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在野研究一歩前(5)「思い立ったが吉日! 短期労働をやろう」

 大学院への進学を意識し始めたのは、大学三回生の夏頃であったと思う。
 それまでの私は、大学院への進学など微塵も考えたことはなく、講義とバイトに忙殺される日々を送っていた。
「大学院に進学する気はあるの?」
 自身の通っている大学の先生や、他大学に所属するお世話になっている先生方に、急にこの言葉を掛けられる機会が増えて、私は次第に「大学院進学」を意識するようになった。
 ここで私には、二つのネックがあった。
 一つは、note中の記事で私がしつこく書いている「お金(学費)」の問題である。学部の学費&生活費にかかる費用を捻出するのに必死だった私にとって、未来への投資となる「大学院の学費」について考えることは、単純に至難の業であった。告白すれば、「先生たちも簡単に言ってくれるな……」と小声で不満を漏らしていた自分もいる。
 二つ目は、知識&技能レベルの問題。自分自身に、大学院進学に相応しい能力・資質が備わっているかということに関して、あまり自信がなかった。優れた学術論文・学術書に触れるたびに、「これは俺には出来ないな……」と落ち込んでいく。読むこと自体はとても刺激的で楽しいものであったが、これを自分が「産み出す側」になったとしたらどうなんだろう。そんな疑問は、今でも絶えることなく頭の中で漂っている。

 大学三回生の時点で、自分にできることはなんだろうか。
 そう考えた私は、「とりあえず使えるお金を増やそう」ということで、新しいバイトに手を出すことに決めた。
 その時の私は、かつて働いていたコンビニのバイトを辞めて、某公共機関での朝勤務と家庭教師、古本屋のお手伝いに従事していた。コンビニのバイトから去った理由は幾つもあったが、学年が上がるにつれて講義が午後に行われることが多くなり、うまいこと頻繁にバイトに取り組むことができなくなったということが一番にあげられる(1)。一方「某公共機関での朝勤務」は、午前6時から9時の間で仕事があるため、一日のスケジュールの調整がしやすいということで、働き始めた。(古本屋のお手伝いは、ひょんなきっかけからし始めることになるのだが、それは別稿で詳述したいと思います。)

 以上の労働群に従事することで、かろうじて学費と生活費を賄っていた私には、そのままでは貯蓄する余裕がない。ということは「大学院進学のための資金」など到底集めることはできないわけだから、やはり「新しい労働」に手を出す必要がある。
 ここで私の脳裏に浮かんだのが、所謂「短期労働」と呼ばれる仕事であった。
 なぜ私の頭に「短期労働」という言葉が浮かんだのか。
 そのきっかけを、はっきりとは思い出せない。
 微かに覚えているのは、ひたすた焦っている自分の姿。「このままじゃまずい、このままじゃまずい」と、視界が狭まっていた自分。
 ただ理性的に選択して、「短期労働」を選んだ自分もいた。当時私が取り組んでいたバイトはすべて「シフト制」であったため、「一週間に何回、一カ月に何回」と、労働する回数(と曜日)が決っていた。そのため、自由に「来週の○曜日、時間があるから仕事を入れよう」といった感じで、急に仕事量を増やすといったことはできなかった。その点で「短期労働」には、とくにシフトが決まっているわけではないため、自由に好きなタイミングで(勿論、「短期労働」自体の募集がない日もあるので、いつでも自由にということではないのだが)仕事に取り組むことができるメリットがあった。

「よし! 思い立ったが吉日だ! 短期労働やるぞ!」

 最終的には「短期労働」をすることに前向きとなった私は、いざその実行に向けて歩みを進めていくことになる。

(続きは次稿で。)


(追記【感謝とお願い】:noteで記事を書き始めてから、数人の方から「暖かいお言葉」と「サポート」による支援を頂き、大変ありがたく思っています。頂いた支援については感謝のしるしとして、具体的に何に使わせて頂いたか(おそらくは食事代や書籍代など)を報告したいと思っております。
 ご支援は、自分の拙い学究生活の励みとなります。今後とも、ご支援のほどよろしくお願いいたします。)


(註)
(1)コンビニで働いていて、一番強く感じたことは、同僚の外国人率の高さであった。今でも、コンビニ時代の同僚の幾人かとは繫がりがあるが、彼らが置かれている立場は個々人でバラバラで、一言で説明することのできない複雑性を帯びていた。そのような実情を知ることのできる書籍として、芹澤健介『コンビニ外国人』(新潮社、2018)がある。内容紹介を以下に引用しておく。読んで興味を持たれた方は、ぜひ読んで頂きたいです。
なんでこんな増えたの? ふだん何してるの?
全国の大手コンビニで働く外国人店員はすでに4万人超。
実に20人に1人の割合だ。
ある者は東大に通いながら、ある者は8人で共同生活をしながら――
彼らはなぜ来日し、何を夢見るのか? 「移民不可」にもかかわらず、
日本が世界第5位の「外国人労働者流入大国」となったカラクリとは?
丹念な取材で知られざる隣人たちと日本の切ない現実と向き合った入魂のルポルタージュ。



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