編集者という職業に憧れて
なりたい自分というものがあるのなら、それは素晴らしいことだなと思います。
でも何かを成し遂げたいと思うなら、ときには回り道を辞さない覚悟が必要です。
◎最初から編集者を目指していた
私の場合、新卒の就職時から「編集者」を目指していました。
本を読むのが好きで、雑誌や書籍をつくる仕事に憧れていたのです。
狭き門でしたが、幸いなことになんとか小さな出版社に引っかかり、編集の仕事の基礎を学ぶことができました。
そこはIT専門書籍の出版社で、憧れていた出版業界の中でもかなり地味な世界だったのですが、編集者の端くれとして席を連ねることができたのがとても嬉しかったことを覚えています。
しかしそれ以上のキャリアを築くイメージを持つことができませんでした。
当時(2000年ごろ)の花型はやはり雑誌だったのです。
◎雑誌の編集者を目指して転職
雑誌の編集者は過酷な仕事というのが、業界のもっぱらの評判でした。
昼も夜もない、平日も休日もない、公も私もない、そういう生活を強いられる世界だったのです。
「若いうちにしか経験できないかも」そう覚悟を決め、PC雑誌の編集の門戸を叩いたものです。
確かに雑誌の世界は忙しすぎて、文字通りプライベートをかなり捧げる生活を送ることになりました。
それが苦でなかったのは、周りの編集部員みんなそうだったからかもしれません。
深夜まで仕事して、朝まで飲みに行き、お昼ごろ出社する……そんな生活を続けていました。
校了が近くなると徹夜が増え、原稿とのせめぎ合いも極めてシビアになってきます。
なんとか編集長に担当ページ全てOKをもらい、ようやく校了して一段落するわけです。
その翌日からはまた次号のページ作成が進行する……毎月毎月そんなサイクルで回っていました。
過酷ではありましたが、このころが一番楽しかったかもしれません。
◎雑誌の休刊と書籍編集への復帰
その後は出版業界自体が斜陽に入り、担当雑誌もあがき続けたものの休刊(実質廃刊)という時期を迎えることとなってしまいました。
その後は前職で携わっていたようなコンピュータ系の解説書をつくる部署に配属されました。
そんな業務も最初は好調でしたが、次第に利益の出にくい業界へと変貌していきました。
これ以降の経歴は省略しますが、いまではウェブ広告の制作に携わり、記事づくりに勤しんでいます。
◎教訓めいた話を少し
一つの目標に向かって突き進むのは楽しいものです。
私は雑誌の編集長を目指していました。
しかし業界の衰退がそれを許してはくれませんでした。
もちろん実力不足も大いにありました。
現在の仕事に不満はありませんが、最初目指していたところとはずいぶん離れたところにいるなあというのが、いまの思いです。
主戦場は紙ではなくウェブ、編集ではなく広告制作、エンターテイメントの世界ではなくビジネスの世界にいます。
それを支えてくれたのが「編集者」という履歴です。
いまはこれまでの経験を活かせているというか、資産を食いつぶして働いている思いを持っています。
悪い言い方をすると、やや惰性で働けているというのが本音だったりします。
実は私がひそかに狙っているのが、キャリアの最後を雑誌・書籍の編集者として飾ることです。
どうでしょうね。
実現するかわかりませんが、現在回り道している経験も含めてわたし自身の履歴を形づくるものです。
これを無駄にすることはできません。
いまこうして目指すものがある以上、わたしのキャリアもまだまだ紡いでいく過程にあるのでしょう。
皆さんもぜひ回り道を恐れず目指すところに向かってもらえればなと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。