景色を見ていた子は、春の様子に誘われて外に遊びに行ったんだね。」「五味太郎さんの絵本には他にも四角い窓で切り取られたアングルの絵本があったはず。」「見開きの右側の文字の書いているページがいつも薄い小豆色に白い格子のチェック柄なのは、もしかしてカーテンのイメージなのかな。カーテンがいつも変わらずあることによって、窓の外の景色の変化が引き立っているのかも。」

完全に春になってしまった、春爛漫の景色ではなく、少しずつ訪れる春の足音、微かな春の兆しのような気配が感じられる静かな絵本。
読んでいくうちに、こころの中にも静かに春がやってくる様な。
そんな春の訪れを進行形で感じられる絵本です。

そして、春をテーマに選んだもう一冊の絵本は、
『ピッキーとポッキー』嵐山光三郎 文 安西水丸 絵 

この絵本を知ったのは、幼稚園に通っていたくらいの小さい頃。
月に一度、幼稚園に届く福音館のペーパーバック絵本として出会いました。大人になって、あらためてこの本を手に取って作者にびっくり!
特に絵は、大人になって見た事のある安西水丸さんのタッチとはちょっと違うイメージ。なんでも、この絵本は作者のお二人の子どもに向けて作られた本とのこと。身近な人のために作った本が、たくさんのこども達へ浸透していったことが、出版から40年の間に70万部発行のロングセラーであることからも分かります。

小さい時に好きだった絵本についてことばにするのは、なかなか難しいですね。「なんだかわからないけど、このページが好きだったな。」という、説明出来ないふわっとした記憶の断片がいくつも散らばっている感じ。でも、この機会にことばにしてみましたよ。              

わたしたちがこの絵本の好きなポイントとしておはなししたことは、 

「見返し部分に地図が載ってる!」「やっぱりこのお弁当。すみれのサンドイッチや、きのみのジュース、なのはなのサラダが入っている器やフォークが木で出来ていたり、おままごとで作った様なこの感じ。懐かしい!」「お友達のもぐらのふうちゃんのおうちの秘密基地感」「れんげ畑や菜の花畑の様子が綺麗」「もぐらのふうちゃんのおばあちゃんのおうち(地下トンネル)を抜けて外に出たら桜の満開の木の下でみんなが待っていた。そこでお弁当を食べるうれしさ!」「すかんぽのはっぱにたまった朝露で歯磨きしてみたい」

何か大きな事件や出来事は起こらないけれど、春にお花見をしてみんなで集まってわいわいお弁当を食べる。それって、やっぱりとってもうれしいことだなあとあらためて感じました。

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今日も最後は選曲・歌い手 扇谷一穂の「今日の子守唄」

春を歌った歌は多くありますが、私の好きな春の歌は、なんと作者がみんな同じだったことに今回気が付いてびっくり!

「春が来た」「春の小川」「朧月夜」この3曲は、高野辰之 作詞 岡野真一 作曲というペアによって生み出された曲だったのです。「ふるさと」も同じペアによる曲。作曲者の岡野貞一はクリスチャンで、教会のオルガニストや聖歌隊の指導もしていたとのこと。どこか賛美歌の雰囲気も感じられる旋律が、岡野真一の紡ぐ美しい日本語と出会うことで生まれた世界。どの曲もなぜか懐かしい気持ちになります。

『朧月夜』  作詞/高野辰之 作曲/岡野貞

菜の花畠(ばたけ)に 入り日薄れ
見わたす山の端(は) 霞(かすみ)ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月(ゆうづき)かかりて にほひ淡(あわ)

里わの火影(ほかげ)も、 森の色も
田中の小路(こみち)を たどる人も
蛙(かわず)のなくねも、 かねの音も
さながら霞(かす)める 朧(おぼろ)月夜

次回は松尾由佳選書で『ここは』
木曜お昼にどうぞお楽しみください。


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