283 スピード感
ついて行けない
思えば、昭和の頃から「ついて行けない」とこぼす人たちは大勢いた。「あれもこれも変わって」とか「新しい人たちの新しい考え方が」とか。そんなことを言っていたら、いつの時代だってたぶん、ついて行けない。ついて行く必要があるのか、と逆に問いたいぐらいである。
私の世代も、「電子写植について行けない」とか「DTPについて行けない」とか「Windowsについて行けない」とか、まあ、なにが起きてもだいたいはついて行けない。
ところが、そういう人たちのうち半分あるいはそれ以上は、口では「ついて行けない」と言いつつ、必死に「○○入門」だったり「娘に聞いてみた」だったり、いまならYouTubeで勉強して、ついて行くのである。
こうなったら、本格的について行かない主義で通してくれてもいいのだけど、そういう人はわずかで、たいがいはなんとなく後方からついて行く。後方なので先頭はよく見えないから、ちょっと前の方から「もうこっちじゃないんだってさ!」と声が聞えてきて「ええっ、Pythonなんてもう古いの?」と驚いて「じゃ、次はなんなの、なにについて行けばいいの」となる。
こうなると、「何について行くのか」こそが問題になってくるわけで、このあたりは政治の世界も似ていて「あいつにはついて行けない」と言っておきながら「でも、あいつでもいいか」となる時がある。絶対について行かない人もいるけれど少数で、あとは「だって、しょうがないじゃないか」とついて行く。
スマホを機種変したんだけど
さて、自分が使っているスマホ。いつから使っているのだ。2021年5月に機種変していたことが判明。わずか3年。もうダメなのだ。あらゆるアプリの動作が遅い。フリーズしたり落ちたりする。思えば3年前、おサイフケータイ機能がなければだめだ、マイナンバーカードが読み取れないとダメだと機種変していたのだった。それが、毎日のように「使わないアプリは削除してくれないと」とか「データがいっぱい」とか文句ばかり言い始める。
「今日はなぜか機嫌よくてサクサクいったな」と思ったら翌朝「なんで立ち上がらないで真っ暗になっちゃうわけ!」と頭に来る。この繰り返し。
契約している通信会社から「1年以上使っている人に」と案内がきて、手頃な価格の機種を推奨してきた。調べてみる。価格コムのレビューを読む。そのほかいくつかの「文句」や「苦情」を読む。この機種でこの価格なら損ではない、と判断して思い切って機種変をした。
ゆうべから引っ越し作業で大変である。AndroidなのでGoogleアカウントでバックアップしていれば実に簡単。というのは、表面的な話。Googleに暗証番号を覚えさせているものはとてもスムーズだけど、実はこのGoogleが覚えている暗証番号ってやつがクセもので最新版じゃなかったりする。もちろん、それはこっちの責任だけど。ついうっかり古いやつで入ろうとすると、ややこしいことが起こる。
今回もっとも引っかかったのはInstagram。夕べはあきらめて寝て、今朝もう一度。結局、あまり使わないメッセージアプリを入れさせられてしまい、だけどそれで解決したからまあいいけれど。
一応、暗証番号はメモもしている。このメモがまた、あてにならない。その通りに入れても「違うよ」と跳ねられる。じゃあ、新しくパスワード設定からやり直すよ、とやってしまうと、そこからまた長い旅が始まる。
私は、こういう時代にも、こうやってついて行っている。先頭ではないけれど、後方のあたりでもぞもぞついて行く。先頭のいる連中は、きっと機種変なんて秒でクリアするのだろうな。ハイハイ、どうせこっちは「ついて行けないよ」と騒ぐ側ですから。
とはいえ、この最新とまではいかない格安スマホが、実に気持ちよくてサクサクなのだ。このスピード感。あー、格安とはいえ機種変してよかった、と思う。と同時に、きっと3年前にもそう思ったのだ、と気付く。
賞味期限は短いのかもしれない。