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伝説的ホラーゲーム「Ib-イヴ」|最恐だけではないやり込み要素を徹底解説!【2023年3月改定版発売決定】

今回は2012年2月公開のフリーホラーゲーム、「Ib(イヴ)」について書いていこうと思います。

これは動画配信サービス「ニコニコ動画」を頻繁に使っていた方に限られますが、20代の皆様にはIbの名前だけなら知ってるという方も多いのではないでしょうか。

ですが、プレイしたことがある方、これはなかなかいらっしゃいません。そんなマイナーゲームながらも、フリーゲームの歴史の中で一際光る名作、Ibの魅力をご紹介したいと思います。


「Ib」ストーリー


「Ib」の主人公は9歳の可憐な少女、イヴ。何を隠そう彼女の名前はゲームタイトルにもなっています。


物語はイヴが両親と共に美術館を訪れることで始まります。

その日は美術家「ワイズ・ゲルテナ
(通称:ゲルテナ)」の美術展が開かれており、面白そうな作品がいっぱい。

一人で美術館の中を探索していると、とても大きな絵画を見つけます。

すると突然地面が大きく揺れ、照明が急に落ちて暗くなってしまいます。

両親の元に戻るため美術館の中を探し回りますが、見つけられないどころかひとっ子一人館内には見当たりません。

出入り口や窓はなぜか開くことができず、脱出することもかないません。
どこか不気味な美術館の雰囲気。

床を見ると「おいでよイヴ」という文字が。

そこはなんと、ゲル
テナ作品達の作り出した謎の美術館の世界でした。

この世界の中では美術品がまるで命を持っているかのように振る舞い、作品が音を発したり動いたりするなど現実ではあり得ないことが起きます。

イヴに襲いかかってくる作品達。

それを掻い潜りながら出口を探して逃げ惑うイヴ。その道中、イヴは力尽きて倒れている男性を見つけます。

この世界に閉じ込められたのは、実はイヴだけではありませんでした。この男性はギャリーといいます。ギャリーはいわゆる「メインヒロイン」的な登場人物です。

男性をヒロインと紹介するのはなんだか滑稽ですが、ギャリーはかっこよくもかわいくもあるなんとも魅力的なキャラクター。

筆者が一番気に入っているキャラクターで
もあり、その魅力については後ほど詳しく説明したいと思います。

イヴはギャリーと共に、またギャリーの力を借りながら、襲いかかってくる美術品達から逃げつつ美術館の世界を巡り出口を探します。

しかし、気丈に振舞っていたイヴも9歳の小さな女の子です。不気味なゲルテナの世界に段々と疲弊していきます。

そして体力的にも精神的にも限界を迎え、ゲーム内で「心壊」と呼ばれる心が壊れて幻想を見る現象を起こし、ついには倒れてしまいます。

イヴが目を覚ますと見知らぬ部屋の中だった。

ギャリーが近くにあった部屋までイヴを運び、コートをかけて看病してくれていました。しばらくした後イヴの体力が回復すると、また出口を探して二人は美術館を徘徊します。

その道中、二人は金髪の美少女、メアリーに出逢います。

メアリーは外の世界にいる父親に会いたがり、二人と合流して行動を共にします。
そもそもこの世界は何なのかー。

イヴやギャリー、メアリーの命運はどうなってしまうのか。はたして、イヴは美術館の世界から脱出することができるのか。

そんな物語となっております。

シンプルだからこそゲーム初心者でも楽しめる「Ib」


フリーホラーゲームに分類されている「Ib」ですが、そのゲームシステムにはいくつかの特徴的
なものがあります。ここではそれらを紹介していこうと思います。

また、マップ内にはところどころ水の入った花瓶が置いてあり、この花瓶に薔薇を活けるとHPを回復することができます。

薔薇が全て散ってしまうとゲームオーバー。
また、薔薇を奪われてしまうと行動不可となってしまいます。

登場時のギャリーはそのため倒れていましたが、イヴがギャリーの青い薔薇を奪い返したため復活しました。他に例を見ないとても美しいHP表現ですね。


また、館内に置かれたノートとペンがセーブポイントになっています。ちなみに現実の美術館にも記帳用のノートが置かれていることがあり、これに住所や氏名を書くことで後日ハガキ等でイベントのお知らせをもらうことができるそうです。

