スマートにのびる4本の脚で、さっそうと立つテレビ。テレビはいつも、みんなの注目を浴びていた。楽しいことはそこからやってきた。まるで茶の間の劇場のようだった。
昭和28年(1953)の本放送時におけるテレビのデザインはというと、単純な箱型であった。当時はまだテレビをデザインする、というより機能優先の時代だったのだ。
しかし一般的なレトロなテレビというと、私ほどの年齢だと、木製のボディーに、にょっきりのびた4本脚の形を思い浮かべる人も多いと思う。
この4本脚テレビは昭和30年代に入ってから登場している。本体底にネジで留めるタイプや、テレビをそこに乗せるだけのテーブル式もあり、回転式もあった。
昭和40年代になって、テレビ本体が金属製になってからも、しばらくは脚が付いていた。
その後、家具調のデザインがブームとなったが、まだ短い脚がついていた。
我が家は、初代と2代目は4本脚付であったが、昭和44年ころ購入した3代目のテレビにはすでに脚はなく、段のついた小物置きになっていた。
それ以降、テレビは小型軽量化になり、持ち運びやすくなったこともあり、4本脚テレビは過去のものとなった。
文=町田 忍
▼本書のお求めはこちら
※新聞広告は、特記がないものはすべて朝日新聞に掲載されたものです