SAKETIMES編集長が語る 奈良のうまし酒
日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」。全国の酒を知り尽くした小池潤編集長に、奈良酒について聞いてみました。(ひととき2021年10月号「古くて新しい奈良酒――酒の神がすまう郷」より一部抜粋してお届けします)
日本各地の酒蔵を訪問してきましたが、中でも奈良は、清酒発祥の地と言われる、日本酒にとって特別な土地です。近年は、伝統を重んじながらも新しい挑戦をする酒蔵が増えてきました。室町時代に確立された「菩提酛」の再興など、伝統的な酒造りを重視する一方で、歴史を再解釈して現代に合った日本酒を模索している。ゆるぎない歴史と豊かな自然、そして温故知新の姿勢が、奈良の日本酒に対する印象です。
奈良には28の酒蔵がありますが、たとえば「新潟は淡麗辛口」「灘の男酒・伏見の女酒」のような、エリア単位で括れる酒質のイメージは強くありません。それぞれの蔵が個性豊かな酒造りをしています。
御所市の油長酒造は、自由な発想で酒造りをしている、クラフトブルワリーのような酒蔵。「風の森」を軸に、全国的に人気があります。今西酒造は、大神神社の鎮座する桜井市三輪の地で、木桶と菩提酛を取り入れた新しいブランド「みむろ杉 木桶菩提酛」を立ち上げました。吉野郡吉野町にある美吉野醸造は、高温多湿の独特の気候から生まれる、酸味の強い日本酒が特徴。酒蔵ごとの個性を味わうことは、風土を味わうこと。日本酒の醍醐味です。
発酵の産物である日本酒は、同じ発酵食品との相性が抜群。柿の葉寿司や奈良漬など、地元の発酵食品はもちろん、チーズなどにもぴったりと寄り添ってくれます。
奈良に行った際に飲んでほしい日本酒はたくさんありますが、私は「篠峯」(千代酒造・御所市)があるとうれしくなります。軽すぎず重すぎずのバランスの良い日本酒で、きれいな酸味があるため、食事やおつまみがついつい進んでしまいます。
ほかにもおすすめの奈良の日本酒を厳選してみました。奈良には、たくさんの魅力的な日本酒があります。それぞれの個性を味わってみてください。
風の森 ALPHA TYPE1
油長酒造
原料米:奈良県産秋津穂
720ml 1,265円
一般的な日本酒よりアルコール度数が低く、軽快な飲み口の一本。フレッシュな果物のような甘みも印象的
みむろ杉 木桶菩提酛
今西酒造
原料米:奈良県産山田錦
720ml 5,500円
伝統的な「木桶」と「菩提酛」を使った酒で、木桶の芳香や菩提酛の力強い旨味などが調和し、複雑かつバランスのとれた味わい
春鹿 超辛口
今西清兵衛商店
原料米:五百万石
720ml 1,661円
「超辛口」という名にふさわしい、すっきりとした味わい。日本酒らしい旨味を感じさせながらも、後口は非常にドライでキレが良い
風の森 露葉風 807
油長酒造
原料米:奈良県産露葉風
720ml 1,320円
酒造好適米「露葉風」を使用。ふくよかな甘みを持つが、「風の森」らしい微炭酸ですっきりとした飲み口
南遷 プレミアム オーガニック
美吉野醸造
原料米:非公開(奈良県産有機栽培米)
500ml 1,496円
有機栽培米の個性を引き出すため、あえてあまり精米せずに使用。濃醇な甘みと酸味、野性味ある旨味が特徴。スパイス料理と好相性
KURAMOTO
倉本酒造
原料米:非公開
720ml 2,750円
ソーヴィニヨン・ブランを思わせる、マスカットのようなフレッシュで甘やかな香り。甘みに寄り添う酸味がほど良く、洗練の味わい
あらごしもも
梅乃宿酒造
国産白桃使用
720ml 1,540円
国産の白桃を使用した日本酒ベースのリキュール。果肉の食感が楽しめる濃厚な味で、ロックでもソーダ割でも楽しめる
櫛羅 純米吟醸 中取り 無濾過生原酒
千代酒造
原料米:櫛羅産山田錦
720ml 2,200円
地元・御所市櫛羅産の山田錦を使用。フレッシュで飲みごたえがあり、山田錦らしいバランスの良さときれいな旨味が感じられる
睡龍 生酛のどぶ
久保本家酒造
原料米:阿波山田錦、日本晴
720ml 1,760円
米粒の食感も感じられる、とろりとした飲み口の濁り酒。旨味と甘みのバランスが良い。ビールと1:1で割る「どぶビール」もおすすめ
小池 潤(こいけ・じゅん)
日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」編集長。2016年、日本酒のテイスティング資格「酒匠」を取得し、翌年「日本酒学講師」に当時最年少の24歳3カ月で合格。国内の日本酒コンテストで審査員を務めるなど、日本酒の伝道師として活躍中。
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談=小池 潤
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