241 相性はどこまで気になるか?
離婚可能性を抱えながらの結婚生活
離婚。せっかく結婚したけど、事情があってお別れする。この選択は辛いことだろうし、いまの時代は親権を含めてさらに面倒の多い事態になっている。厚労省の統計は最新で令和2年度(2020年)までだが、件数は19万3000組。このグラフでは、平成14年(2002年)の約29万組をピークに減少傾向が続いている。もっとも、結婚件数が減っているわけだから、離婚件数も減るよね、と言えてしまう。
統計がどうであれ、結婚を前提にお付き合いをしたあと、離婚可能性を抱えながら結婚生活を行うことに変わりはない。この離婚可能性をできるだけ小さくしたいから、マッチングアプリではAI技術を駆使して「相性ぴったりの相手」と結びつけようとしている。
相性がいいか、知りたい──。この願望は根強くある。
たとえば、神野守さんは古来から伝わる占いで相性を見る。
有名人たちの結婚は話題性もあって、多くの人たちの目に触れる。そしてたいがい「お似合いだ」といった評価となる。大多数が賛同する結婚もあれば、意外すぎる結婚に戸惑ってしまうケースもあるだろう。また、ファンによっては全否定する人も出てくるかもしれない。
私の鈍い感性では、どんなカップルもそれなりにお似合いだな、と思ってしまう。これは、相性についての寛容度みたいなものが曖昧だからかもしれない。
占いやマッチングアプリは、その仕組みはよくわからないものの、見た目とかファン心理に左右されずに、客観的な判断をしようとする試みだ。つまり、私たちは相性を考えるとき、できれば客観的な判断を得たい。親や信頼していた人から「お似合いだ」とか「あの人は絶対ダメ」とか言われると混乱してしまうケースは多いだろうし、そのとき「私たちは客観的に見ても相性バツグンなんです!」と堂々と言いたい。信じたい。
では、相性で最高点を得たカップルの離婚可能性はどうか。
これまた私の鈍い感性から想像するのだが、確率としてはあまり変わらないのではないだろうか。
それは、相性に深く拘る人は、相性への寛容さは低いと思えるからだ。100点中100点でなければダメな人にとって、ひとつの減点事項によって関係の継続を諦める場合もあり得る。つまりどれだけ相性のいいカップルも、やっぱり離婚可能性を抱えているってことだろう。決め付けはよくないけども。
寛容さは獲得できるか?
この間の日曜日、いつも楽しみにしているテレビ『家、ついて行ってイイですか?』を見ていたら、最初に家について行ったとき夫の浮気発覚で家庭内の雰囲気は最悪だった。数年後にもう一度訪れる。見ている側は「離婚しちゃってるかな」と思う。ところがそこそこ仲良くやっている。夫は猛省したのだろうか、顔つきまで変わって家族からの信頼を勝ち取ろうとしていた。子どもたちの言葉はけっこう辛辣ではあるものの、妻はそれなりに寛容を示す。そもそも寛容な人だったのか、それともこの事件によって寛容さを獲得したのか、そこはわからない。
浮気はよく耳にする離婚原因だ。しかし実際には、暴力や経済的事情、性格の不一致などカップルの別れる理由はさまざま。希に、仲はいいのに離婚するケースですらある。他人がとやかく言うことではない。婚姻関係を結べば離婚となって統計的にも把握できるものの、婚姻をしていないカップルの場合の離別は統計にならないので、恐らく膨大な数になるのでは、と勝手に推測してしまう。
出会いの数だけ別離がある、と考えていいはずだ。しかも個人差はかなり激しい。何度も出会い、何度も離別している人もいれば、一度のチャンスで出会って離別もしない、といったケースもある。
客観的な相性を信じているのなら、その相性の崩壊についても客観的な判断を得るべきではないか、と私はちょっと意地悪に考えてしまうものの、別れる理由は「もうムリ」と限界を感じたときであって、それは主観的な判断を尊重するしかない。
どんなものでも経年劣化はある。だとすれば、相性バツグンでカップルになった人たちは、定期的に健康診断のような相性診断をした方がいいのではないだろうか?
「あ、私、この頃、相性落ちてきた」とか「あなたがこれ以上、こういうことをしたら、もう、相性は回復しませんよ」といった判断を客観的に行う仕組みも求められていいはずだ。少なくとも、相性の低下を補う寛容さについても、診断した方がいいかもしれない。
と、ここまで書いてきて、そんな余計なことを誰がするものか、と思ったりもする。
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