鴻桉南

こう・あんな。詩を少々。

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ことばを破ったら伝わる ことばを繋げると伝わらない 店員に言われて自分の手をかざすおじいちゃん 訂正されてわたしの持っていないナナコカードを引っ張り出す 東京の子供はみんなヒヨコ色の頭をして背中は桃色茶色まっくろ 田舎で色がついているのは自然だけ 守りは頭髪だけ 詩でかいたらあの人には伝わる 詩でかいたらあの人にしか伝わらない しでかした卵白 小学生はマスクをして髪を結って手袋をして一番仲の良い娘を誘う 4人は2人の2組になる 小学生はマスクをしてファミチキを買い、片方はじゃ

    • ゼロ

      わたしはわたしになりたかったんだけれど たぶん物心ついた頃から それはゆるされていなかったのだと思う わたしがわたしのようになれる瞬間が 恋とか愛とかじゃない衝撃で訪れたの、あの日 それからというものの わたしがわたしのようでいられる日向を撫でていたら 時間が止まってしまった 静止した空気の中でわたしは幸せだった 生き方を知らないままだった 破壊しろ、というあのこえが聴こえた それは成長なのか努力なのか変化のための装置なのか プログラミングされていた きっとあまりに恐怖を覚悟

      • サタデー

        よかったひとりじゃない生活ここがXX年XX月XX日だったとしてもコーヒーの粉を切らしているインスタントをたくさん王様のブランチでりだのぱっしょん済州島の女たちが産まれ落ちた涙と海だった人生には歴史があった言葉を今のスタンプ今のパッチワークで今になってる現代最先端の隅に流し込んで浮上するピンポン佐川ですはいええっこうなってるのかふふそうなんです203にはどう行けばいいんですか?玄関ここだけなので住人が手渡しします大きな家だったのを区切って何人もで住んでるんでへぇ〜かっこいいどう

        • 栗色の地毛

          黄色い像のインドカレーの二階の信号 東門 青い麻のスカートから見える綺麗な膝下に惚れたひと 死ぬときに知る満天の星空を二十歳のときからひゃっぺんほど貫通したので貫通したから貫通したけど貫通しました 土に返りたい彼女と土地に一睡すらも縛られたことがない私はちょうどよくてあのときとそのときとこの前のサイゼリヤは時代に似合わない艶かしさ 東からの東京タワー北から歩いた東京タワー西からの毎日が一番多い なぜかたいていのひとが見過ごす強さ 白い毛に陣地を奪われていって綺麗な栗色の髪を見

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        • 雑記、日記
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        記事

          まだ輪郭の見えない愛の話

          号泣してもおかしくないような状況で涙が一寸も出ないときに、鏡に写った自分と目を合わせ続けると、次第に、出るはずであった涙の量だけ視界が歪んでくる。どうして雨が降っているのか。「梅雨だから」という回答が聞こえてくる前に、ホーチミンのスコールの街を思い出す。エネルギーも滅茶苦茶で行動も滅茶苦茶だった二十代の私が作った記憶は、人生の走馬灯の一幕としては、絶妙な鮮やかさと強烈な美しさに仕上がっている。 逃げ出すことと、自分を防御すること。その違いってなにかしら。わりと大事なポイント

          まだ輪郭の見えない愛の話

          老いてとろけて解けていく

          私が何年も前に「大人の塗り絵」を贈って以来、祖母は冊数を重ねてずっと続けていて、会うたびに同じセリフで感謝をされる。 「ボケ防止にいいのよ」 「お金がかからなくていい」 10分の間に10回は繰り返す。 「お金がかからなくていい」はより繰り返す。 父方のばあちゃんの口から時折溢れることがあったが、その世代はほんと、「難民」だったんだなと思わされる。 自分で紡ぎ出す、ストーリー。 ストーリーを(紙芝居ではなく)言葉で綴るとき、それは必ず線的なものになる。どこか一つの音をス

          老いてとろけて解けていく

          ジャズ

          筍を 初めて茹でてみました 電話の向こうで「違うよ、お皿を内蓋にするのよ」と たしかに子供の頃に見た台所ではそのようでした だれかと一緒に生きていくというのはどういうことでしょうかと だれかに訊いてみたいのです だれかと一緒に生きている人に訊いたらわかるでしょうか わたしの人生の形は、このようなものです うつくしい線や 強靭な線や 豪奢な線 そうはならなかったこの形を 愛おしいと思います 安産型の骨盤は一度も使われていません 冒険ばかりをもう求めていないんだな という朝

