第33回世界コンピュータ将棋選手権 まとめ&自戦記
一次予選ダイジェスト
HoneyWaffleは6勝2敗で一次予選を突破しました。今大会に向けて定跡ばかりやってきましたが、先手は三間飛車のみ、後手は四間飛車のみの仕様です。一次予選では先手三間飛車の4勝0敗、後手四間飛車の2勝2敗と、後手番に苦労しました。よかった棋譜は以下の2局です。
2敗については、お相手が
決勝リーグに進出した「アストラ将棋」
二次予選でも活躍した、全然ポンコツではない「ponkotsu」
ということで実力負けだったかと思います。
二次予選
1回戦 vs W@nderER
駒がぶつかるまではお互いに定跡だったようです。
W@nderERさんは決勝リーグに進出したので、力負けという感じでした。
2回戦 vs ponkotsu
一次予選では後手番で負けていました。二次予選では先手番でしたがリベンジできず。最後、入玉して320手引き分けを狙いましたが、宣言法ではなくまさかの詰みでした。公式配信にて、遠山先生に解説いただいていたようでしたが、ブラウザの不調のせいか見られず、内容は確認できていません。
3回戦 vs アストラ将棋
40手目まで定跡で、その時点では持ち時間で9分の差をつけていました。しかし開戦してから駒損し、徐々に形勢が傾いて負けました。アストラ将棋さんも決勝リーグに進出していますから、3回戦まで当たりが厳しかったです。
4回戦 vs koron
(予定)と書いてありますが無事に四間飛車に振っています。
38手目まで定跡で、持ち時間で6分の差をつけました。58手目で後手から歩をぶつけていますが、手待ちするのが有力だったかと思います。戦いになってからは、穴熊の暴力という感じで負けました。4連敗でほぼ望みを絶たれた格好です。
5回戦 vs 将スタ君
うまく飛車先を逆襲し、念願の二次予選初勝利でした。
6回戦 vs baron
定跡がいちばん効果を発揮したのはこの将棋でした。45手目まで定跡で、持ち時間に10分の差をつけ、すでに角のにらみによる攻めでペースを握っています。先手番はこういう将棋でたくさん勝ちたかったです。
7回戦 vs mazurka
プロ棋士・谷合先生のmazurka。4手目42金とされて定跡を外されました。石田流vs棒金の形になり、桂馬を損してからはジリ貧負けでした。4連敗のあと2連勝し、これからというところで負けて2勝5敗となりました。
8回戦 vs Ari Shogi
対抗形なのに居飛車の玉が68にいる状態で開戦でき、優位に進めて勝ちました。
9回戦 vs あやめ
定跡とponder(相手の手番中の先読み)で持ち時間に9分半の差をつけ、居飛車穴熊が固まりきらないうちに端から強襲できました。後手番では大会を通して一番よかった棋譜かと思います。
最終戦を勝ちで飾れましたが、トータルで4勝5敗。4勝勢の中では最下位の22位で終わりになりました。
総括
大会に向けて定跡作りばかりやってきましたが、そのかいあってか序盤から不利を招くことはなかったはずです。また、持ち時間でのリードを奪うことに成功した将棋も結構ありました。
ただし、飛車を振る筋を絞って研究の精度を高めようとした割に、先手では石田流系統のルートが仕上がらないまま何度も採用してしまったのが反省点です。(石田流ファンの方にはよかったかと思いますが)
課題は、定跡を抜けた後の評価関数の精度です。追加学習が可能な最後のdlshogi(といっても結構古い)に、わずかながら対抗形の棋譜を学習させたものを使っていますが、そこをアップデートしないと追いつけません。
振り飛車評価関数ではなくても、トップクラスに匹敵するくらいの評価関数を用意できる必要があります。そもそも定跡をやっているのは、評価関数の学習に使う棋譜を生成するためでもあるので、いい加減に機械学習から逃げないようにしたいと思います。(新しくて強い評価関数を、追加学習可能な形で配布していただけるととてもありがたいのですが…)
今大会は時間切れや反則負けが時折発生していましたが、HoneyWaffleは最後まで不具合なく指すことができたのはよかったです。
また、全局振り飛車を指した(一次予選の序盤は振り戻したりしててあやしいですが…)ということで賞金もいただきました。
最後に
上記のとおり、HoneyWaffleは負け越しとなりました。開戦してからの戦いが弱いので、すごい不利な印象を受けたかもしれませんが、振り飛車そのものが不利ではなく、単にHoneyWaffleが弱かったのだと思います。それを証明するためにも勝ち進みたかったのですが。
今回の定跡は公開するつもりです(これを書き終わったら公開の作業をします)。こちらの環境では、振り飛車定跡ながら先手後手ともに少なくとも勝ち越しているはずですので、どなたかに検証いただけると非常に助かります。
大会の運営に関わった方々、またHoneyWaffleを応援いただいた皆様、本当にありがとうございました。
追記:定跡公開しました