在野研究一歩前(7)「はじめての短期労働(私的経験編:労働現場に行くまで)」
前回は、「在野研究一歩前(6)はじめての短期労働(登録編)」ということで、短期労働を始めるためには、まず「人材派遣サービス企業」への登録を済まさなければならない旨を述べた。今回は、実際の私の「はじめての短期労働」の経験談を、できるだけ情景を思い出しながら、記していきたいと思う。
【参考:前回示した図】
あなた(求職者⇨仕事に就きたい)⇒⇒⇒⇒人材派遣サービス企業⇐⇐⇐⇐派遣先企業(⇨仕事を頼みたい)
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私が「はじめての短期労働」に臨んだのは、3月の中旬。これから京都の街から少しずつ寒さが退き始める時節であった。
数日前に、「人材派遣サービス企業」への登録を済ましていた私は、当日になるまで「短期労働ってきついのかなー」と不安な日々を過ごす。
労働内容は「搬入」、運ぶ物は「ベッド等」。大雑把な内容しか掴めていない状況では、不安になるのも当然であった。
「八時半に地下鉄~駅××口前集合」となっていた中、八時手前には到着していた私は、「本当にここであってるのかな」と一人不安がり、きょろきょろと周りを見る。とくに待っている人の姿はなく、地下鉄に用がある人はスーッと入口に吸い込まれていく。
八時を少し過ぎたとき、「あのー○○の方ですか?」と後ろから声を掛けられ、振り向く。
「○○」は私の名前ではなかった。ただ、話し掛けてきたということは何かしら今回の「搬入」に関わる人なのだろうと思い、混乱しておどおどしてしまった。すると相手は、少し考える表情をした後、「○○から派遣された方ですか?」と問い直してきた。
「ああ、○○って、自分が登録しに足を運んだ会社の名前だ」
自分はようやく質問の中身を理解して、「はい、そうです!」と少し大き目な返事をした。
「まだ、八時になったばかりだから。近くのコンビニにでも飯を買いに行ってもいいですよ」
私はこの言葉を耳にしながら、ようやく話し相手の容貌・体型をきちんと観察(?)することができた。
髪はロングであろうが、後ろの方で纏められている。目は細目で鋭く、鼻は高い。年齢は40代前後。服装は当時の私のイメージだと「大工さん」そのものであった。自分は事前の連絡の服装指定のところに、「動きやすい服装」とあったため、
黒のチノパン、Tシャツ(+羽織るもの)、スニーカー
を着てきていたが、「やばい、この服じゃいけなかったかな……」と焦りを覚えた。
「もし駄目だったら、注意されるだろう……」
私は怒られる覚悟で、眼の前にいるスタッフの人を見つめていたが、彼はすっと背中を向けて、歩いて二分ぐらいで行けるコンビニへと歩み始めた。
「これでよかったのかな」
私は事前に「昼ごはん」を購入していたということもあり、ずっと地下鉄の出入り口の前で待ち続けた。数分間は誰一人として、同じ「搬入」に携わるメンバーが現われることは無かったが、8時15分を過ぎたあたりから、ぽつぽつ人が集まるようになってくる。
「これって、「搬入」のやつっすよね?」
自分より二、三歳若そうに見える男性から質問され、「そうだと思いますよ」と返事をする。「了解っす」と言うと男性は、スマートフォンで動画を見始めた。
そうこうしている内に、地下鉄の出入り口の前には、総計8人の人が集まっていた。先程、私に「あのー○○の方ですか?」と質問してきたスタッフの人も戻ってきて、一人ひとりに名前を確認して周りながら、出席をとっていった。
私はその様子をちらちらと見ていたのだが、そのときスタッフの方が言う言葉に気になる箇所があった。それは、
「○○の方ですか?……ああ、△△っすね、了解了解」
「この搬入労働に人を派遣しているのは、自分の会社だけではないのか……」――これが気付いた点であった。たしかに8人もいれば、派遣する企業が複数に分かれていても、全然不思議ではない。
そんなことを考え、一人頷いていると、スタッフの人が、8人の労働者全体に声が届くような場所に立って、少し大き目な声を出した。
「今から、現場に行くので、付いてきてください」
スタッフの男性はこう言うと、さっさと現場に向かって歩き出した。8人の内の何人か(私を含めて)は、「えっなんか雑やな」という表情を見せつつ、スタッフの後を歩き出した。
【今回のまとめ】
①余裕をもって集合場所に着いておくことは勿論大事だが、結構ぎりぎりになって人が集まりだす傾向がある。
②大人数での労働であった場合、派遣企業が複数にわたることがある。「○○(派遣企業名)の方ですか?」という質問をされることが多いので、登録しに行った「人材派遣サービス企業」の名前は一応覚えておこう。
③「動きやすい服装」とあり、他に個別の指定がなければ、「黒のチノパン、Tシャツ(+羽織るもの)、スニーカー」でOK。
はじめての短期労働は自分も緊張した。でも、なんだかんだで大丈夫だった。だからあなたも大丈夫。一緒に頑張っていきましょう!
(次稿へ続く)