-母上様- 水羊羹をおくります
まだまだ暑いですね。
あまりに暑いので、ふと実家の両親が心配になりまして、何か涼しげな物でも送ってやるかと思い立ちました。
約半年ぶりの、母へのメールです。一応、食べられるものの確認を兼ねて。
「暑い中、どうしてますか?」
「今年ついに畑をやめたヨ。この暑さには勝てんからー(中略)-。ありがとさん。+(グーチョキパーの絵文字)」
「水羊羹食べる?」
「水羊羹だいすきだよ~ん。+(グーチョキパーの絵文字)ー(後略)ー」
「OK。じゃ、そのうち送るんでね」
私の母はメールを使い始めて以来ずっと、謎の「グーチョキパー」の絵文字を乱発してきます。
一度、なぜグーチョキパーなのかと聞いた事がありますが、よく分かりませんでした。
さて、それはワキにおきまして・・・
割と高齢なため、ヘタなものを送ってノドに詰まらせても困ります。
普通の羊羹はちょっと怖いので、水羊羹をおくることにしました。
近所のスーパーの贈答品コーナーでも良かったのですが、どうも「ありあけのハーバー」ばっかりの様な印象がありましたので、隣町の複合施設へ向かう事にしました。
到着は9時55分。開店は10時。 おぉ、ナ~イス。
大勢並んでいます。
暑いから早く入れておくれよ~、と言わんばかりに数人がガラスギリギリに寄って中を覗いています。
アレって、中から見たらゾンビ映画みたいで滑稽だろうな、と思いました。
ちなみに私は、開店時のお出迎えが苦手なのです。
店員さんが列をなして「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」「いらっしゃいませ」と挨拶をされる前を平然と通り過ぎることができない小心者の私。
かといって「はいはい、いらっしゃいましたよ~、いらっしゃいましたよ~」とボケる勇気もやっぱり無い私。
なので、その日もやはりいつも通り中途半端にヘコヘコしながら、そそくさと小走りで前を通過したのでした。
だったら10分遅く入ればいいんじゃない?と毎回思うのですが、ソレはソレで面倒臭かったりする自分ってやっぱり面倒臭いヤツだなぁと思います。
そうして第一関門を突破し、すぐさまお目当ての店へ向かいます。
ありました、ありました。
なんとまぁ、おちゃれな店だこと。
店構えに怯み、思わず立ち止まる私。
お洒落すぎて入りずらいのぉ~。
一番安くて15,000円ですとか言われたらどうし…
「いらっしゃいませ。お茶どうぞ」
(お茶、はやっ!)
あ、ありがとうございます。いただきます。ウマっ!
(やばい!思わずウマっと声に出してしまった)
美味しかったのです。とても、とても美味しいお茶でした。
中に黒豆が2つぶ入っていました。
「水羊羹は通常はお水で作るのですが、当店はお水の代わりにこちらの黒豆の煮汁で作っております」
「黒豆の形のまま入ってるという事ではないのですよね?」
「はい、豆の形のままではありません。煮汁を使っています」
お茶を飲み干しましたが、黒豆2つぶが底に取り残されてしまいました。
2粒の黒豆を見た瞬間、私の脳回路が超高速回転を始めました。
-黒豆も食べるのかな? いやそれならスプーンか何かつけるでしょ。 何もついていないという事は食べるなという事だろう。 でも食べたい! 絶対ウマイはず。 ハッ!もしかして舌でレロレロとやって食べる? そんな下品な事させるワケないでしょ。-
→→→ 結論:黒豆は食べない。
ごちそうさまでした。 じゃあ、このセットを1つください。
「ありがとうございます」
時計を見ると、まだ10時15分。
我ながらなんという速さ。
ささっと宅配伝票を書いて、送料半額に喜んで、店をあとにしました。
お茶が本当においしかったので、店を出る時に改めて「ごちそうさまでした」を発した声が想定以上にデカくて驚かせてしまいましたね。
歳をとると声がデカくなるのは本当なんだ、と思いました。
失礼いたしました。
予想以上に早く済んだので、書店と文具屋、そして買いもしないのに枕の専門店、買いもしないのに楽器店をぶらついて外に出たら11時すぎでした。
空はこんな感じでした。
おわり。