
近侍、修行にいく
明石「あー、そうそう。今ちょっとええですか?」
元旦早々に言われた言葉が、修行に送り出した今も衝撃として残っている。
(月明かりが少しだけ入ってくる暗い部屋。私(審神者)は自室でぼんやりと机に肘をつきながら、壁の一点を見つめている。)
審神者「まさかな……、お正月からとは。弟達にお年玉配りましょって話をして、一緒に回ってすぐやん…。」
午前中にお年玉を配り終え、明石が珍しくこれからどうするのか?と聞いてきた。
私は他の男士とも挨拶をしようかと思っていることを伝えると、
明石「じゃあ、今日は一旦近侍を実休はんに交代させてもろてもええですか?」
と言って、よくわからないまま連れてこられたのであろう実休がキョトンとした表情でこちらを見ながら
「あぁ、僕が近侍の役目をするんだね。わかった」
と飲み込みが早い返事をする。
私は二言目に明石が「正月やし、ゆっくりしたいですわ〜…他の刀剣男士のところ全部に挨拶って大変ですやん…寒いし」とでも言うと思っていた。
しかし、二言目は「代わりの近侍がおる今なら、修行に行ってもええですやろか?」だった。
(部屋の一点を見つめたまま、明石を送り出す直前のことを考えていると廊下から気配がして、襖の方を向く)
蛍丸「まだ起きてる?」
(蛍丸が小さな灯りを手に持って部屋に入ってくる)
審神者「蛍丸か。どうしたん、こんな時間に」
蛍丸:「なんだか眠れずに起きてるんじゃないかと思って来ちゃった」
(蛍丸は私の隣にちょこんと座る)
蛍丸:「もしかして、国行のこと考えてた?」
審神者:「……まぁ…ね。」
(蛍丸は小さく笑う)
蛍丸:「国行っていつもそういうところあるよね。……きっと頑張ってるよ。あの人、だらけてるように見えて、本当はすごく真面目だから。珍しく何か気合いでも入ったのかな。
……俺たちのことも、主さんのことも、ずっと大事に思ってるから。」
審神者:「そうなのかなぁ…まだまだ明石は読まれへんわ…。」
蛍丸:「(少し笑って)、国行信じてもらえてないぞー…なんて。とにかく、ちゃんと休んで。帰ってきたら、元気な主さんが待ってる方が嬉しいと思うし。」
審神者:「ありがとう、蛍丸。少し安心したわ。」
蛍丸:「えへへ、どういたしまして。 じゃあ、国俊も爆睡してるし、良い子は眠る時間だろうから、俺も寝まーす」
(蛍丸は挨拶をして、部屋から出ていく)
審神者:「……ありがとう、蛍丸。ってかそういうところが良い意味でずるいんよなぁ〜……流石やわ来派」
(私は温かい存在に安心し、ゆっくりと目を閉じる)