なぜ、彼らは運動し続けいるのか?
Vol 21 日本地域住民 高齢者
日本では、「憲法九条を守る」と「憲法改正」という2つの考え方が長年対峙してきました。特に安倍晋三首相の時代には、憲法改正のプロセスを加速させようとしましたが、「九条を守る」側が強く抵抗しました。
首相の政治的志向と与党の議席が多数を占めるという政治的優位から、近年、改憲に賛成する人の割合が増加しています。
この情勢を、私はニュースとして見ましたが、少し前に「九条の会」の運動をしてきた方に会って初めて、憲法改正反対の歴史的背景と日本の将来への影響を少し理解し、勉強しました。
前号では、政治的な立場を超えた日本全体の護憲運動である「九条の会」を紹介しました。特に、地域に広がる草の根の運動のモデルとして、ひしの九条の会の会員による17年間にわたる地域の学習と宣伝活動を掘り下げてみたいと思いました。
会長である前にまずは母親の立場
ひしの九条の会代表の太田智恵子さんは、6人の子どもの母親として、この活動に参加した最初の動機についてこう語りました:
この運動に携わる前、私は日本国憲法や第9条の内容を知りませんでした。中学校で学ぶ憲法は、基本的人権、民主主義、平和主義が中心で大まかなものでした。憲法9条(戦争と戦力の永久放棄)を学ぶことは、義務教育の中に強調されていません。
しかし、憲法が改正されると、日本は他国と戦争ができるようになり、海外に出て戦争に参加することも可能になると聞きました。日本がこのような状態になれば、私の子供たちも徴兵されて戦争に行き、今の幸せが戦争によって失われ、人を殺したり殺されたりする可能性があると思いました。
私は、戦争を知らない世代ですが、これは、戦後、一貫して平和憲法を作り守って、ほかの国と戦争しない努力をした政治家や、市民・民間レベルでの交流があったからです。しかし、これらの状況が変われば、国民を使い捨ての武器のようにして、国という体制を守ることになりえます。
「戦争は殺さなければ殺される。これほど悲惨なことはない。戦争はやっていけない」と元日本兵のこの言葉を聞いたとき、実感のこもった言葉に重みがあると思いました。私は子どもたちにこのような未来があってほしくありません。そのために、今できることをしなければ、あとで後悔することはしたくないと、19年前から全国に九条の会を作る運動に関わりました。
運動し続ける理由
大企業を定年退職後、ひしの9条の会の副代表に就任し、9条を守る運動に本格的に取り組んできた高橋満治さんは会の活動状況を紹介してくれました。
20年近く運動を続けてきた九条の会は今、全国の地域で高齢化という課題に直面しています。ひしの九条の会は、高齢化によって会員数が徐々に減少し、活動にかかわる若者がいないことは私たちが直面する現状です。
「戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もない。だが、戦争を知らない世代が政治の中枢となった時はとても危ない」、日中国交回復を実現した故田中角栄首相のこの言葉が今現実になってしまいました。
戦争を始めるのは、時の政府です。日本が戦争に巻き込まれる危機を国民に認識させ、「改正に賛成か?反対か」という国民投票が行われる時に、反対票が過半数になれば、私たちは、憲法改正の勢力を止めることはできなくても、平和憲法の改正を阻止することができます。これを目標にして運動をし続けています。
継続は力なり
ひしの九条の会は九条を守るための運動をたゆまず粘り強く続けてきました。
毎年4回発行される「全戸配布ニュース」(会報)は、活動の重要な柱の一つです。戦争を生き抜いた人々の体験、戦争の残酷さ、各分野の有識者の見識などを掲載した会報を5,500部作成にし、地域社会の全世帯及び学区内の学校や職場に配布しています。
「ニュース」の記事はすべて会員自身が執筆・編集し、レイアウトや制作も会員たちの手作業で行われます。印刷された会報は、折りたたまれてコアメンバーの手分けによって配布されます。こうして、会報の制作費は紙代と印刷代の最小限に抑えられています。
戦時下の体験記を2回にわたって掲載した堀秀夫さんは、86歳という高齢と癌を患いながらも、17年間にわたり近所の550軒のポストに会報を届けてきました。
会報の発行や講演会、映画鑑賞会、主催行事などはすべて無料(見学のような出かけ活動は実費制)だそうです。会費を徴収しないと聞いて、活動を維持するための資金源について尋ねてみました。
太田代表と高橋副代表は、「活動から得られるわずかな収入を除けば、資金は主に会員とサポーターからの寄付金で賄われています」と答えてくれました。
寄付者の中には、運動が始まった当初から支援をしてきた住民もいれば、私たちの活動への理解が深まるにつれて変化してきた住民もいます。
「ある日、自宅のポストに1万円が入った封筒が投函され、ひしの九条会の活動に使ってほしいと書かれていました」と太田代表は話しました。「それ以来、この匿名の寄付は今でも定期的に続いています」合わせて10万円くらいになっています。
高橋副代表はそれに付言して「このように、17年間活動を続けるうちに、私たちを受け入れ、信頼するようになる住民が出てきました。たとえ名前を公表したくなくても、私たちが日本の未来のために活動している団体であることを理解し、寄付をして応援してくださる方が複数いて助かっています」
これまでの会報の効果を尋ねると、2人の代表は言いました:
実際、9条を守る意味を本当に理解し、会報を読んでいる住民は、おそらく20%にも満たないでしょう。 世の中の流れに従うことに慣れている人が多数で、『もうポストに入れないでくれ』とはっきり言われたこともあります。
多くの人が会報をすぐにゴミとして捨てることも知っています。しかし、私たちがあきらめずに続けてきたことで、黙って見ていた一部の住民は、次第に私たちの理解者となり、応援してくれるようになりました。
最近の地方選挙では、私たちが推薦する候補者は地域住民から多くの票を獲得し、市長に当選しました。
やはり、「継続は力なり」ということです。
(つづく)
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