【海地獄】地球の息吹を感じる コバルトブルーの熱泉(大分県別府市)
「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2020年1月号「名勝アルバム」より)
南国の海かと見紛うほどのコバルトブルー。だが、濛々(もうもう)と立ち上る湯気が物語るように、海は海でもここは海地獄。摂氏約98度の熱湯の噴出口だ。約1200年前の鶴見岳噴火によってできた熱泉のひとつで、湯に溶解した硫酸鉄が青さの理由である。
今でこそ一帯は別府を代表する観光地だが、かつては噴気や熱泥が噴き出す厄介な土地だった。しかし大正期に別府が陸軍演習場に指定されると道路が整備され、近隣の鉄輪(かんなわ)温泉と共に発展。海地獄をはじめ個性豊かな温泉噴出口を周遊する〝地獄めぐり〟を楽しもうと、多くの人々で賑わうようになった。
「鉄輪地区は標高が高いので冬は雪が積もることも。雪の中の海地獄も絶景ですよ」と、別府地獄組合で聞いた。また、気温の低い冬の季節は湯気の量も一段と多く、地球の神秘を全身で感じられるが、別府に来たからにはやはりお湯に浸かりたい。今宵は鉄輪温泉で羽を伸ばし、極楽気分を味わうことにしよう。
写真=荒井孝治
◉名勝指定 2009年(平成21年)7月23日
大分県別府市鉄輪559-1
【問】別府地獄組合
☎0977-66-1577
[営]8時~17時 [料金]2,000円ほか(共通観覧券)
http://www.umijigoku.co.jp/
名勝に指定されたのは、海地獄、血の池地獄、龍巻〈たつまき〉地獄、白池地獄の4つで温泉として全国初。海地獄の源泉を利用して作る濃厚な味の「地獄蒸し焼きプリン」は人気の名物で、海地獄施設内には足湯を併設している。
出典:ひととき2020年1月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。
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