229 中年危機一髪 ミッドライフ・クライシス
誰にでも訪れる危機
朝のワイドショー、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」で、「ミッドライフ・クライシス」を取り上げていたという。いわゆる「中年の危機」である。40代から50代といえば、女性には更年期障害が起こりやすいが、男性はミッドライフ・クライシスだという。しかし、この時間帯(朝8時から10時)にテレビを見ている対象年齢の人は少ないだろうに。あ、いまはこうやってネットにまとめ記事が出るから話題になれば届くのだろう。
確かに、自分も40代、50代はいろいろあったことを思い出す。
40代は娘の大学進学と引っ越しなどもあって、とにかく稼ぐために必死だった。社員になったりフリーランスになったり。そして雑誌から書籍へとスタンスを移した時期でもあった。だから自分では危機と呼べるようなものは感じていなかった。いや、別の意味の危機(家計の危機)だった。
50代になってふと、「なにかしなければ」との思いにかられた。私は高校から推薦で大学へ入った(付属高校だった)。つまり大学受験をしていない。とにかく試験が嫌いで、社会人になったとき「これで試験とはおさらば」とうれしかった。とはいえ、書籍では多岐にわたる分野の原稿を扱うことになり、著者はそれぞれ分野でトップクラスの人たちばかりで、編集者も受験戦争では勝ち組ばかり。「なんだか、バカは自分だけ」みたいな気にもなっていた。
そこでふと取材で知った行政書士の試験を受けてみることを思い立つ。やるからにはちゃんとやろう、と決意。LEC東京リーガルマインドの通信講座を受け、とにかく模擬試験をたくさん受ける、問題集を徹底してやるという戦法で受験し、半年勉強後の秋に試験を受けて合格した。ギリギリの点数だったけれど。
いまから思えばほかの資格でもよかったような気がするけど。少なくとも民法を徹底して学べたのはいまも助かっている。契約、相続といった私たちの身近なところにある法律だから。
3.11で意識も変わる
合格は1月にわかり、たまたまだが、「横溝正史ミステリ大賞」(いまはない)の最終選考にも残った(選には漏れたけど)。
その翌年、3月に3.11「東日本大震災」を東京で経験した。折しも出版社で打ち合わせ中の出来事だった。
せっかく行政書士に合格したので開業もしてみて1年。ライター業の一環として行政書士資格を生かす、といった程度の甘い考えでいたところに、まさに危機に直面したわけで、「これは!」と自分もそれなりに考えを改める気持ちになった。
この頃に撒いた種を、いまも細々と水をあげて手入れをしている。なぜなら、3.11で日本にいる限り、いつどこで大きな災害に巻き込まれても仕方がないのだと体で理解できたからで、だったらやりたいことをちゃんとやろう、と決意できたわけだ。いや、もちろん、そんなきっかけがなくても、優秀な人はどこかでそういう決意というか覚悟を持つものだろうけれど、私は適当にやってきたから、中高年になってはじめて気づいたのだ。なにごとにも遅すぎることはない。
いまから思えば、こうした「あくせく」はいずれも、「なにやってんだか」としか言いようはないけれど、こういうことのおかげで、ミッドライフ・クライシスを潜り抜けることができたのかもしれない。とにかくなにかに夢中になっていれば、中年の危機は乗り越えやすいらしいから。
そしていま。こうしてnoteを書いている。これもまた、自分なりの決めた路線のひとつなのである。なにを決めたのかは、内緒だけど。