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サナトリウムの怪談

父は20代で結核にかかり、サナトリウムに入院したそうだ。サナトリウムには同じような年代の人がたくさんいて、長期入院になるため、院内ではサークルができたりして友達もたくさんいたのだそう。

サナトリウムは海のそばにあって、海沿いに防風林の松林が続いていた。体調がそれほど悪くなければ、散歩をしてもよかった。

ある夜、父は寝苦しくて夜の散歩にでかけたのだそうだ。松林の中を涼しい風にあたりながら散歩していると、少し離れたところに仲の良い友達がいた。「おーい○○くん、一緒に散歩をしないかい」と呼びかけたが、友達は気が付かないようで、そのまま歩いている。松の木の陰に入って見えなくなった友達は、そのまま木の陰から出てこなかった。父は友達の名前を呼びかけながら近づいていったが、友達はいなかった。

おかしいな、もう病室に戻ったのかな、と、父も散歩をやめて病室に戻り、そのまま眠ってしまった。

次の日の朝、昨日松林にいた友達が夜中に亡くなったのを知らされた。昨日の夕方から急変したために、本人は病室にいたし、歩くなど無理、ましてや松林を散歩などできるはずがなかったということだった。

本当の話なのかそれとも違うのか。

父がよく言っていた言葉「そのうそほんと?」今となっては確かめることもできないのが残念だ。