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35年ぶりにポルトガルを訪ねた話⑩ 7日目 アレンテージョの旅:エストレモシュ・モンサラシュ・モウラオン・そして...
前回の話はこちら↓
イザベル王妃のお城に泊まる
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エストレモシュのポウザーダは、その名を「イザベル王妃のポウザーダ」という。
イザベル王妃(1271-1336)は、第6代ポルトガル王ディニス1世の妃。敬虔なカトリック教徒で常に国民に心を寄せたことで知られる。数々の奇跡が言い伝えられており、後に聖人として崇められるようになった。ジョルジェがイザベル王妃にまつわる伝説の一つを教えてくれた。
慈悲深いイザベル王妃は、日頃から貧しい庶民のために王宮のパンを夜中王に内緒で持ち出し配っていました。ある時、スカートの布にパンを隠して王宮を出るところをディニス王に見つかり、何を持っているのかと問い詰められてしまいました。王妃がとっさに、「庭のバラを摘んできたのです。」というと、王は「それなら見せてみなさい」。王妃がやむなくスカートを広げると、そこにはパンではなく、本当に赤いバラがあったのです。
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エストレモシュのポウザーダは、13世紀にディニス王がイザベル王妃のために造らせた城を修復したものだ。
このポウザーダは完璧だ。外観も美しいうえに、丘の上に建っているので、ここからの景観が言葉にならないほど素晴らしい。ゴージャスな調度品が並ぶラウンジや廊下、部屋の内装まで、麗しいものに囲まれる。とはいっても華美ではなくしっとり落ち着いていて、たまらなく居心地がいい。そしてレセプションのお兄さんの応対が洗練されていて、言葉遣いが美しい。
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付け加えとくならば、このポウザーダに泊まる値段は、昨年私と母と娘の三人で、熱海の大衆旅館の10畳の部屋にふとんを並べて泊まった時の値段の3分の2でした。
モンサラシュ
ちっちゃな村、が好きだ。信州にいたころも、住んでいた1万人の街よりも山向こうの村々の伝統的な祭りを見て歩くのが楽しみだったし、雲南にいた時も勉強そっちのけで、国境近くの少数民族の集落を泊まり歩いた。高校生の時のポルトガル滞在でも、中東部にある巨石の丘に作られた村、モンサントへの訪問は忘れられない思い出だ。
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今回もモンサントを訪れたい気持ちがあったけれど、周遊予定の地域からはかなり離れていた。それにこの村のことはNHKの「世界ふれあい街歩き」で取り上げられていて、昨今の様子をそれなりに知ることもできていた。
今回まわるアレンテージョで、モンサントに匹敵するくらいの小さな村として候補に挙がったのが、モンサラシュだった。
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モンサラシュは、想像通りの「ちっちゃな村」だった。人口も2021年統計で600人ほど。クリスマスシーズンが続いていたこともあり、村全体を使ってプレゼピオ(キリスト降臨の場面を表現した模型)を実物大で展示していた。
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アレンテージョでは犬までのんびりしている
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冬だったからか、観光客はほとんどいない。それもそのはず、公共交通機関で訪れるにはあまり便のいいところではない。古城の壁や塔も、かつてはかなり朽ちて廃れてしまっていたのだろう。少し観光化しているとはいえ、まだまだ修復途上の感じが否めない。
城壁からは、2002年に水力発電の目的で建造されたアルケバダムが作り出した巨大な人造湖の水面が見えている。
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その向こうはもうスペインだ
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モウラオンのレストラン
さて、私たちの訪ポ前から、ソフィアとジョルジェが予約まで取ってくれていたモウラオンのレストランへ向かう。
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この店では自家製のワインしか出さないという
ジョルジェの勧めで、穀物のスープ Cozido de Grão に豚肉やチョリソの煮込んだものを加えながらいただく。素朴ながらなんという深い味わい。野菜からは野菜の、肉からは肉のすべての旨味が溶け込んでいる。地元ならではのヤギのフレッシュチーズも濃厚でたまらない美味しさだ。これはお二人のおっしゃる通りの、わざわざここまで来た甲斐のある、最高の昼ご飯でした。
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カンテ・アレンテジャーノ Cante Alentejano
このお店では、時に地元の人々が集まって、自然発生的に歌を歌いだすのだという。ポルトガルの歌と言えばファドが有名だが、実はアレンテージョ地方では、暑い大地で耕作に励む人々の間で古くから労働歌が歌われてきた。カンテ・アレンテージャーノと呼ばれ、その独特の演奏形態(楽器は使わず、大勢が輪唱していく)から、世界無形遺産にも登録されている。
日本ならば民謡が近いのかも知れないけれど、輪唱の迫力は独特だ。
私たちの訪れたこの時には合唱を聴くことはできなかったけれど、ジョルジェからカンテ・アレンテジャーのことを教えてもらいYoutubeで見つけてから、私はすっかりその音色にはまってしまった。今では通勤の車中のBGMはカンテ・アレンテジャーノだ。悲しいようで楽しいようで、聖歌のようで労働歌のようで、迫力はあるのだけど、高らかに歌い上げるというより淡々とした平静さを保ち、なんとも言えない中世的かつ中性的な響きなのだ。聴いていると不思議と心が落ち着いてきてしまう。
これは、お店での合唱ではなく、プロも加わって録画用にがっつり歌ったもののようだけれど。。↓
そして思い出したのです。
かつてのホストマザー、アナお母さんは、昔合唱団にいたとかで歌が得意。私に数々のポルトガルの歌を教えてくれたのだった。
そのうちの一つ、ずっと忘れられずにいた歌がある。
(私の適当な訳、合ってるのか?)
O rama o que linda rama なんといい枝なんだ
O rama da oliveira オリーブの枝は
O meu par é o mais lindo おいらの枝が一番上出来
Que anda aqui na roda inteira ここいらみんなのなかで一番だ
Que anda aqui na roda inteira ここいらみんなのなかで一番だ
Aqui e em qualquer lugar ここでもどこでもさ
O rama o que linda rama なんていいい枝なんだ
O rama do olival このオリーブの枝は
35年間、時々思い出しては口ずさんできたけれど、
これもまさしく、アレンテージョの民謡だったんだなあ。
そういえば、家族でアレンテージョの道路を走っている時にアナお母さんが歌っていたような気がしないでもない。
さて、このポルトガル滞在7日目の旅はまだ続くのだけれど、すでにずいぶんな字数になってしまった。いままで1日分を1ページにしてきたけれど、さすがに分けざるを得なくなりました。
という訳で、この日の、いや、このポルトガルの旅の、私にとって一番忘れられない訪問先のことは、次回に。