子どもの「やってみたい」も「何もしない」も大切にする-川崎市子ども夢パークへ行ってきました!
1月10日(火)~11日(水)、1泊2日で川崎市へ視察調査に行きました。目的は「子どもの権利条例」。川崎市はこの条例を日本で初めてつくった自治体です。
また、昨年11月に福津市で「ゆめパのじかん」というドキュメンタリー映画の上映会があり、それを観てぜひ「ゆめパ(川崎市子ども夢パーク)」に行ってみたいと思っていました。
今回、東京や長野、沖縄などから集まった自治体議員やその支援者の方たちなどと一緒に、約20名で視察調査しました。
初日はその「川崎市子ども夢パーク」へ。夢パークは、子どもの権利条例の理念をもとに、子どもが自分の責任で自由に遊び、学び、つくり続けていく子どもの居場所・活動拠点として2003年にできた、公設民営の施設です。水遊びや火を使った遊びもできるプレーパーク(冒険遊び場)やサイクリングロード、全天候型スポーツ広場、本格的な機材がそろった音楽スタジオ、ログハウス、乳幼児の部屋「ゆるり」、本が置いてある部屋「ごろり」等があります。また、学校外で子どもたちが多様に育ち、学ぶことを保障する場として、「フリースペースえん」が開設されています。
夢パークでは元所長の西野博之さんから、日本の子どもたちが置かれている現状や課題、条例や夢パークができた経緯、夢パークが何を大事にして活動しているか…など、詳しくお話を伺わせていただきました。(お話の内容のメモは、このページの最下にまとめています)
子どもの遊び、学び、育つ権利を保障する「子どもの居場所」を!
お話の中で最も印象に残ったのは、昨年9月にNHK『ドキュメント72時間』でも放映されたというエピソードです。「学校不適応児」とされた子どもの母親が、一時は「2人で消えてしまいたい」を思ったこともあったけど、夢パークと出会って「もし生まれ変わったとしても私の息子で生まれてきてほしい」と思えるようになったというお話に、思わず涙が出そうになりました。
日本の10代の死因の第1位は「自死」ですが、自死の背景の大きな要因となっているのが「学校」です。自死する子どもたちがSNSで発信する言葉は、「死にたい」「消えたい」よりも「学校に行きたくない」が多いのだそうです。
不登校や引きこもりに対して、まず「親が味方」になれるように、親への支援が必要だと西野さんは言います。「困った子」ではなく「困っている子」、「学校不適応児」ではなく「子どもに適応できていない学校教育」と、親(大人)が180度考え方を変える必要があります。拙速な「学校復帰」よりも、将来的な「社会復帰」ができるような支援が必要だということ、また、子どもたちがタダで思う存分遊んだりすることができる「子どもの居場所」を行政がつくることが必要だと、再確認しました。
「まず、おとなが幸せでいてください」
もう一つ印象的だったお話は、条例づくりに参加していた子どもたちが、大人に向けて発したというメッセージの内容です。
「まず、おとなが幸せでいてください。おとなが幸せじゃないのに、子どもだけ幸せになれません。おとなが幸せでないと、子どもに虐待とか体罰とかがおきます。条例に「子どもは愛情と理解をもって育まれる」とありますが、まず、家庭や学校、地域の中で、おとな同士が幸せでいてほしいのです。子どもはそういう中で安心して生きることができます。」
「子どもの権利」というと、「では、大人の権利は?」と思われる方もいるかもしれませんが、「子どもか、大人か」ではなく「子どもも、大人も」だということを、この子どもたちのメッセージから教わった気持ちになりました。
川崎市の条例では「子どもの権利」として、7つの権利を謳っています。「安心して生きる権利」「ありのままの自分でいる権利」「自分を守り、守られる権利」「自分を豊かにし、力づけられる権利」「自分で決める権利」「参加する権利」「個別の必要に応じて支援を受ける権利」の7つです(条例第10条~第16条)。
この中で子どもたち自身が一番大事だと考えた権利は、1つめの「安心して生きる権利」だったそうです。正直、意外でした。しかし、上のメッセージを聞いて「なるほど」と思うと同時に、子どもたちがいまの社会のなかで「安心して生きられない」と感じているのか、私たち大人が鈍感になってしまっていたなと反省しました。
子どもたちの「安心して生きる権利」を保障するためにも、まず大人が経済的にも精神的に満たされるようにする必要があります。『ママをやめてもいいですか?』というドキュメンタリー映画のなかで「ミルクピッチャー理論」というのが出てきます。ママだって満たされなければ、我が子に愛情を注ぎ続けることは難しい…。ママを満たすためには、パパや祖父母、ママ友、医療者、行政などが家事や子育てをサポートすることが必要だといいます。しかし、満たされる必要があるのは、ママだけではありません。パパも、学校や幼稚園・保育園の先生たちも、地域の人たちも、満たされていない大人だらけではないでしょうか? そういった大人を満たすためには、行政(政治)の役割が大きいと思います。しかし、残念ながら今の政治はそこへの予算のかけ方が不十分であり、私はもっと「人への投資」が必要だと提案しています。
子どもの声をまちづくりに反映!