          コロナ

          文庫本から顔を上げてマスクをしたままにおばさんは話しかけてしまう デジタルな呼吸  デジタルな画面を覗き込んでいる青年に目が悪くなるわよって 禁止されているのに 禁止されている  だれかに 禁止されている だれかに話しかけたかったことを今頃思いだす 黄色い嘴の鴨が二匹 彼らにだけは話しかけようかなと思う どうせお互いに言葉は通じないから そうしたらランニング中のお兄さん二人が話しかけてしまって 世界に 話しかけてしまって 心の距離が吹っ飛んでしまって 三才に満た

          太陽

          昇る太陽 欠ける太陽 紛う太陽 曲がる太陽 映像のない人生であったならきっと 死の瞬間まで本物であっただろう 傷つけた者が傷つけた意味を血の色で知ったとき 奇跡的に宇宙は始まる 私の人生は始まり 彼等の姿は見えなくなる あなたから届いた涙が足元を奏でる 自分が流した涙はすべて過去生 耳をすませること それだけが今日へのギフト

          ピアス

          イヤーカフスがほしいなと思っていて だけどびっくりするぐらいに似合わない ここのところ光の速さで成熟した 今朝も一番早く起きて 光のさすキッチンでコーヒーを淹れて 今朝は同居人が順番に起床する音を ここで集めているけれど つぎにどこにいるかなんてわからないでしょう 母親の横にいる小さな私になっても気づかないだろうし 老人ばかりで今日を迎えたとしても それがあの世なのか老人ホームなのかシェアハウスなのかなんて 気づかない シェアする「年齢制限40歳」はどんどん上がっていって

          ねえねえ見て  「あ、今日満月なんだね!」とその子のお母さんが言って ねえねえと袖を引っ張って 「ああ、今日満月なんだね!」とあの子のお母さんが言って 「ああ 見てみて」 仕事帰りのお父さん 今日は独りじゃない ああ 行っちゃったね、猫さん ああ ううう  あーー えあああ ねえねえ あれ 声をかけられるのは ずっと遠い過去に切り取られてしまったんだって 気づきながら起きたら 涙が出ていて とんでみて とんでみて わたしの足裏に水面はつづくよ こわがらないで こいでみ

          半生

          死んでしまう日までの暇つぶし 「私の人生はもうこれ以上苦しむことはないだろう」 という過ちを   皆が犯す 世界はたいして温かくなどなく 己れの体液ほど熱いものはない 生きていれば決して知らないところ 想像もつかなかったところへ連れていかれる 怯えなかった人が紡ぐ赦し 過去は消える 記憶は消える 想定外の地へ運ばれた特権で 誰かの物語を代筆する 群衆は愚かゆえ近寄るな 今日の景色は都度の逢瀬 目の前の声を抱きかかえる 目の前の瞳に抱きしめられる

          人生

          ぱんと手をたたく間に消えるはずのあなたの生に存在があったなら、図書館の匂いを全身の肌にまとった時間のくゆりをたしかに記録している その生になぜ意味があったのかは、出逢った顔の数珠ではなく、今に向き合う幾つかの顔に余すことなく集約される 二十歳のころにはわからなかった世界の文と二十五のころには読めなかった書籍の文が、三十五になるころには球と小箱を自由に操り、四十になるころにはすでに必要ではなくなって、もし五十まで生きれば創造の語りの途上 七十まで生きた人は、終わりがあった

          青虫

          友達だとおもっていたものなんて友達なわけないのよ 貴方のことを想って こんなにも心は言葉で一杯に 頭は心で一杯に 体は鏡で充満する やさしくされたくて 絶対的に救われたくて 抱きしめられたくて 破裂する前の風船みたいに、女は 靴底で 車輪で つぶされる青虫

          川縁

          どうしてこんなに歩く少女になったのだろう だれも歩いていないよ と父がおしえてくれた だれも歩いていない 誰もあるいていないのに わたしのかわいらしさ わたしのかわいらしさは ふわりと巻き上げられた砂埃の 妖精だけが知っている 七十歳も七歳も同じ眼球 脚がすごく頑丈だから いつも歩いていて 毎朝あたらしく起動する物語についてはわすれてしまった 大人なので 日が落ちる前にすこし思い出した 朔太郎の夢を読んでいて       夢について詠い合った夢がかさなったこと 蜂蜜の壺に

          運命

          じんせいは泡のようなもの  きえるべきではなかったひとが消えることがあって きえることが運命だった魂が名をのこしてしまったりするような  そんな恐ろしい場所がこの 世界だって 大人になったから知るのではなくそれは わずかなひとが必ず   一つ一つの呼吸に織り込んでいる冷たい風