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是枝裕和さんの「歩いても 歩いても」を読みました。

是枝裕和さんの「歩いても 歩いても」を読みました。

「海街diary」「そして父になる」「万引家族」に続き、またしても是枝さんの作品を買ってしまいました。この流れは暫く続きそうです。


さて、タイトルの

歩いても 歩いても

その後ろには、いったいどの様な言葉が続くのでしょう。

~しても は逆説仮定ですので、何かが成立しないのだろうという事が推測されますが、はたして...…

歩いても 歩いても というタイトル通り、ストーリー展開はとても緩やかです。

主な登場人物は
・70歳を超えた元開業医
・その妻
・次男  ※次男が主人公です
・次男の妻
・次男夫婦の子
・長女
・長女の夫
・長女夫婦の子2人

長男がいませんね。
15年前、長男は海で溺れている子を救出した代わりに命を落としてしまいました。その時、助けられた子も登場します。

物語は長男の命日に、実家に集まってくる家族を描いたものです。


是枝さんは家族の内面を細やかに捉えた作品が多く、それは今回も同じでした。
医院を継ぐはずだった長男が亡くなった事により、苦悩を抱えながら生き続ける家族のそれぞれの思いが描かれます。

5人家族だったはずが、突然4人となる。

その空白をどうやって埋めるのか。
埋める必要などないのか。

当事者にしか分かり得ませんし、同じ家族といえどもその度合いは異なるでしょう。


私ごとですが、小学生の時、当時飼っていた犬「ジョン」が病気で亡くなりました。
放課後の部活から帰って来て、玄関の数メートル手前で嗅いだ線香の香りを今でも明確に覚えています。
家に入ると母親に「こっちにおいで」と呼ばれ、そこで段ボールの中に横たわる「ジョン」が目に入りました。今朝一緒に散歩に行ったのに。
母も姉も泣いていました。兄は少しだけ泣いていました。父は泣いていませんでした。
彼を飼い始めたのは兄でした。ジョンの直担当は兄で、兄が誰よりも長い時間を彼と過ごしました。
だから、少ししか泣いていない兄を差し置いて私が涙を流すべきではないと我慢して、あとで部屋で声を押し殺して泣きました。お風呂でも泣きました。

今回の作品には、なんとなくその時の私の気持ちに似たものを感じました。

一緒に泣いて、悲しめばいいじゃない。

それは分かっているし、そうしたい気持ちもある。
だけど、そうできない思いもあるんだ。
上手く説明できないけれども。


目的地も分からないし、解決できるかどうかも分からない。

だから、それぞれのはやさで、歩いていけばいいんじゃない?

歩き続けなければいけない事もない。

立ち止まって、振り返って、また歩き出して...…

だから、 歩いても 歩いても。

その後に何がどんな風に続くのか、何から安らぎを得て、何が満たされないままのかは、人によって違うもの。

私は今回の作品のタイトルの意味を、そんな風に捉えました。


我が家の犬の死がなければ、またあの時私がその場で家族と一緒に泣いてしまっていたら、こんな風に捉える事もなかったかも知れません。

何年か後にもう一度読み直して、これらのキーワードに込められた是枝さんの思いを探りたいと思いました。


あ、そうそう。
途中で黄色いチョウチョが現れます。
終盤でもう一度現れます。
読み落とすはずもありませんが、ココ、ポイントです。


映画化されていますので、映画版もぜひご覧になってみてくださいね。
樹木希林さんにしかできない役がここにもありました。
特に、希林さんと黄色いチョウチョのシーンは圧巻です。

ユニークな舞台挨拶はこちら!


最後までお読みいただきありがとうございました!

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