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258 ブーメラン
昭和にブームがあった
いまでは、「ブーメラン」といえば、自分の言った言葉が自分の身に降りかかる、つまり「みんな注意しろよ」と言った本人が注意し損なって事故るみたいなことで知られている。
ブーメラン効果とは、心理学では、説得する側が説得すればするほど、説得される側は逆へ向かってしまうこと。親が「勉強しろ」と言えば言うほど子どもがサボる、みたいなことだ。
だから、ブーメランといっても、そこから想起されるイメージは人によって違う。
ブーメランと言えば、昭和にブームがあって、私が子どもの頃にはみんなでバルサを削って「自作」したものである。公園に行けば、誰かが必ずブーメランを飛ばしていた。市販されている玩具のブーメランもあり、正直、大変に危険だった。うかつに公園に足を踏み入れると、ブーメランが飛んでくるのである。
私の憶測だけど、このブーメランの危険性を排除しようと思ってフリスビーが流行したんじゃないか。違っているかな。
ところが、どうしてブーメランのブームが起きたのか、私はさっぱり覚えていないのである。ネットで調べると、「怪獣王子説」があった。
なるほど、と思うものの、私にはこのサイトに登場するキャラクターもマンガ誌も、まったくピンと来ない。きれいさっぱり忘れている。『少年キング』を読んだ覚えがそもそもない。『ワイルド7』が好きだったので、読んでいたのかもしれないが。
あるいは友人宅で読んでいたので、記憶が曖昧なのかもしれない。私の周辺では毎週誰かがどのマンガ誌を買うかだいたい決まっていて、それをみんなでシェアしていた。貧乏というよりは、子どもに小遣いをあまり渡さない家庭が多かったからだろう。
それに、当時は、誰も最新号を必死に読むわけではなく、古い号でも構わなかった。連載マンガも途中から読んだり、数号飛ばして読んでも、どうということはなかった。
兄弟の多い家ほど、マンガも豊富だった。
ブーメランを飛ばす
日が暮れるまで自作のブーメランを飛ばして遊んでいた。
友人たちと、「なかなか戻って来ないね」と話ながら。
そもそも自作のブーメランには戻ってくるほどの要素がなかった。見ようみまねで削って作っていたのだから。恐らく、本物のブーメランを見たことはなかった。
さらに飛ばし方も間違っていた。みんな、適当にやっていた。
それでも楽しかったのである。幸い、私の知る範囲でケガをした者はいなかった。
ブームは「危険だ、禁止だ!」となるのが昭和の常だった。ローラースケートも禁止になったし。ブーメランも禁止になった。かんしゃく玉も2Bも禁止になった。この「禁止」というのがどの程度の重みだったのかわからないけれど、少なくとも学校を通して親へ通知されていたはずだ。
それはともかく、いま思えばとても「適当」な時代だった。紙火薬を瓶に詰めて導火線のある爆竹と連動させて爆破する、といった工作を(別にテロや犯罪をする目的ではない、子どもの遊びである)、大真面目でやっていた。なかなか思うように爆発しないのである。
そのうち、2Bや爆竹をバラして火薬だけ取り出し、結果的に大やけどを負ったやつが出て騒ぎになる。私の周辺ではなく、どこかの誰かだ。そして「おまえたちは、そんなことはやっていないだろうな」と言われ「禁止だ」となった。
いまは、歩道を猛スピードで突き抜ける自転車や電動キックボードに脅えて生きているのだけど、適当さを許さないはずの現代社会なのに、どうしてそんなことが許されるのだろう、と不思議ではある。
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