2日目は、市役所へ行き、条例制定の経緯などを伺いました。子どもも議論に参加しながら200回も会合を重ねて条例を作ったこと、今も「子ども会議」を開催し、子どもたち市に対して提言活動を行っていることなど、福岡市でもぜひ実現したいと思いました。
2月23日(木休)のイベントの中でも簡単に報告させていただく予定ですので、ご期待ください!
◎「ゆめパのじかん」予告編動画
◎川崎市子ども夢パーク視察調査メモ(2023.1.10)
<子どもをめぐる社会環境>
●自死:
・10歳~39歳の子ども・若者の死因第1位は「自死」
・自死した子どもたちのSNSでの発信「学校に行きたくない」
→学校が自死の大きな原因
●不登校:
・全国で24万人、小学生は77人に1人、中学生は20人に1人
※福岡市では、小学生は約1500人、中学生は約2000人(R3年度)、H30年度から急増
小学生は56人に1人(R2年度は78人に1人)、中学生は20人に1人
●いじめ:
・低年齢化:①小学2年生、②小学1年生、③小学3年生
・小学生50万件、中学校9万件、高校生1万件
●自己肯定感が低い
・「完璧」「正しさ」「普通」「当たり前」を求めすぎる家庭(保護者など)
・2018年3月船戸結愛ちゃん(5歳)虐待死事件
「しっかりとじぶんからもっともっときょうよりかあしたはできるようにするから」
「あそぶってあほみたいだから やめるから
もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします」
「もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします」
<川崎市子ども権利条例>
●7つの権利:「安心して生きる権利」「ありのままの自分でいる権利」
「自分を守り、守られる権利」「自分を豊かにし、力づけられる権利」
「自分で決める権利」「参加する権利」「個別の必要に応じて支援を受ける権利」
※子どもの権利条約「生きる権利」「発達する権利(育つ権利)」
「参加する権利」「守られる権利」
●子どもが一番求めているのは「安心して生きる権利」
●よくある反対論:
・「わがままになる」→「わがままと権利は違う」
・「権利だけでなく義務を」→「義務ではなく責任。権利の相互尊重」
●ポーランドの小児科医コルチャック
「子どもはだんだんと人間になるのではなく、すでに人間である」
●「子ども市民」と「おとな市民」:条例制定過程にも子どもたちも参加
●子ども委員会:
「まず、おとなが幸せでいてください。
おとなが幸せじゃないのに、子どもだけ幸せになれません。
おとなが幸せでないと、子どもに虐待とか体罰とかがおきます。
条例に「子どもは愛情と理解をもって育まれる」とありますが、
まず、家庭や学校、地域の中で、おとな同士が幸せでいてほしいのです。
子どもはそういうなかで安心して生きることができます」
<子ども夢パーク&フリースペースえん>
●川崎市子どもの権利条例の27条「子どもの居場所」としてスタート
●「遊ぶ」「学ぶ」「ケア(気にかける・関心を持つ)」の3つのつながりの中で「育つ」
・日本医師会&小児学会「遊びは子どもの主食」
・非認知能力
・自然の不思議さ
・「火」と「道具」
※公園だと公園法の縛りがある、社会教育施設だからできる
・リスク(見える危険)は残し、ハザード(見えない危険)を大人が取り除く
・「禁止」の看板はない
・「やってみたい」ことに挑戦できる
●「なにもしない」ことを保障
●毎日「昼食」づくり:経済的貧困が文化的貧困につながっている、暮らしが壊れている
●「学校復帰」ではなく、将来的な「社会復帰」
・大人たちの不安が子どもたちを追い詰めている。
→親への支援が必要、親を味方にしないといけない。
・「学校に行かない理由は、自分でもわからない」
・「学校が安全で、安心して、楽しく学べるなら、学校に行きたい」
・その子の「いまだ」はそのうち来る。
・「こんな私で大丈夫」が充電されると進学していく。
●「困った子」ではなく「困っている子」
「学校不適応児」ではなく「子どもに適応できない学校教育」
↓
「一人ひとりの背景やニーズに合わせた多様な学びと育ちを保障する環境づくり」が必要
●“困った子”の保護者の声
「(子ども夢パークに出会うまでは)
このまま2人で消えてしまいたいなとか思ったこともいっぱいあるけど、
(今では)もし生まれ変わったとしても、私の息子で生まれてきてほしいなって思う」
●教育福祉の必要性