長い春

9月も半ばに差し掛かるというのに、空はこれでもかと青く眩しい。海に反射する光はきらきらとしていて、思わずそちらを見てしまう。

おおよそ週に一度、ひとりで車を運転してあちこちを回る。だいたい特に予定はなく、あるとしても図書館に行くくらいのものだ。あとは好きな曲を聴きながら気の済むまで海沿いを走る。否が応でも、二週に一度は外に出ないといけない図書館のシステムに随分と助けられている。そうでなければ、全く外に出ないで、立派な引きこもりになっていただろうと思う。

外に出るのは億劫だが、せっかく出てきたならと、あちこち見て回ってしまう。だいたいいつも本屋に行く。入口にでかでかと設けられた夏の文庫本フェアの棚が閑散とし、移動式のラックには10月始まりの手帳が、売り場に陳列されるのを待ちわびている。毎年そうだが、手帳売り場を見かけるようになると、どこか急き立てられるような気持ちになる。

外に出ると太陽の眩しさと空の青さに目を細め、夏が終わる気配はまだなく、なのに暦は淡々と進んでいて、わたしはいったいいつを生きているのか分からなくなる。

3月、大学を休学することを決めた。大学の友人、知り合いにはほとんどなにも伝えず、逃げるように4月には実家に戻った。始まるはずだった新学期はわたしの手元からなくなり、長い春休みが今も続いている。その後もほとんど誰とも連絡を取らず、友人たちの生活を見ているのも辛くインスタのアカウントは消してしまった。自分で、取り残されることを選んだ。

それでも空は青を濃く、夏を告げ、信じ難いがもう少しで秋が来る。皆が前に進んでいる。まだわたしは長い長い春にいる。

休学中の目標としている試験が、もう2ヶ月もすればすべて終わる。そのあとのことは、なにも決まっていない。決めていない。次の春までに、わたしは何ができるのだろう。

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