はじめての新規事業に「マッチングプラットフォーム」が向かない理由
こんにちは!本気ファクトリー公式note編集部です。
新規事業開発で最初に取り組むのが「新規事業のアイデア出し」です。
新規事業開発コンサルタントである弊社代表の畠山によると、このアイデア出しの際に「マッチングプラットフォーム」を出す方が多いそうです。しかし、マッチングプラットフォームには意外な落とし穴があると言います。
そこで今回は、事業成立の難易度が高いビジネスモデル、低いビジネスモデル、それぞれを例に、新規事業のアイデアを考える際に注意する点について聞きました。
新規事業成立の難易度は、ビジネスモデルによって異なる
ーー新規事業開発をする際、まず一番はじめに取り組むのは「事業のアイデア出し」だと思います。アイデア出しの際に気をつける点はありますか?
畠山:新事業アイデアの募集やアイディエーションワークショップを開催すると、「マッチングプラットフォーム」を出す方が非常に多くいらっしゃいます。
たしかに、マッチングプラットフォームは成立すれば時価総額もつきやすく、優れたビジネスモデルです。ただし一つ、大きな問題があります。それは、マッチングプラットフォームが事業を成立させる難易度が極めて高いビジネスモデルだということです。
ーーマッチングプラットフォームが難易度が高いビジネスモデルとされるのはなぜなのでしょうか?
畠山:小売業やメーカー業は、顧客課題に合わせてソリューション側を調整することができるビジネスモデルです。
一方、マッチングプラットフォームは、顧客課題と別の顧客課題を結びつけることで両者の課題を解決するビジネスモデルになります。
「顧客課題を解決するような、別の顧客課題が存在する」、「それらの顧客課題同士を効率的に結びつける仕組みの構築が可能である」という要素が必要になる分、事業を成立させる難易度が高いのです。
それでは、事業成立の難易度が低いビジネスモデルと、高いビジネスモデルについて、もう少し詳しく説明しましょう。
事業成立の難易度が低いビジネスモデル
畠山:まずは、事業成立の難易度が低いビジネスモデルについてみていきます。小売業やメーカー業などは「顧客課題に合わせてソリューション側を調整することができるビジネスモデル」なので、比較的事業成立の難易度が低いと言えます。
飲食店を例に考えてみます。
飲食店は「お腹が空いた」という顧客課題を「空腹を満たす食事」で解決しています。
ただし、現代社会において、「お腹が空いている顧客に対して食事を提供する」場合、その精度はかなり高いものが求められます。「空腹を満たせる食事が手に入る」というレベルで事業を成立させることは、なかなか難しいでしょう。
例えば、「美味しい・安い・早い」を高いレベルで実現したり、気持ちのよいサービスを提供したり、希少な食材を使ったこだわりの料理を提供したり、居心地の良い内装にするなど、特筆すべき要素が必要です。
それらは、「短時間で満足できる食事がしたい」、「特別なときに高級感を感じられる食事がしたい」といった顧客課題を解決するためのサービスです。
このように、飲食店をはじめとする小売業やメーカー業は、顧客課題に合わせてソリューション側を調整することができるため、事業を成立させる難易度が比較的低いビジネスモデルだといえるでしょう。
事業成立の難易度が高いビジネスモデル
ーーそれに対して、マッチングプラットフォームはサービス提供側が調整できる範囲が限られている分、事業として成立させる難易度が高いということなのですね。
畠山:そうです。マッチングプラットフォームは「ある顧客の課題を別の顧客の課題で解決する」ビジネスモデルになります。
ニーズがある人同士を結びつけるのがマッチングで、ポータルサイトやプラットフォーム上でマッチングしたら手数料が発生するモデルです。
ただし、
顧客同志が互いの課題を解決できる組み合わせである
双方の顧客課題をマッチングするに十分な母数を集められる
効率的に「課題を解決できる顧客同士」を見つけられる
という3つの要素を満たす必要があり、非常に難易度が高いです。UbeEatsやAirbnb、各種の求人サイトなどがこのモデルです。
「求人サイト」を例に説明します。
求人サイトは、求職者の「就職したい」という顧客課題を企業側の「採用したい」という顧客課題で解決しています。
就職する側も、採用する側も「就職できるならどの企業でもいい」「採用できるなら誰でもいい」というわけにはいきません。それぞれに細かいニーズがあり、それぞれのニーズを満たし合うペアを見つけられるよう、サービス設計する必要があります。また、求職者側も企業側も多数の選択肢が必要になるため、共にある程度の母数を集めなければなりません。
つまり、マッチングプラットフォームが成立するためには、「顧客課題を解決するような、別の顧客課題を見つけること」と、その上で「それらの顧客課題同士を効率的に結びつける仕組みの構築」が必要です。
顧客課題にソリューションを合わせるだけなら、ソリューション側を調整するだけで事業は成立しますが、両方が顧客課題である場合、それらを調整することはできません。「互いの課題を解決し合えるペアを見つける」ことでしか実現できないビジネスモデルなのです。
これが、マッチングプラットフォームが事業として成立する難易度が高い理由です。
なお、誤解のないようにお伝えしておくと、ここでいう「難易度」とは「ビジネスモデルとして成立するかどうか」に限った場合の話です。実際に収益を上げ続けられるかは、また別の話になります。
新規事業開発の際に忘れてはいけないこと
ーーそれぞれのビジネスモデルの難易度を理解することは、新規事業開発を成功させる上で非常に大切だということが分かりました。
畠山:どのビジネスモデルに挑戦するにしても、一番大切なことは、顧客課題を細かく明らかにし、それを的確に解決できるソリューションやプロダクトを作ることです。
とくに、通称CPF(Customer Problem Fit)と呼ばれる「解決すべき顧客課題の発見」は非常に大切です。
物質的に豊かな現代の日本において、顕在化している課題というのはほぼありません。
基本的には「みんな気付いてないけど実は困っていること」、つまり潜在的な顧客課題を探すことになります。かつ、ビジネスとして成立するものを見つけないと事業として成立しないのです。
この顧客課題の具体的な見つけ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ参考になさってみてください。
畠山Facebook :https://www.facebook.com/kazuya.hatakeyama