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京都――タイルと建築100年の物語【紀行2:さらさ西陣・築地・1928ビル】
レトロなビルのファサードや銭湯の浴場を飾る「タイル」。どこかノスタルジックな趣のあるこの言葉が使われはじめたのは、ちょうど100年前のことでした。近代建築の宝庫である京都で、建築史家の倉方俊輔さんと美術家の中村裕太さんが街歩き。この日初めて会ったお二人は、早速意気投合してタイルについて想像を巡らし、まるで探偵のよう…。まずは、和製マジョリカタイル貼りの銭湯をリノベーションした「さらさ西陣」に向かいます。(ひととき2022年4月号特集マガジン「京都――タイルと建築、100年の物語」)文=橋本裕子 写真=荒井孝治
和製マジョリカタイル貼りの
銭湯をリノベーション「さらさ西陣」
「朝風呂気分ですね」(中村さん)
木の扉を開けてお邪魔したのは、北区紫野にある「さらさ西陣」。木造2階建て、築80年の銭湯・旧藤森温泉をリノベーションし、2000(平成12)年にオープンしたカフェである。建物は国の登録有形文化財になっている。天井の湯気抜きから差し込む日差しの下で、中村さんが大きく伸びをした。
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時代を越えて愛される空間
曲線を描いた唐破風を頂いた外観とは一変。格天井の元脱衣場の向こうに現れたのは、和製マジョリカタイル*貼りの空間だった。かつて浴場だった場所である。
和製マジョリカタイル* 大正から昭和時代初期に全盛期を迎えた大量生産の多鮮色のタイル。その名はイギリスのヴィクトリア様式で用いられたカラフルな装飾タイルが「マジョリカタイル」と呼ばれていたことに由来する。
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「別天地に来たような色彩の洪水! 銭湯時代は、湯けむりの向こうに鮮やかなマジョリカタイルがぼんやり見えたんでしょうね」と倉方さんは、さっそく“推理”を始めている。
「西陣の旦那衆もきっと汗を流しに来たんでしょう。いったい何種類のタイルが使われているんだろう。1、2、3……」と数え始めた中村さんが、またもや「あっ!」と何かを発見した。
「装飾ばかりに目がいっていましたが、すごく機能的ですよ! ここには鏡が据え付けられていたのだと思います、釘痕がありますから。で、このあたりは凹凸のある装飾的なタイルではなく、無地の平たいタイルが貼られているでしょ。掃除のしやすさなど、衛生面もきちんと考えられているんですね」と中村探偵。
一方、“バディ”の倉方探偵はというと、「全部で10種類くらいのタイルが使われていますね。ここには4枚組で花の模様が描かれています。イスラムっぽい雰囲気もあるけれど、イスラム圏では、花のモチーフは通常使われない。鮮やかな緑やピンクといったインテリアでは多用されない色彩を展開しているのも斬新です。約束事に縛られない自由なところも京都らしいな」
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こちらも調査に余念がない。上部のタチアオイのレリーフタイルは、花弁の部分が1センチ近くも盛り上げられ、ふっくら艶やかに咲き誇っている。こうしたボリュームのあるタイルは、大正から昭和時代初期に多く作られたそうだ。
近年では、映える空間として、若い人たちにも人気のさらさ西陣。建物の用途は変わったが、タイルの魅力は時代を軽々と飛び越える。
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さらさ西陣
京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
☎︎ 075-432-5075
https://www.instagram.com/sarasa_nishijin/?hl=ja
タイルも壁もぜんぶDIY!
京都を代表する老舗喫茶「築地」
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レトロなビルのファサードや銭湯の浴場を飾る「タイル」。どこかノスタルジックな趣のあるこの言葉が使われはじめたのは、ちょうど100年前のこと…
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