小さな嘘

美容院。世の中の苦手な場所のひとつ。

ここ1年ほど通っている美容院があるのだが、平日の昼間にも関わらず何故かわたしが行きたい日だけピンポイントに予約が埋まっていた。ので、渋々初めて行く美容院を予約する。

美容院に行く前は、インスタを漁り、髪色、髪型の参考資料を収集する。初めて行く美容院なら尚更、言葉で伝えるよりも「これにしてください」と見せるだけで済むように、入念に準備する。コミュニケーション能力に少々難があるので、この過程は欠かせない。

店に入り、名前と、予約時間を伝え、席に通される「今日はどんな感じにしますか?」美容院のお決まりの質問に、なんとか答える。うむ、まあまあ上手く伝えられた。美容師さんから、赤みがどうとか、透明感がなんちゃらとか、レイヤーがどうとか、そんなことまでわたしは考えてませんが?みたいな細かい質問にも「じゃあそれで!」と答える。基本は美容師さんの言いなりだ。わたしにあまり難しいことを聞かないでください。

最近は美容院で、雑誌代わりにとタブレットを手渡されることが多々ある。こういう時、何を読むのが正解なんだろう?と、正解なんてないし、単に好きなものを読めばいいことはわかっているが、毎回考えてしまう。ファッション誌を選ぶなら、今日の服装でこの雑誌はなんか違う?と思うし、まったく訪れる予定のない土地の旅行雑誌とか読んでみようかなと思うが、「へ〜!旅行行かれるんですか?」とか聞かれてしまったら、きっとあたふたしてしまう。今日はBRUTUSの特集が目に止まったので読みふけっていた。ちゃんと読みたくなって、終わってから本屋に買いに走った。

「このあとどうされるんですか?」仕上げのオイルをつけながら聞かれる。「特に何もないですね〜」と返したが、ごめんなさい、全然夜まで予定あります。なんでこんな小さな嘘をついてしまうんだろうか。

最後の最後でどうせ嘘をつくのなら、別に好きな雑誌を読んで、話しかけられても適当に話を合わせればよかったんだな、と帰りのエレベーターで思う。次はそうしよう。小さな嘘がゆるされる場所、だと思うと、美容院、そんなに苦手じゃないかもしれないな。

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