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掌側バートン骨折の固定肢位

柔整師であれば一度は整復固定したことがある「掌側バートン骨折」ですが、今回はその固定肢位のポイントについてお話ししたいと思います。

※掌側バートンはなかなか来ないのでみたことがない柔整師も安心してください。笑

こういう話をするときに、よく言われるのが「そんな症例見ねえよ」というもの。

まぁ確かに、なかなか見れない症例だったり、難しい症例を日常からやってる人なんてほんの一握りでしょう。

ただね、私から言わせれば「基本的な考えは全部同じ」なんです。

筋のストレッチングするにしても、物療機器つけるにしても、患者さんから診察券を受け取るにしても、この世の中は全部物理現象です。

だから、肘内障の整復も、骨折の整復も同じなんですよね。

スポーツ選手にテーピングする方も多いと思いますが、骨折部にギプスを巻くのも同じです。

どういう目的があって、どこに支点を取って、範囲をどこまでにするか。

ぜーんぶ同じです。

よく「外傷を見なきゃ柔整師じゃない」というポジショントークをする人がいますが、私はそうは思いませんね。

柔道整復というのは人体の仕組みを理解して物理的介入により機械刺激をコントロールする職種です。

私からすれば、現場でテーピングを巻くのも、選手のケアするのも、腰痛のおばあちゃんに施術するのも全部同じです。

ケガベヤの皆さんにはこのことを押さえてもらった上で、私の記事を読んでほしい。

ということで、掌側バートンの話に戻りましょう。笑

教科書を見てみよう

掌側バートンって何っていう人ももしかしたらいるかもしれませんから、最新の教科書をチェックしてみましょう。

・・・ということで教科書を改めてみてみると、このレントゲンは確かに掌側バートンなんですが、第3骨片があって学生にはミスリードを誘うだろうなと思います。笑

関節面から骨折線が始まって、掌側に抜ければ掌側バートンです。

〈整復法〉には「手関節の屈曲と同時に掌側から背側へ遠位骨片を圧迫して整復する」とありますね。

これまた私は、こういう文章にはケチをつけてきたのですが、教科書委員会の親父どもは温故知辛ですので変えようとはしません。

正しくは「骨折部を掌屈方向に煽って遠位骨片の掌側の皮質の断端を乗せて整復する」だろうと私は思います。

手関節を動かしても何の意味もありません。

・・・というのはいいとして、掌側バートンというのはこういう骨折を言います。


実際の固定のポイント

私の思う固定のポイントをご紹介します。

黄色で描いたのが、橈骨のラインです。骨折線も書きました。

前提として固定肢位は「フルの回外・背屈」です。

固定範囲は当然、上腕からでないといけないでしょう。

この時の「背屈」なんですが、本当は「骨折部の背屈方向への力」を常にかけておきたいんです。

これまた言葉が難しいですが、もっときちんと言うと「前腕屈筋の収縮が起きようとしても骨折部に力が加わらない状態」を作りたい。

なので、手関節の背屈はこのくらいガッツリ入れないといけません。

手関節は背屈しないといけないのですが、手根の滑りと転がりは必ず意識しなければいけません。

運動学ですね。

背屈する時に、通常通り手根骨が掌側に滑っては骨片に軸圧をかけてしまいますので、背側に滑らせながら背屈をしなければいけません。

それが右側の図です。

あとはギプスのモールディングの際に、支点は骨折部よりもやや近位から取って掌側に壁を作ってあげなければいけませんね。

手関節の背側は少し余裕があったほうが、より掌側からの押さえが効くでしょう。

さて、少しだけロジックを理解していただけたでしょうか。

こういう細かな考えから、普段の臨床に生かしてみてください。

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