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【グランドプリンスホテル高輪 貴賓館】晩餐会で賓客をもてなしたプリンス・プリンセスの旧邸宅|甲斐みのりの新幹線で建築さんぽ(品川駅)

日本各地の建築に詳しい文筆家の甲斐みのりさんと一緒に、開業60周年を迎えた東海道新幹線に乗ってすてきな建築を巡る連載「新幹線で建築さんぽ」。新幹線駅の近くで購入できる、甲斐さんおすすめの手土産もご紹介!

 品川駅の西口に位置する高輪は、東海道の品川宿に近く江戸の玄関口として栄えた。明治になると大名屋敷跡地に皇族や政財界の要人が邸宅を構え、東口のオフィス街とは異なる閑静な佇まいが残る。

 文明開化で建築の洋風化が進むなか、高輪の地に明治天皇御用邸の計画が立てられた。宮廷建築家・片山東熊とうくまが指揮を執り設計にあたったのが宮内省内匠ないしょう寮。木子きご幸三郎や渡辺譲ら一流の建築家も技師として名を連ねた。建設中に明治天皇の皇女・常宮つねのみや昌子内親王と竹田宮たけだのみや恒久王の婚姻により下賜され、1911(明治44)年に竹田宮邸として竣工を迎えている。

 煉瓦造2階建ての洋館は、フランスルネサンス様式が基調。玄関上部の屋根に配したドーマー窓や、車寄せに施された古代ローマ式の柱、左右に張り出しを持つ裏手のバルコニーが特徴的だ。

 戦後の皇籍離脱で宮家の手を離れたあと開業したのが「品川プリンスホテル」。1972(昭和47)年、村野藤吾による改修を機に宴会場「グランドプリンスホテル高輪 貴賓館」に生まれ変わった。

 邸宅時代は、1階が客人をもてなす公の場で、2階が居住空間。花綱はなづな装飾が彩る中央階段の、かつて高輪が東京湾を望む景勝地として知られたことを物語る、海の景色を描いたステンドグラス(写真1)。宮大工が腕を振るった天井の金彩や漆喰のレリーフ(写真2)。部屋ごとに異なるシャンデリア。目に映る全てが華麗で格調高い。現在は大小全12部屋を貸し出すこの貴賓館、あまり広く知られていないが、施設の利用がないときに限って、無料で見学できる。片山が同時期に手がけた旧東宮御所(現・迎賓館赤坂離宮)と木調の内装や床のモザイクタイルなどに共通したデザインが見られるので、双方を訪れ見比べるのも一興だろう。

写真1
写真2

文=甲斐みのり
写真=鍵岡龍門

グランドプリンスホテル新高輪
☎03-3447-1111(ホテル代表)
[所]東京都港区高輪3-13-1 
[料]見学のみの場合は無料
[交]JR品川駅高輪口より徒歩約3分
*見学希望の際は事前にホテルへ要問い合わせ
[HP]https://www.princehotels.co.jp/shintakanawa/

ブーケ・ドゥ・ビスキュイ(M缶 4,860円)

芳醇なバターの風味と、煎茶やレモンなど多彩な素材で作るホテルオリジナルの焼菓子を、花束のように詰めた華やかなクッキー缶。

Lounge Momiji
(グランドプリンスホテル新高輪内)
[時]10時~21時
https://www.princehotels.co.jp/shintakanawa/restaurant/momiji/

出典:ひととき2025年1月号

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