また、来訪人数を知るなどといった目的もあるそう
です。もし美術館に行く機会があれば、記帳にご自分のお名前を書き残してみてはいかがでしょか。

そして作中にはさまざまなサブストーリー、そしてストーリー分岐がありEDはなんと7通りも用意
されています。

どれもいわゆるトゥルーエンドやバッドエンドに分類されますが、脱出できるキャラクターが違ったり、バッドエンドであってもとあるキャラクターの視点によってはハッピーエンドであったりと、一言では説明しきれない魅力とやり込み要素がたっぷりと含まれた作品です。

「Ib」を盛り上げる個性豊かなキャラクターたち


先ほど大まかなストーリーをご紹介しましたが、今度はその登場キャラクターについてお話しし
たいと思います。

メインキャラクターは先述のイヴ、ギャリー、メアリーの三人です。

イヴは9歳の女の子。暗い茶髪に赤い目をしており、白いブラウスと赤いスカート、スカーフを身につけております。

持ち物は誕生日に母親からもらったレースの白いハンカチ。「Ib」と名前が刺繍されています。

可憐でまさに育ちのいい女の子といった感じでしょうか。比較的無口な性格であり、選択肢を通しての会話以外で自ら口を開くことは滅多にありません。また幼い少女のため、まだ難しい漢字は読むことができず、重いものも動かせません。

ちなみに赤い薔薇の花言葉は「愛情・情熱」。

幼いながらも奇妙な世界で気丈に闘う彼女にぴったりですね。

ギャリーは20代のような見た目の男性。
紫色の髪で左目が隠れており、ボロボロのコートを着
ています。

持ち物は長年使用しているライター、美術館に来た時点で停止した腕時計、そしてキャンディーです。

一見少し怖いのですが、性格はとても面倒見が良く女性的で、また女性のような口調で話すため、ファンからは「オネエ」などと揶揄されることも度々。

ギャリー自身は自分のことを「変なものに好かれやすい体質」と言っています。

趣味は散歩と隠れ喫茶店を発掘すること。


青い薔薇の花言葉は「不可能・奇跡」です。

ちなみに現実世界では2002年に交配によって世界
初の青い薔薇が誕生しているそうです。


メアリーの外見は金髪碧眼の美少女です。

青いリボンのついた緑色のワンピースを着用しており、人懐っこく明るい性格をしています。

メアリーも幼いため、イヴ同様難しい漢字を読むことや重
いものを動かすことができません。また、年の近いイヴを非常に気に入っています。

黄色い薔薇
の花言葉は「友情・嫉妬」です。

そして最後に、なんと「作中に登場しない最重要人物」をご紹介したいと思います。

その名もゲルテナ

この美術展を開催した人物です。

実は物語開始時点で既に故人なのですが、彼の生み出した美術品達を通してストーリー全般に大きく関わってきます。

フルネームは「ワイズ・ゲルテナ」で、絵画・彫刻など多くの作品を世に残した芸術家です。性別がはっきりと示されることはありませんが、「彼」や「お父さん」と表記、呼称されているため男性と推測されています。作風は非常に独特で迫力のあるものですが、小さな美術館でしか個展が開かれないマイナーな芸術家です。

また、実在の人物やものを描いた作品は少なく、自画像もありません。

マニアも納得の「しっかり怖いホラー」


本作品の驚くべき点は、「しっかり怖いこと」です。

超有名ホラーゲーム作品に「Five Night At
Freddy’s(通称:FNAF)」がありますが、そのような「びっくりさせるホラー」を総称して「ジャンプスケア」と呼びます。

ジャンプスケア的要素は一般的なホラーゲームによく登場し、Ib作中にも同様に使われている場面もありますが、Ibのホラー要素はそれだけではありません。

Ibのストーリーはメイン・サブ共にホラー小説的なじわじわとした恐怖が織り込まれているのです。

それではIbのホラー要素をいくつか紹介します。

まずはメインストーリー。

不気味な薄暗い美術館に、一人。まずこの初期状態は何とも恐ろしいですね。そもそも美術館というものが不気味な雰囲気を醸し出しているのに、人が忽然と消え照明が落ちてしまったとしたらとても恐ろしいと感じるでしょう。

また、ストーリー終盤には「人間の持つ狂気」とも言えるようなものが見え隠れします。

これは生活の中でも比較的身近に感じることのできる恐怖ですが、実際にプレイヤーとしてこれに肉薄すると本能的な恐怖が刺激されます。

次に、イヴに襲いかかる美術品の数々です。

この謎の世界では、美術館に展示されていた作品のみならず、展示されていないはずの作品も数多く登場します。この作品達は作中、イヴ達をこの世界にとどめるために自主的に行動し、イヴ達を襲います。

代表的な作品は「赤い服の女」「無個性」「青い人形」が挙げられます。

「赤い服の女」は作中序盤から見ることができます。

通常時は右を向いた女性の上半身と横顔の絵画で、イヴがこの作品に近づくと額縁を引きずりながら這うように襲ってきます。

服の色は赤以外にも青、黄、緑があり、ギャリーの薔薇を奪ってむしっていたのは青い服の女です。

なお、ゲルテナの世界で女性の作品は「皆、花占いが好き」と紹介されています。また、彼女達のモデルはゲルテナの財産目当てで近付いてきた女性達。捕まりたくないですね。

「無個性」は頭のない黒いマネキンのような作品です。女性型と男性型があり、歩いて襲ってきます。重量がかなりあるので道を塞ぐこともしばしば。

「青い人形」はその名の通り青地の人形です。赤い目をしており髪の毛はボサボサで、普通の人なら嫌悪感を抱く気味の悪い見た目です。

彼らは見た目が不気味であったり、突然飛び出てきてプレイヤーを驚かせたりします。

また、作中では「心壊」という用語が登場します。

これは極度の精神的疲労により幻覚が見えるようになり、最終的に人格が「壊れて」しまうことを指します。

恐ろしい点は本人がそれに対して無自覚だということ。私たち現実世界の住人も「心壊」しないように気をつけたほうがいいですね。

怖いだけじゃない!?さまざまな美術作品


プレイヤーを驚かせたり恐怖に陥れるゲルテナの作品達ですが、恐ろしいだけじゃありません。


それらの中には非常に魅力的なものも数多く存在しており、ゲーム内の架空人物でありながらなんと現実のギャラリーでも複数にわたって「ゲルテナ展」が開催されたことがあるのです。


そんな魅力のあるいくつもの作品の中から、筆者が特に好きな作品をご紹介したいと思います。


その作品は「ミドリのよる」というものです。

暗めのエメラルドグリーンをした作品で、丘のような部分と、キラキラと輝く星空が緑の絵具で描かれています。

この作品は突如出現した大規模なオーロラを描いたもので、とても神秘的な絵画です。ストーリーに大きく関わることはありませんが目を惹きつける魅力があります。


ゲルテナの作品はインターネット上で公開されていますので、ぜひ一度ご覧になってください。

「Ib」リメイク版はSwitchでも2023年3月に配信決定!


その魅力から大きな人気を誇る「Ib」。

なんと2022年4月、公開10周年を記念して有償版リメイク
が発売されました!

リメイク版はゲーム中のアイコン画像やイラスト、一部ゲームマップがオリジナル版と異なっています。

その入館料は1300円。制作者のkouri氏曰く、「一度購入すると永遠に
入館が可能」の買い切りです。


なんとリメイク版は2023年3月に大人気ゲームハードNintendo Switchからも発売が決定しています。

パッケージ通常版には作品のラフスケッチやゲルテナ作品一覧などを収録したA5サイズのアートブックが特典として付属しており、豪華版には作中イヴが手にしていた「レースのハンカチ」も付属。

詳しく語ってしまうと重大なネタバレになる可能性がありますので割愛しますが、このレースのハンカチは作中大変重要なキーアイテムとなっており、本作品が好きな方々にとっては大興奮の得点内容となっております。

名作ホラゲー「Ib」絶叫の美術館探索からあなたは脱出できるか


今回は「Ib」についてご紹介してきました。


「ゲームが苦手な人でも楽しめる」というコンセプトのもと開発されたこのゲーム。魅力的な内容
も相まって、誰でも気軽に手にすることができ、また楽しむことのできる貴重な素晴らしいゲーム
です。

この機会にプレイしてみるのも良いかもしれません。


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